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「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」14個目のエピソード「ヌリカベ」前半戦、①~⑬のまとめ。

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ①

残暑が続く9月の初旬。
寿々谷市では夏休みが明け、学校の2学期が始まった。
クラスの皆は知らない間に日焼けしていたり、背が伸びていたり、イメチェンしていたりしていた。
一方わたしはと言うと、それと言った変化もなく普通に夏休み明けを迎えていた。
クラスの様子もそこまで変わりない、そう思っていた。
しかし…
「ねぇ聞いた聞いた? このクラスに転入生が来るんだって!」
「マジで⁈」
「あー聞いたよその噂」
夏休み明け早々、わたしのクラスは転入生の話で持ち切りになっていた。
「どんな子かな?」
「美少女だったりして」
「おいおい」
情報が錯綜していて詳しい事はよく分からないが、わたしのクラスのメンバーが1人増える、この事は確かだった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-11-28 23:04
  • おー新エピソード。
    今回のモチーフは塗り壁ですか。個人的に塗り壁という妖怪は足元を掃くと消えるという特徴的な弱点が面白いので好きです。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2022-11-29 14:32
  • レスありがとうございます。
    お待たせしました、新エピソードです。
    ごゆっくりとお楽しみください。

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2022-11-29 17:37
「14.ヌリカベ」開幕。

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ②

「おっはよーサヤカ!」
「あ、おはよう亜理那」
そんな中、亜理那はいつものようにわたしに話しかけてきた。
「ねぇ、うちのクラスに転入生が来るって聞いた?」
「あー聞いた聞いた」
亜理那もこの話をするのか、とわたしは呆れ気味に答える。
「どんな子が来るんだろうね?」
亜理那はニコニコしながら言った。
「…そんなに楽しみ?」
わたしが何気なく聞くと、亜理那はうん!と大きくうなずく。
「だってこんな街に引っ越してくる子なんてそうそういないもん!」
しれっと自虐の入った発言に、わたしはそ、そうだねと返す。
でも確かに、この街に引っ越して来る人は中々いないかもしれない。
寿々谷は周辺地域に比べれば都会だけど、ベッドタウンとか新興都市ってワケでもないから、外からやって来る人はそんなにいない。
故に、転入生がやって来るという事はちょっとした騒ぎなのだ。
「楽しみだな~」
転入生に会えるの、と亜理那は楽しそうに笑う。
と、ここでチャイムが鳴った。
すぐに教室に先生が入って来る。
「はーい、この後朝礼だから廊下に並んでー」
先生がそう言うと、皆はバタバタと教室の外へ向かった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-11-30 23:04

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ③

教室がある建物の隣の体育館にて。
体育館では今まさに朝礼が始まろうとしていた。
…と、わたしの学年の生徒が座っている場所の前に学年主任の先生が立った。
「はいちゅうもーく」
学年主任の大きな声で、ざわついていた2年生全体が静まり返る。
「えー、実はこの学年に新しい仲間が増えます」
ほら、おいで、と学年主任は体育館の脇から三つ編みお下げの少女を呼んだ。
「転入生の坂辺 里加古(さかべ りかこ)さんだ」
学年主任がそう言うと、少女はさ、坂辺 里加古です、と頭を下げた。
「…何か、思ってたのと違う」
「地味だね」
「美少女じゃない…」
「そういう事言わない」
学年全体が、思ってたのと違う、とざわめく。
それは教室に戻ってからも続いた。
「彼女…坂辺さんて何か地味だよねー」
「パッとしないねー」
「ま、仕方ないんじゃない」
クラスメイト達は口々にそう言う。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-11-30 23:17

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ④

「誰か話しかけてみたら?」
「えー面倒臭い~」
クラスメイト達は皆、教室のあちこちから彼女に視線を送る。
しかし、誰も話しかけようとしない。
だからなのか、坂辺さんは自席で下を向いたまま黙るばかりだった。
「…」
わたしはその様子をまさかの真後ろの席から見ていた。
確かに彼女はちょっと地味だけど…そこまで言うだろうか。
皆がそういう事ばかり言うから、彼女は黙っているんじゃなかろうか。
「次理科の授業だから行こうぜー」
「行こ行こ」
気付くとクラスメイト達は、1時間目の授業の教室へと移動し始めていた。
わたしも移動し始めなきゃ、と教科書類を持って立ち上がり、机と机の間の通路へ出る。
…と、不意に横から話しかけられた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-01 23:00

