何も無いところでつまづいた
いや、
ここまで真っ直ぐ歩き続けられていたのが奇跡みたいだ
いや、
その実真っ直ぐなんて程遠い蛇行か
いろんなものを引き摺っている
思い出すだけで自分を殺したくなる後悔や
今でも突き刺さるあの子の眼差しとか
捨てたつもりだった夢だとか
もう覚えてすらいない別れ
夕日が眩しかった場所
歌い損ねた歌
全部全部かかとにしがみついてくる
嗚呼、世界ばかりが美しい
つんのめった足は
誰かが吐いたガムを踏んづけて
いつかの僕もこんなだったな、とか
訳の分からないことを考えて
この空より寒い
明日の無い今日に
ため息をついた
滴り落ちる黒が
刹那僕の顔を映した
飲みかけのコーヒーを浴びた
桔梗の青が
あまりにも鮮やかで吐き気がした
明日はやってくるはずだった
まばたけば世界が終わるとしても
あるいはこの身が潰えるとしても
それでも明日を疑わなかった
変わらないものなんてない、と
僕らは知っているはずだった
それでも変わっていく君と街を
変わらない僕が嘆いた
投げ捨てようとした左手を止めて
空っぽのスチール缶をポケットにねじ込んで
濡れそぼる桔梗を踏みつけて
たちまち襲い来る後悔を右腕に抱えた
アスファルトに潰れた青は
それでもなお鮮やかだった
夜の青さを知っているか
君の何気ないため息が
ゆらりと暗闇のそこに溜まって
かすかに光を放つ青
夜の青さを知っているか
空が燃えるような夕暮れに
ようやく止んだ長雨が
名残惜しげに乾く青
夜の青さを知っているか
やがて来る朝に怯え
ああ、いつまでもここにいさせてと
必死に請うた哀願の青
夜の青さを知っているか
東の空がおもむろに白む
その寸前にいっそう深まった
夜の終わりを告げる青
夜の青さに身を焦がし
冷たい炎の夜をぼんやりと
あるいは物思うかのように
じぃっと眺めては
ああ、朝を待っていやしないよ
かつて君はそこにいた
小さなアパートのベランダで
細く煙を吹きながら
驚くほど静かに口笛を鳴らした
あの日と同じような
うだるような夜の中で
同じ煙が燻った気がして
音も立てず窓を引いた
夜空は青く
雲は青白く
街灯に照らされて光っていた
眩しそうに光っていた
ああ、
夏の風だ
どうか灯りを消してくれ
その星に点る命さえも
全て失った暗がりで
君の煙草が光るのを見たい
どうか音を立てないでくれ
その脈打つ拍動さえも
やがて息絶えるその刹那に
君の口笛が鳴るのを聞きたい
青い幻想は終わって
僕はグラスを流しに置いた
賑やかな夜はまた続く
このくだらない命みたいに続く
だから夏なんだよな
君の言葉を思い出して泣いた
面倒な道を避けておきながら
「つまらない」だなんて言うなよ
自分勝手に飛び出していながら
「孤独だ」なんて言うなよ
たくさんの選択を越えて
今僕はここに立っているから
それらが全て正しかったのだと
言い張るために生きているのだから
君が選んだその道を
「間違いなんかじゃなかった」と言える日が
きっと、きっと来るから
だから今はまだそこにいて
いつかきっと、迎えに行くから
言葉だけ
一人歩いて行く
僕の知らない場所で
けたたましく鳴っては
言葉だけ
一人歩いて行く
さんざ火あぶりにされたあげく
プラットフォームの隅に打ち捨てられ
言葉だけ
一人歩いて行く
独善的な励ましと提言
僕の心とは裏腹な
言葉だけ
一人歩いて行く
せめてこれだけは、と
何時間でも謳い続けるんだ
森ノ宮駅二番ホームのベンチで
そいつは息も忘れたように項垂れていた
飲みかけのコーラをやると
少し舐めて、また気の抜けたような顔で
"ここにしかない言葉"なんて
結局どこにもなかったんだ
自分で書いておいて100字をゆうに越していることに気づく
夏の終わりの雨があがって
纏わりつくような空気を吸って
見上げてふと目があったら
枝の上のカラスがあくびをした
茜の空の夕立があがって
閉めきっていた窓を開けて
網戸についた水滴を撫でたら
あの日の涙を思い出した
秋のはじめの雨があがって
しまい込んでいたギターをつかんで
もうずっと忘れていた旋律に触れたら
窓の外から歌が聴こえた
もう日も沈む頃
静かな夜が
おもむろに近づいてくるのを見た
今日もまた下らない太陽が上り
真っ青な空は吐きそうな程です
全身の気怠さは昨日の後悔達で
いつまでも僕の踝を掴むのです
こんな何でもない冬の朝だから
縮こまった体を少しだけ震わし
