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2021年11月〜12月に投稿した「緋い魔女」の旧版です(2020年1月〜3月投稿)。せっかくなのでまとめることにしました。途中までしかありませんが、ぜひ新版と読み比べてみてください。

緋い魔女 Part1

「おぉ、よくぞいらっしゃいました。ささ、な…」
出迎えの挨拶を無視するように、赤毛の少女は屋敷の重い扉を押し開けた。
「あぁ、そんなに急がなくても…」
出迎えに来た屋敷の主は慌てて制止したが、少女はそれを気にも留めず、そのままズカズカと中へ入っていく。
屋敷の主人は早歩きする少女の後を追いかけるが、少女は振り向くことなくこう呟いた。
「…別に、まだ依頼を受けるとは言っていないのだけど」
「えぇ、それは分かっています。ただわざわざこんな所まで…」
屋敷の主はつらつらと長話を始めたが、少女は気にすることなく歩き続けた。
だから屋敷の広間に辿り着くまではあっという間だった。
「…あ、とりあえずどうぞお座りください。具体的な話は座ってしましょう」
いつの間にか広間に辿り着いていることに気付いた主人は、慌てて少女に椅子を勧め、給仕に茶を出すよう命じた。
だが少女は座るわけでもなく、ただ広間を黙って見まわしていた。
「…では依頼の話を。ここ暫く、領内では家畜の不審死が相次いでおります。最初はそこいらにいる鹿なんかが死んでいたりしたのですが、やがて家畜にも被害が出るようになり…」
少女は主人の話を聞き流しながら、大きな広間を見渡していた。
今までこういう貴族の屋敷に立ち入ることはあったが、ここまで広いのは初めてかもしれない。
「…調査したところ、やはり精霊の仕業のようです。しかも、土着のモノではなく、外来のモノで、かなり強力なモノらしく…」
だだっ広い広間を見まわしていると、少女の目に、何かが止まった。
それは広間の奥の方、カーテンの近く…
「配下の魔術師や外部の魔術師に対応を依頼しましたが、誰一人とて歯が立たず…て、聞いています?」
もしや自分の話を聞いていないんじゃないかと、屋敷の主人は少女の顔を覗き込む。
「…あれは」
屋敷の主人の質問には答えず、少女は広間の隅を指差した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-01-20 23:59

緋い魔女 Part2

「…ああ、あれですか?」
屋敷の主人は少女が指さす方に目を向ける。
「…あれは…えぇ、まぁ…我が家の”家宝”みたいなモノにございます」
ふぅーん、と少女はうなずくと、静かにさっき指差した方へ歩き出した。
あ、ちょっと…と屋敷の主人はうろたえたが、少女は気にせず広間の隅へと向かった。
そこには、奇妙な人影が立っていた。
―足元まである真っ黒な外套を着、頭巾で顔を隠した、少女と同じくらいの人影。
豪奢な屋敷の広間の中で、それはあまりにも異質に見えた。
少女は人影の前まで来ると、後を追ってきた屋敷の主人の方を振り向いた。
「これ…」
「えぇ、まぁ…知り合いから貰ったモノなのですが…」
極まりが悪そうに喋る屋敷の主人から少女は目の前のモノに目を向けると、何を思ったかその頭巾に手をかけた。
「…!」
一瞬のうちにひっぺがえされた頭巾の下から、少年とも少女とも似つかぬ顔が現れた。
その目は驚きで大きく見開かれている。
「…そう、やっぱりね」
少女はそう呟いてニヤリと笑った。
「…コイツ、あの有名な魔術師の”使い魔”でしょう」
…えぇ、と屋敷の主人は小声で答えた。
「しかも貴方はコレの”マスター”ではない…」
「…まぁ、そうですが…どうして…」
屋敷の主人が尋ねると、少女はクスクスと笑いながら答える。
「だって普通の”ヒトのカタチをした”使い魔は、大抵主人のそばにいることが多いでしょう? 貴方のような貴族なら殊更… でも、コイツは広間の隅で放し飼い…ならマスター契約せず、何か適当な魔法石から魔力供給させていると考えるでしょう」
間違っていて?と少女が訊くと、屋敷の主人はいえ…と答えた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-01-22 00:00
  • あらまーファンタジーですかー。何だか好きな作品になる予感。楽しく読ませてもらいます。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2020-01-22 18:49
  • レスありがとうっ! そしてお久しぶりです!
    とりあえず先週思いついたお話を勢いで活字にしてます!
    勢いで書いてるので所々雑ですが、そこらへんはご了承を。