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑤

「あ、あの」
思わず声がする方を見ると、転入生の坂辺さんがこちらへ目を向けていた。
「すみません、その…」
坂辺さんは恥ずかしそうに目を逸らす。
「次の授業の移動先が分からないので…」
坂辺さんの声は徐々に小さくなっていった。
「あ、もしかして次の授業の場所が分からないの?」
わたしがそう尋ねると、坂辺さんはそうです!と答え。
「それなら良いよ」
わたしが案内するよ、とわたしは彼女に言った。
「え、良いんですか⁈」
「うん、別に良いよ」
驚く坂辺さんに対し、わたしはそう答える。
「じゃあお願いします」
坂辺さんはそう言って、荷物を持って立ち上がった。
それを見てわたしは、じゃあ行こっかと歩き出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-02 23:11
PCだと上から7行目(スマホだと11行目)、「答え」じゃなくて「答える」だね。

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑥

「へー坂辺さんて更月(さらつき)市出身なんだー」
「亜理那、それどこか分かってる?」
「分かってない」
「おい」
理科の授業が終わった後の休み時間、2年生のフロアの廊下にて。
わたしと亜理那と鷲尾さん、そして坂辺さんは、廊下でのんびりと駄弁っていた。
「それにしても」
会話の途中で鷲尾さんがこう切り出す。
「亜理那のクラスに転入生が来たと聞いて見に行ってみたら…」
まさか不見崎さんと仲良くしてるなんて、と鷲尾さんは続ける。
「何だか珍しいじゃない」
「そ、そう…?」
わたしは苦笑いする。
「たまたまだよ、たまたま」
偶然わたしの目の前の席になったから…とわたしは付け足す。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-05 23:06

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑦

「ふーん」
鷲尾さんはそう言って腕を組む。
「ねぇ、坂辺さん、坂辺さんはどこの部活に入るの?」
亜理那がそう聞くと、坂辺さんは軽くビクっとしてから答える。
「え、えーと、まだ、決めてない、です」
「そっかー」
亜理那はニコニコ笑う。
そんな様子を見ていると、不意に鷲尾さんに目が留まった。
鷲尾さんはわたしの隣にいる坂辺さんにじっと目を向けている。
「鷲尾さん、どうかした?」
わたしは思わず尋ねる。
「…いや、何も」
鷲尾さんはそう言って首を横に振る。
…と、ここで授業開始のチャイムが鳴った。
あ、じゃあね、とわたし達はそれぞれの教室へと戻って行った。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-06 22:31
  • レスありがとうございます!
    そうです!ゴーバスターズの最終回でやった、レッドバスターの名言になります!(泣)
    あまり記憶にないのですが、最終回の名言だけは頭に残っていました。
    そして!ビートバスター!!かっこいいですよね!私はイエローバスターが好きでした(泣)10年も前…日が立つのは早いですね…
    また見たい一作です!

    からみだいこん
    女性/16歳/宮城県
    2022-12-08 20:25

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑧

全ての授業が終わって放課後。
生徒達は帰りや部活の準備に追われている、
そんな中、わたしは荷物を鞄に詰めていた。
「あの、不見崎(みずさき)さん」
不意に声をかけられたので見ると、坂辺さんが立っていた。
「…一緒に帰りませんか?」
急な提案に、わたしは目をぱちくりさせる。
「あ、別に、いやなら良いですよ」
1人でも帰れるし…と坂辺さんはうつむきながら言う。
「…別に良いよ」
わたしが笑顔で言うと、坂辺さんはホントに?と聞き返す。
「うん、わたしこの後部活ないし…」
「嬉しい!」
わたしが言い終わる前に、坂辺さんはそう言って手を叩く。
「…へ?」
「あ、何でもないです」
わたしがポカンとしている様子を見て、坂辺さんは慌てて平静を装う。
坂辺さんてこういう反応もするんだなと思いながら、わたしは行こっか、と歩き出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-08 21:54