また今日も行くべき場所へ行く
目的などとうの昔に忘れました
こんな僕をこんな所に繋ぐのは
死ぬことさえ面倒に思う怠惰と
この世への未練かのような顔で
僕の心に居座り続ける恐怖です
自分の為に生きられるほどには
僕は強くなんてなれなかったし
誰かの為に生きられるほどには
僕は優しくなんてなれなかった
僕に死ねるだけの勇気があれば
僕はもっと幸せだったでしょう
努力することを覚えられたなら
僕はもっと幸せだったでしょう
それでもその何方でもない僕が
幸せだなと思う瞬間があるから
この世界はやっぱり意地悪です
僕の襟を掴んで離さないのです
貴方はこれをただの詩だと思い
また溜め息をつくのでしょうか
何れにせよ僕の中の浅ましさが
やっぱり僕は嫌いでなりません
誰に伝える気も無いかのような
こんな長ったらしい詞たちさえ
貴方は何故か拾ってくれるから
やっぱりこの世界は意地悪です
そんな詞ももうすぐ終わります
ですが最後に一つだけとすれば
僕は貴方のように生きたかった
それしか言うことは無いのです
めめんとさんの紡ぐ言葉たち、今回はいつにも増して屹立しているね。今思っていることだからなのか、とても強い(儚くて美しくて胸がきゅってなる強さ)詩だと思いました。
私、この詩がすごくすごく好き。
(なんて言ったら貴方は一体どう思うでしょう。)
“掲示板に書くことじゃなかったかもしれないけど”なんて、何ふざけたことおっしゃっているのですか。想いをぶつけてこの作品が存在するのなら、それは大正解だし、私はすごい瞬間に立ち会うことができたのだなと思います。
本当に、どこをとっても好き。たぶん、この想いはレス欄にはおさまりません。
褒められ慣れてない(褒められるのが苦手、だっけ?)めめんとさんだそうだけれど、これを褒められずしてどうするんです。とか言いながら、感想はおさまらないので割愛します。ここまでの熱量を見て察してください。聞きたかったらいつでも言ってね、長文を作成しておくので(笑)
ほんと、ここ最近で一番の詩だよ、めめんとさん!!!(小声)
とりあえず素晴らしすぎるのでスタンディングオベーション送っときますね
\\パチパチパチパチパチパチパチパチ//
ピーターさん、fLactorさん≫
まとめて返すことを許してくださいね
この詩を好きだとか素晴らしいだとか言われるのは少々複雑なところもあるのですが、ありがとうございます。それでもやはり僕にはこんな詩しか書けないので。ありがたいです。
この気持ちを君にぶつけようなんて思わない
ただこの気持ちが地面に落ちて
砕け散った時の破片が
少しでも君に刺さればいい
その痛みに君が泣けばいい
めめんとさんて、繊細でロマンチックな言葉を紡ぎ出すよね。この詩はとっても好きだなあ…。
この詩に近いことは、幾度となくこれまで想ってきたことでもあるから、なんだかシンパシーを感じてしまったりして。
ちなみに、タイトルを空欄にするのはどうやっているんだい…私はそれができないのですよ。色々な方法を試したんだけどなあ…。
彼女がオーディションに落ちた。
話によれば、彼女よりも演技力があって綺麗な人がそれこそ掃いて捨てるほどいたらしい。僕は彼女がそのオーディションにすべてをかけていたことを知っていた。
オーディションの次の日、彼女はそれはそれはひどい顔をしていた。どうしたんだ、大丈夫かい?そう聞いても、大丈夫、そう答えるだけだった。
それから彼女は、本当に糸の切れた操り人形のようになってしまった。夢を語る度にあれほど輝いていたその両目は、すっかり濁って伏しがちになってしまった。日に日に弱っていくように見える彼女は、次第に僕の話も聞いてくれなくなっていった。
ある日、僕は彼女の家に行った。その手には一輪の花。手紙を書こうと思ったけど、僕は文章を書くのが下手だった。僕はその真っ赤な花を、一言だけ添えたカードと一緒にポストへ入れた。
次の日、彼女がいつもとは違う、すごい早足でこちらに近づいてくるのが見えた。僕は彼女が元気になったのかなと思って嬉しくなったが、すぐにそうでないことに気づいた。
彼女は今までに見たことのないほどその目に涙をためて、怒りをその拳にためていた。その手には、一輪のオダマキ。
どういうつもりなの、どういうつもりってなんだよ、僕は君を心配して、人のことをバカにするんじゃないわよ!!!バカになんかしてない、僕は、もういいわよ!!!