    …あの子達のお話は、もう少し待っててくださいな。

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2020-01-22 20:48

緋い魔女 Part3

その様子を見て少女はふふっと笑うと、目の前のモノに向き直った。
そしてこう呟いた。。
「…そういえば、”依頼”ってどんなでしたっけ」
”依頼”のことをすっかり忘れかけていた屋敷の主人は、ハッとしたように答える。
「えぇと…簡潔に言えば、領内で害を為す精霊の退治ですが…」
「…並の魔術師では対処できないから、私に依頼したのよね…」
少女はそう呟いた後、少しの間考えるかのように黙っていたが、不意に口を開いた。
「貴方も太刀打ちできなかったのよね?」
尋ねられて、屋敷の主人は恥ずかしげに、まぁ…と答えた。
…そう、と少女は答えると、突然屋敷の主人の方を向いた。
そしてこう言った。
「…その依頼、私が受けるわ。―ただし、報酬にコイツをくれないかしら?」
「…へ?」
屋敷の主人は想定外の言葉にぽかんとする。
「別に良いでしょう? 別に貴方が”マスター”というワケではないのだし。それと、依頼にはそれ相応の報酬が必要でしょう? 私みたいな、”お雇い魔術師”は特にね」
…駄目かしら?と彼女は笑いかける。
屋敷の主人は暫くの間、少女を見ながら呆然としていた、が、すぐに我に返って彼女に依頼するか考え始めた。
そして、屋敷の主人は口を開いた。
「…では、お願いします」
それを聞いて、少女は目を細めて笑った。
「…そう。じゃぁ領内の案内をお願い。精霊の出現場所とか、被害を受けた場所とかね。あとコイツを借りるわ」
あ、はい…と答えてから、屋敷の主人はへ?と呟いた。
「この使い魔を借りるのよ。便利な”武器”なのに、使わないでいるのは勿体ないわ…」
そう少女は言うと、広間の出入り口の方へ歩き出した。
「あぁ、ちょっとお待ちください」
そう言って、屋敷の主人も歩き出した。
少女はその言葉を聞かないフリして進んでいたが、ふと立ち止まって振り返った。
「…”お前”も行くわよ」
そう言われて、”お前”と呼ばれた使い魔は、ハッとしたように少女の方へ向かって歩き出した。
それを見て、少女は少しだけ笑うと、また向こうを向いて歩き出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-01-22 23:12

緋い魔女 Part4

「…こちらにございます」
雪に覆われた村外れ。この辺りを治める領主―あの屋敷の主人は、人気のない森の入り口で立ち止まった。
「…どうぞ先へお進みください、わたくしはここで見張っておきますから―何も知らない一般人に、魔術のことなど知られる訳にはいかないので」
そう言って屋敷の主人は少女らを促した。
「…ご案内どうも」
少女はすれ違いざまに屋敷の主人に言った。
”使い魔”もその後に続く。
…暫くの間、少女らは黙って新雪の中を進んでいたが、ある程度進んだ所で少女は立ち止まった。
「…あいつ、逃げたわね」
呟いて、少女は振り返る。
「…まぁ、あれでも貴族なのよね。貴族同士の覇権争いでいつ命を狙われるか分からないのに、ただの精霊に殺されるのは死んでも御免よね」
言い終えた後、少しの間沈黙が下りた。
が、すぐに思い出したように少女は言った。
「…そういえば、お前…名前は?」
”使い魔”はフッと顔を上げた。
「名前を知らなければ、何て呼べば良いのか分からないでしょう?」
少女はにこにこと笑いながら尋ねる。
暫しの間、”使い魔”は黙っていた―が、不意に口を開いた。
「…”ナハツェーラー”」
ふーん、と少女はうなずいた。
「あの魔術師らしいわね。自分が作ったモノに、”吸血鬼”の名前を与えるなんて」
「何か文句?」
間髪入れずにそう訊かれて、少女は笑いながらいいえ、と答えた。
「ただただ、あの人らしいと思っただけよ」
少女はそう言いながら、また歩き出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-01-23 23:15

