こつ、と黒い影が建物の屋上に舞い降りる。
よく見るとそれは人の形をしているが、蝙蝠のような濡羽色の翼を生やしている。
ゴシックファッションに身を包んだ少年とも少女とも言えない”それ“は、人気のない屋上の柵の上に立っていた。
「あら」
ふと声が聞こえて、黒い人影はくる、と振り向く。
そこには薔薇の髪飾りを付けた少女が立っていた。
「悪魔かしら」
それとも別の怪物?と少女は笑いかける。
「…何の用だ」
黒い人物は冷たく答えた。
少女はふふふと笑う。
「別に何もないわ」
ただ話しかけてみただけよ、と少女は言った。
「…」
黒い人物は黙って少女を見つめる。
「貴方こそ、何の用かしら」
今度は少女が尋ねる。
「…ただ、通りすがっただけ」
黒い人物はそっぽを向いて答えた。
ふーんと少女は頷く。
「それにしても貴方、異様な魔力の気配がするけれど…何者なの?」
黒い人物はハッとしたように振り向く。
「お前何でそれを…」
黒い人物がそう呟くのを見て、少女は笑う。
「分かるのよ、わたしには」
魔力の気配が、と少女は続ける。
「ただそれがあまりに異質だっただけで」
「それ以上言うな」
黒い人物は少女の言葉を遮る。
少女は驚いたように目をぱちくりさせる。
「…それ以上は言うな」
黒い人物はまたそっぽを向いた。
レスありがとうございます。
実は「Daemonium Bellum」ベースじゃないんですよね〜
他のお話ベースというか。
まぁ続きを楽しみにしていらしてください。
「そんなに気になる?」
自分の魔力、と少女は首を傾げる。
「…」
黒い人物は黙ったままだ。
少女は呟いた。
「もしかして貴方、いわゆる…」
「お前に何が分かる」
黒い人物は少女の方を向いた。
「貴重な存在として奇異の目を向けられ、狙われる俺の、何が分かる」
黒い人物は少女を睨んだ。
少女は暫くポカンとしていたが、不意にふふふと笑った。
「貴方もそういうモノなのね」
少女はそう言って続けた。
「わたしも、似たようなモノよ」
黒い人物はは?と呟く。
「…何が言いたいんだ」
少女は笑いながら答える。
「いいえ、こっちの話」
少女はそう言って黒い人物に向き直った。
「…そうかい」
黒い人物はそう呟くと、濡羽色の翼を広げて空へと飛び立った。
少女は建物の屋上から、その様子を眺めていた。
どこにでもありそうな小さな喫茶店が入る建物の屋上。
そこにふわりと黒い人影が降り立つ。
黒い羽を生やした”それ“は、屋上に降り立つとともに背中の羽を消した。
そして屋上の塔屋に入って行った。
「…」
屋上の塔屋の中の階段を下り、黒い人物は物置のような部屋に入っていく。
部屋の中には古びたテーブルがあって、その周りでどこか異質なコドモ達が談笑していた。
…と、黒い人物に誰かが勢いよく飛び付いた。
「ナツィ‼︎」
おかえり〜と金髪に角が生えたコドモが黒い人物に抱きつく。
「おやつ買ってきた⁇」
金髪のコドモは笑顔でそう尋ねる。
「…一応」
それはいいからとりあえず離れろ、”キヲン“と“ナツィ”と呼ばれた黒い人物は言う。
「おかえりナツィ」
そう言いながら部屋の奥からエプロン姿のコドモが近付いてくる。
「おつかいありがとう」
エプロン姿のコドモはそう言ってナツィからビニール袋を受け取った。
「…別に」
ナツィはそっぽを向きながら答えた。
「お、照れてんのか?」
ナツィの様子を見て、椅子に座るキャップ帽を被った赤髪のコドモがニヤニヤ笑う。
「何だよ“露夏”」
ナツィは嫌そうな目を“露夏”に向ける。
「ただ思ったことを言っただけさ」
露夏はそう言って笑った。
「そー言えば“ピスケス”」
不意にキヲンが部屋の奥で紅茶を飲む長い青髪の人物に話しかけた。
「さっきの話、ナツィにしたら?」
青髪の人物こと“ピスケス”はふと顔を上げる。
「何だよさっきの話って」
ナツィが不思議そうに呟く。
ピスケスはふふふと笑って話し出した。
「最近”学会“が追っているホムンクルスの話よ」
…人造人間か、とナツィは呟く。
「ええそうよ」
ピスケスはそう言ってティーカップに口をつける。
「人造人間って今学会の規則で禁止されてるんじゃなかったか」
ナツィが言うとピスケスはうふふと笑った。
「それがね、ある魔術師がこっそり作ったらしいのよ」
その魔術師はすぐ学会にとっちめられたんだけどね、とピスケスは続ける。