彼女はそのオダマキを僕の足元に投げつけていってしまった。僕はただ、呆然と佇むしかなかった。
それから彼女は、めっきり姿を見せなくなった。今彼女がどうしているのか、僕は知らない。
オダマキの花言葉《愚か》
赤いオダマキの花言葉《心配して震えています》
なんだかいつもとは違う気がして
いつもは飲まないフルーツジュースを買った
プルタブを引いて
ゆっくり歩いた
歩きなれた道は
どこか初めて来た場所のようで
引き付けられるように
ふと見上げると
ほら、
冬の星座だ
私ね、めめんとさんの詩は好きだから、比較的レスはしている方なのよ(これでも)笑
めめんとさんのはわかるもん(恐いとか言わないで笑)。読みはじめて、あっ…て思って、名前見たらやっぱり。笑
この詩にもね、もっとはやくレスするつもりだったの。でも、やめたんだ。この前レスしたのにスパンが短いかと思って(何に気を遣っているのか)笑
めめんとさんの詩は、もうあなたの詩として完成形だと思うの。だって、読みはじめてあなたの詩だと、少なからず私には伝わるから。
余計な言葉で飾るよりも、少ない言葉がたくさんの彩りを与えてくれるような詩を、めめんとさんはかくよね。
ファンタジー、楽しみにしているけれど、詩も大切にしてほしいな。あなたは、私の憧れるような詩をたくさんかいているから。
彼女は言った
いつかは終わってしまうのね
終わるから始まりがあるなんて言わないで
そんなありきたりな言葉で
私を慰めようとしないで、と
だから僕は言った
終わりを決めるのは
君自身だよ
君が諦めの悪い人間で
まだ終わってない、なんて
スポーツ漫画みたいなことを言ってれば
少なくとももう少しだけは
終わりが来るのも先だったかもね
すると彼女は言った
下らないね
僕が返す
うんくだらない
でもこの世界は
どっからどうみても
下らないから
彼女は納得したように
それもそうね
でもそれって
なんの慰めにもなってないから
僕は小さく笑った
テーブルの上のコーヒーが
小さく揺れた
九月も末。
たった1gの憎悪が
街を焼き払った
そのすさまじい熱は
全てを凍りつかせた
今も誰かの心で
凍りついたままの風景
渇きに苦しみ血を吐いた
虚空を見つむ人々の目
なにも知らない僕が
なにか1つ
言えることがあるならそれは
知らないゆえに
大勢の息の根を
止めることには
決して決して
ならないように
今日もどこかで街が焼ける
人の心の中の街が
僕は知らない
今目の前にいる
あなたの
心が
今にも
焼け落ちそうなこと
開け放った窓から、一陣の風。
熱気と湿気を帯びた、その風は、
机の上の散逸した、プリント一枚、
吹き上げて走り去る。
君の面影を見た、6月も下旬。
また君を思い出す。
忘れたはずなのに、思い出す。
忘れなきゃならないのに、
プロペラみたいにぐるぐる回って、
心に吹いた一陣の風。
また君を思い出す。
モリくん、お久しぶりです…
らしくないとおっしゃりつつ、夏休みそのままを切り取ったようで、とても素敵だと思います。
勝手にめめんとさんのイメージを作り上げていたんですねきっと……こんな詩もかくんだなと、ちょっとびっくり。笑
好きです。扇風機じゃないところにまた、ああ,旋風機なんだなと。
音じゃわからない表現を、文字は視覚的に刺激してくれるので、ちょっとしたことが受け取り方によって変わってくるのも好き。
そういえば、memento moriってラテン語だったんですね。どこからあなたはこの言葉を引っ張ってきたのでしょうか……。
レスありがとう。夏らしい感じですね。
自分勝手に飛び出していながら
「孤独だ」なんて言うなよ、のところに
どきっとしてしまう今のわたしがいて
迎えにいきたいあの日のわたしもいて
なんだかひしひしとささる詩。
心強くて、抱えて歩んでいきたい言葉たちだな、と^ ^