緋い魔女 Part5

「…ていうか、何で報酬に”俺”を要求した?」
”使い魔”からの質問に、少女はぴた、と足を止める。
「やっぱり有名な魔術師の”最高傑作”だから? それとも…」
「別に、お前なんか欲しくなかったけど?」
想像の斜め上の発言に、…はぁ⁈と”使い魔”は叫んだ。
「大体、私に何か依頼してくる魔術師はねぇ、単純に自分の手元では手に負えない面倒ごとを、今話題の”緋い魔女”に解決してもらおうって考えてるのよ。魔術の世界で”神童”だの”魔女”だのって呼ばれてる魔術師が、自分の元に来るだけで立派な自慢にもなるし」
少女はくるりと振り向く。
「この間も1つ依頼を引き受けたのにまた依頼。しかも今度は面倒くさそうな精霊退治。だから、依頼を引き受ける代わりに報酬で、そこに”置いてあるだけ”になっている使い魔が欲しいって言ったら、依頼のこと考え直してくれるかしらって思っただけなんだけどね」
「でも実際、あの男はお前に退治を依頼したじゃねぇか」
”使い魔”は真顔で言う。
少女は、そうねぇ、と呟いてさらに続けた。
「…でも、少し気になっていたのよ。遠い昔、”孤高の天才”と謳われた魔術師の”最高傑作”がどんなものなのか。だから別に、お試しでも”マスター”やっても良いって思ってたわ」
…ふぅん、と”使い魔”は返す。
「まぁ、お前を報酬にしてもしなくても、あの依頼を受けるならお前を借りるつもりでいたわよ…その逆さ十字の耳飾りを見た時から」
少女はそう言ってにやりと笑った。
”使い魔”は、あのクソ野郎…と腹立たしげにつぶやいた。
その様子を見て少女はクスクスと笑う。
「造った人のことをそんなにひどく言う使い魔なんて初めて見たわ…まぁあんな悪趣味な名前を付けられたらねぇ」
その言葉を聞いた”使い魔”は少女を強めに睨みつけた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-01-25 00:23

緋い魔女 Part 6-Ⅰ

「…お前にだって容赦しないからな。正式なマスター契約は結んでないし、敬意を払う必要も、命令を絶対に聞く必要もなかろう?」
そう言って”使い魔”は皮肉気に笑う。
少女は、なら、と話を続ける。
「…なら、私だって容赦はしないわ。お前が貴重品だろうと私より年上だろうと、私はあくまでお前を”武器”として使うわ。…まぁ”借り物”だから、死なない程度にはするけどね。―分かったわね? ”ナツィ”」
「ちょと待て、何そのあだ名」
”使い魔”が思わず突っ込むと少女は笑った。
「別に良いじゃない。フルネームじゃあまりにも呼びにくいのだし…じゃぁ、おあいこで、私の事は”グレートヒェン”て呼びなさい。…本当は、”マルグレーテ”って言うんだけどね… 別に、正式な主従ではないのだから、”マスター”なんて呼ぶ必要はないでしょう?」
少女はそう言って首を傾げた。
それを見て、”使い魔”はへいへい、と面倒くさそうに答えた。
それを見た少女は、それでよろしい、と言わんばかりに微笑むと、また前を向いて歩き出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-10 22:52
  • やった!テトモンさん復活だ!新しいシリーズも始まって続きが気になってたのですよ!どうかこれからも書き続けてくだされ。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2020-03-11 11:49
  • レスありがとうございます。
    そうです。帰ってまいりました(笑)
    ぼちぼち頑張っていきます。