「でも肝心のホムンクルスが逃げ出したらしくて」
「それマズくね?」
ナツィは思わず遮る。
「学会は何をしてるんだ?」
呆れたようにナツィが呟くと、ピスケスはふふふと笑った。
「そう、マズいの」
だから学会は総力を挙げて探してるらしいわ、とピスケスは言った。
「ふーん」
ナツィはそう言ってテーブルの傍の椅子に座る。
「…で、そのホムンクルスはどんな奴なんだ?」
ナツィがそう尋ねると、ピスケスはそうねぇ…と答える。
「詳しい容姿は分からないけど、何やら頭に薔薇の髪飾りを付けてるらしいって聞いたわ」
「なっ」
ナツィはハッとする。
「…どうかしたの?」
ピスケスがそう聞くと、ナツィは微妙な顔をした。
「まぁ、なんて言うか…」
ナツィはそう言って目を逸らす。
「まさかお前…」
ピスケスがそう言いかけた時、ナツィは急に立ち上がった。
「…ちょっと、行ってくる」
そう言ってナツィは屋上に続く階段へと向かった。
「あ」
待ってよとキヲンは止めようとしたが、ナツィは気にすることなくその場を後にした。
「…」
暫くその場に微妙な空気が流れた。
しかし、ピスケスがぽつりと呟いた。
「私達も行くわよ」
え、と露夏はピスケスの方を見る。
「行くって…」
「決まってるでしょう」
ピスケスはティーカップをテーブルの上に置く。
「アイツを追うのよ」
そう言ってピスケスは立ち上がった。
誰もいない建物の屋上。
そこにフリルがついた紅色の服を着た少女が立っている。
少女は何をするまでもなく、屋上からの風景を眺めていた。
…と、少女が何かを察したようにちらと後ろを見た。
その直後、何者かが黒鉄色の鎌を少女に振りかざした。
「!」
少女はすんでのところでそれを回避する。
そしてどこからともなく花で装飾された槍を取り出し、襲って来た相手に向けた。
「あら」
貴方だったのね、と少女は微笑む。
鎌を持った人物…ナツィは無言で対峙する。
「何も言わずに襲ってくるなんてひどいじゃない」
少しくらい声かけてよ、と少女は続ける。
「…」
ナツィは黙ったまま鎌を少女に向ける。
「お前…ホムンクルスなんだってな」
ぽつりとナツィは呟く。
「そうよ」
わたしは魔術で生まれた人造人間、と少女は笑う。
「だったら…」
ナツィはそう言って鎌を振り上げる。
「俺が倒してやる‼︎」
そして思いっきり鎌を振りかざした。
「っ!」
少女はギリギリの所でそれを避ける。
「何よ貴方…」
ホムンクルスにでも恨みがある訳?と少女は聞く。
「んなことどうでもいい!」
とりあえずくたばりやがれ‼︎とナツィは鎌を振り回す。
…と、その時だった。
どこからともなく矢が飛んできて、ナツィの鎌に当たった。
「⁈」
驚いて矢が飛んできた方を見ると、青い髪をなびかせた人物が弓矢を構えていた。
「ピスケス…」
ナツィは背中に白い羽の生えた青髪の人物を睨みつける。
よく見るとピスケスの側には物置にいたコドモ達もいた。
ピスケスは呆れたように言う。
「何をしているのよ、お前」
獲物を殺してしまってはもったいないじゃない、とピスケスは言う。
「貴方達…」
少女は訝しげにピスケスの方を見る。
「ふふふ、私達は”学会“の関係者よ」
貴方を捕らえにきたの、とピスケスは微笑む。
「さぁ覚悟なさい…ホムンクルスの“ロザリンド”!」
ロザリンドと呼ばれた少女は鼻で笑う。
「ロザリーと呼んで欲しくてよ!」
そう言ってロザリーは屋上の柵を飛び越えた。
「!」
待ちなさい!とピスケスが駆け寄ったが、地上にはロザリーの姿はなかった。
「透明化魔術…」
逃げやがったわね、とピスケスは呟く。
「…追いかけないのか」
ナツィがピスケスにそう尋ねる。
「そうね…」
ピスケスは暫くその場で考える。
「…あの子達がいるから、今回はパス」
どうせ学会の人がどうにかやってくれるでしょうし、とピスケスは自分の後ろに目をやる。
ピスケスに付いて来た3人は気まずそうな顔をした。
ナツィはため息をつく。
「…何でついてきたんだよ」
ナツィにそう言われて、露夏は別に良いじゃんと呟く。
「ピスケスが行くわよとか言うから」
「何だよそれ」
その様子を見て、ピスケスはふふふと笑う。
「まぁ良いじゃない、私が連れて来たようなものだし…」
お前が怒る必要はないわ、とピスケスは言う。
「何だよ、怒るって…」
怒ってねぇし、とナツィはそっぽを向く。
「ていうかお前らどうやってここまで来たんだよ」
ナツィの質問に対し、キヲンはえへへ〜と答える。
「建物の屋根伝いにここまで来たんだ〜」
ピスケスったら飛ぶのが速いから大変だった〜とキヲンは笑う。
「お前そんなこともできるのか」
「え、そんなにビックリする?」
ナツィに言われてキヲンは不思議そうに答える。
「ボク達は人工精霊だからそれ位できて当然だよ〜」
それにボクそんなに弱くないし、とキヲンは付け足す。
ナツィははいはいとだけ答えた。
「…とりあえず、この後どうする?」
ふと露夏が呟く。
そうねぇ…とピスケスは言う。
「アイツを追いかけるのは難しそうだし…戻る?」
“かすみ”の家へ、とピスケスは笑う。
「そうだな」
「そうする〜」
皆はそう言って頷く。
ふとエプロンを付けたコドモがナツィに目をやった。
「ナツィ?」
声をかけられて、ナツィはぴくと反応する。
「何? ”かすみ“」
ナツィは“かすみ”にちらっと目を向ける。
「行こう」
かすみにそう言われて、ナツィはそうだなと答えた。
そしてかすみ達の方に歩み寄った。
〈薔女造物茶会 おわり〉
どうも、テトモンよ永遠に!です。
書くって言ったので、「薔女造物茶会」のあとがきです。
お気付きの方もいると思われますが、この物語は2021年11月~12月に投稿した「緋い魔女」の続編…というか、「緋い魔女」を前日譚とする物語です。
高1の秋に思いついたオリジナルキャラクターをベースにした物語を、今回思い切ってアウトプットすることにしました。
いかがでしょうか?
今回はまだ第1話みたいなものなので、キャラクター紹介に留まってしまいました。
とりあえず、これからこの物語をシリーズ化して時折まとめて投稿するつもりでいます。
タイトルは「造物茶会シリーズ」とでも言いましょうか。
ちなみに各エピソードのタイトルは基本的に「○○造物茶会」で統一する予定です。
もちろん「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の投稿を優先しますよ。
「ハブ ア ウィル」の書き溜めが尽きた時に投稿する調子でいます。
では今回はこれくらいにして。
キャラ紹介は…また今度でいいかな。
あ、そうそう、「ハブ ア ウィル」の最新エピソードは現在鋭意製作中です。
エピソードが完成するしないに関わらず、今月中に投稿し始めるつもりでいます。
…それではこの辺で。
テトモンよ永遠に!でした~
レスありがとうございます!
そうです!オーズです!YouTube見ていたんですね!私もYouTubeで見てはまりました!
リアルタイムで見たかった。。。同感です!。゚(゚´Д`゚)゚。
こちらこそレスありがとうございます。
そう、オーズをリアルタイムで観たい人生でした…(笑)
レスありがとうございます!ここに書き込みますね!
私も第1話からリアルタイムで見ていたんですが、やっぱり私も寝坊してしまって、コヨミの最期を見られなかったので、公式さんに感謝でした!(泣)
おととしやったんですね!今年初めて公式を見つけたのでわかりませんでした。悔しい。。。。゚(゚´Д`゚)゚。
やってほしいですねぇ。。。ウィザード。。。やったら、お昼のショッカーさんと一緒に見るのに。。。
あと、できれば電王を見たいからみだいこんより(>_<)
レスありがとうございます!そうです!ドライブの泊くんです!かっこいいんですよね。。。でも最終回これも寝坊してみられなかったんですよ〜配信してくれることを願います!
こちらこそレスありがとうございます。
ドライブは去年公式が配信してましたよ。
またいつか配信してくれるといいですね。
レスありがとうございます!
公式の配信、嬉しかったですよね!
あそこから更に人間性を失っていくのが…
だからこそ、生きているWが風都の明日を掴んだと思うと上手いなって思ってます
レスありがとうございます!
そうです!ジオウです!私もあまりジオウは見れなかったので、You Tubeで配信希望ですね笑
裏番組。。。なんの番組だったんですか??
檀黎斗王の回、懐かしいですね〜私もその回だけ記憶にあります(うろ覚え)
テトモンさんの長編小説だ!
どことなく以前テトモンさんが企画していた悪魔戦争の雰囲気を感じました。