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2020-03-11 22:28

緋い魔女 Part 6-Ⅱ

「…見つからないわね」
森の中を探索し始めて幾ばくか、グレートヒェンはぽつりと呟いた。
近隣の村で精霊の目撃情報があったため、人気のない森の中に潜んでいると踏んで、彼女らは探し回っているのだが、痕跡すらまるで見つからない。
「…そっちは?」
グレートヒェンは振り向きざまに尋ねる。
「…なんにも」
使い魔”ナハツェ―ラー”ことナツィは真顔で答えた。
それを聞き、グレートヒェンはそう、と溜息をつく。
「…案外見つからないものね」
「は? 簡単に見つかるでも?」
ナツィに嘲るように言われたが、グレートヒェンは気にすることなく続ける。
「…別に、そんな風には思ってないわ。そんなだったら、私の元に依頼なんて来るハズがないし…そう言ってるお前はどうなのかしら。まさかずっと屋敷に閉じ込められていたから、感覚が鈍ってるってことはないでしょうね?」

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-13 23:46

緋い魔女 Part 7-Ⅰ

グレートヒェンの軽く他人を馬鹿にするような物言いに、ナツィは思わずそっぽを向いた。
「…やな奴」
「何か言って?」
グレートヒェンは笑顔で首を傾げる。
だがナツィは黙りこくっていた。
「…ま、ここまで痕跡が見当たらないのはおかしいんだけどね」
立ち止まっていたグレートヒェンはまた歩き出す。
「人間が住んでる所には出現した痕跡があるのに、隠れていそうな森の中にはそれといった跡がない…まぁ、私が見つけられていないだけかもしれないけど」
「…痕跡が薄すぎて分からない、とか?」
そうかもしれないわね、とグレートヒェンはうなずく。
「その場に留まっている間に残る魔力がやけに少ないとか…もしかしたら、人工物の可能性もあるわね。魔力がその場に残りにくいモノは人工精霊ぐらいしかいない」
そう言い切ってグレートヒェンは立ち止まる。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-13 23:59

緋い魔女 Part 7-Ⅱ

「…まぁ、今回は精霊退治がメインだから、精霊の正体なんてどうでもいいのだけどね…」
グレートヒェンはくるりと振り向く。
「とりあえず、今日はこれぐらいにしておきましょう。そろそろ日も落ちる頃だし、暗くなってからじゃ色々と大変だもの」
さ、もう戻るわよ…とグレートヒェンが元来た方へ引き返し始めた時、彼女は何かに気付いたように足を止めた。
何かしら…と彼女が振り向くと、そこにいたのはー
「…!」
ー半透明の、オオカミのような巨大な獣。
その金色の眼と、グレートヒェンの目が合った。
ーやられる、そう一瞬の内に悟ったグレートヒェンは声を上げた。
「ナツィ‼︎ 出…」
言いながらナツィがいる方を向いて、グレートヒェンは言葉を失った。
「…へ?」
知らない間に、ナツィはグレートヒェンから少し離れたところにいる…というか、その場から立ち去ろうとしている。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-15 03:08
  • 気付いたらだいぶ進んでいた。
    それにしてもナツィ!何逃げようとしてるの!
    ところでオオカミってファンタジーと相性良いですよね……。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2020-03-16 22:41
  • レスありがとうございます。
    ええ本当、あの子は逃げようとしてやがるのです。
    まぁあーゆー奴なんですけどね(笑)

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2020-03-17 22:13

緋い魔女 Part 8-Ⅰ

「…何」
「何じゃないわよ」
グレートヒェンは思わず突っ込んだ。
「…正式な主従じゃないから、必ず命令を聞くワケじゃないって先に言ったんだけど」
ナツィは面倒くさそうに言う。
「…あっそ」
グレートヒェンは素っ気なく答えた。
「…まぁ、最初に言ったものね。…分かってたわ、分かってたわよ」
そう言ってグレートヒェンは目の前の精霊に向き直る。
「…何なら、好きになさい!!」
グレートヒェンはそう吐き捨てると、懐から赤い石ころを幾つか取り出した。
精霊が反応するその前に、彼女はそれを地面に向かって投げつける。
グレートヒェンの手を離れた石ころは、地面に着地すると同時に白っぽい煙を上げて辺りをみるみる内に覆い隠した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-16 23:56

緋い魔女 Part 8-Ⅱ

「―時間も時間だから、これぐらいしかできないけれど」
グレートヒェンは外套の内側から何かを取り出しながら言う。
「…退路を拓くぐらいなら!」
後方へと下がりながら、グレートヒェンは手の中の青い石ころを幾つか放り投げた。
青い石ころは光の糸を引いて広がり、簡易的な防御結界を展開する。
グレートヒェンは結界を背にそのまま足跡をたどって走り出した。
もう日も暮れかけ、あまり視界は良いとは言えないが、森のどこら辺を通ったかは覚えている。
このまま出口まで突っ切れば、とグレートヒェンが思った時、背後でガラスが割れるような音がした。
「…!」
まさか、と振り向くと、結界で足止めした精霊が、もうすぐそこまで迫っていた。
「さっき張ったのは簡単な術式だったけど…思ったより破られるのが早いわね」
仕方ない、と彼女はどこからか奇妙な形の黒い短剣を取り出した。
―その時だった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-18 17:53

緋い魔女 Part 9

彼女の視界に何かがうつり込んだ。
ばさっ、と音を立てて現れた”それ”が、手に持った黒鉄色の大鎌(デスサイズ)を目の前の精霊に振りかざす。
突然の乱入者に驚いた精霊は、振り下ろされた刃が当たる前に姿を消した。
「…」
大鎌を抱えた”それ”は何もいなくなった雪原を見つめて立っていた。
「…お前、」
グレートヒェンはぽつりと呟く。
「…勝手に戻ったんじゃないのね」
”それ”は無言で振り向いた。
「…別に」
”それ”ことナツィは視線を逸らしながら答える。
「ただ…気になっただけ」
「ふーん。何それ」
グレートヒェンは鼻で笑う。
「まぁ良いわ、助けてもらったんだし…にしても」
彼女はナツィが持つ大鎌に目をやった。
「蝶がかたどられた鎌、ね…やっぱり、”黒い蝶”と呼ばれるだけあるわ」
それを聞くと、ナツィの手から大鎌が消えた。
「…なぁに、隠さなくたっていいのよ。お前の武器なのだから…とりあえず、帰るわよ」
もう寒いでしょう、と言って、グレートヒェンは元来た方に向かって歩き出した。
少し経ってから、ナツィは黙って彼女の後を歩き始めた。


「…という訳で件の精霊を見つけられたのだけど」
「…撤退した、と…」
まぁ仕方ないのよ、とグレートヒェンはテーブルの上に紅茶のカップを置きながら言う。
「もう辺りも暗くなり始めていたし、第一こちらもまだ準備が整っていなかった。―下手に抵抗するよりはマシだと思うのだけど」

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2020-03-19 23:51
  • 鎌って格好良いけど、クセあって使いにくそうな武器ですよね……。それが扱えるナツィ、只者じゃない。
    ところで、大鎌に驚いて逃げる辺り、精霊の野生っぽさが好きです。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2020-03-20 12:37
  • レスありがとうございます。
    まぁ調べると、鎌は取り扱いにくいって言われてますからね(外刃だったら違うかもしれないけど)。格好いいけど(*´ω`*)
    もちろんナツィは只者じゃないです。”使い魔”ですから(笑)

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2020-03-21 00:17
旧版はここまで(途中から書けなくなってしまった)。続きが見たい方はまとめ「緋い魔女 前篇」をどうぞ。