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑨

「へー、親の仕事の都合で寿々谷に来たんだ」
「そうなんです」
坂辺さんと一緒に会話しながら、わたしは学校の近くの通りを歩いていた。
「お父さんがこっちに転勤になって、それで引っ越して来たんです」
坂辺さんは恥ずかしそうに言う。
「ふーん」
わたしはそう言ってうなずく。
「前の学校はどんな感じだったの?」
「え?」
わたしが尋ねると、坂辺さんはポカンとして立ち止まる。
「前の学校…」
坂辺さんはそう呟いてうつむく。
「…あ、ごめん!」
変な事聞いちゃったね…とわたしは咄嗟に謝る。
「別の話しよう!」
わたしはこの微妙な空気を何とかするために、話題を切り替える事にした。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-08 23:12

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑩

「別の話別の話…あ、そうだ!」
わたしは思わず手を叩く。
「今度2人で遊びに行こうよ!」
坂辺さんまだ寿々谷に来てから日が浅いでしょ?とわたしは彼女に聞く。
「わたしが寿々谷を案内してあげる!」
わたしがそう言うと、坂辺さんは顔を上げた。
「…ホント?」
「うん、ホント」
今度の土日空いてるし、とわたしは付け足す。
「…じゃあ、日曜日、良い?」
坂辺さんは恐る恐る尋ねた。
「もちろん!」
わたしは大きくうなずいた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-09 22:52
  • レス遅れてすみませんっ!こんばんは!
    そうです!ゴーストです! 私は忙しくてなかなか見れず、やっと見れるー!って見ていたら書き込んだシーンが出てきて、感動してました。
    でも、また忙しくて見れないなあって思ったら終わってました。。。゚(゚´Д`゚)゚。
    すごく衝撃的ですよね! ゴーストのセリフ。。。!そのセリフいいですよね! また見たいなあ。。。

    からみだいこん
    女性/16歳/宮城県
    2022-12-12 21:37
  • こちらこそレスありがとうございます。
    レスは遅れてもOKですよ。

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2022-12-12 23:14

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑪

坂辺さんと遊びに行く約束をした週の日曜日。
わたしは寿々谷駅前で坂辺さんを待っていた。
本当は、日曜は”彼ら”に会いに行く事を考えていたが、坂辺さんが日曜日が良い、と言ったので今回は我慢だ。
まぁわたしがいなくても”彼ら”はそこまで気にしないから大丈夫なんだろうけど。
そんな事より坂辺さんだ。
寿々谷に来たばかりの坂辺さんは、無事に待ち合わせ場所に辿り着けるだろうか?
…と考えていると、バスロータリーの方から声が聞こえた。
「おーい、不見崎さーん」
見ると、白い帽子を被った坂辺さんがこちらに駆け寄って来た。
「あ、坂辺さん」
わたしは思わず声を上げる。
「待った?」
「そんなでもないよ」
他愛のない会話を交わしてから、わたしはこう切り出した。
「じゃあ、行こっか」
坂辺さんはうん、とうなずいた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-12 22:53

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑫

その後、わたし達は寿々谷の色々な所に行った。
とは言え、寿々谷駅の周り位だが。
なぜなら、寿々谷市にはそれと言った名所がないのだ。
あるとしたら…寿々谷公園や寿々谷神社、ショッピングモール位だろうか。
とにかく見所がないから、紹介するにしても自然と寿々谷駅周辺になってしまうのだ。
そんなこんなで、わたし達はショッピングモールに辿り着いたのだった。
「ねぇ坂辺さん、どっか行きたい所ある?」
ショッピングモールの入口にある案内図の前でわたしが尋ねると、坂辺さんはうーんと宙を見上げる。
「…別に、ないかな」
「そっか」
じゃあ…とわたしは続ける。
「3階に休憩スペースがあるから、そっちへ行こっか」
フードコートは混んでるしね、とわたしは付け足す。
「うん」
坂辺さんはそううなずいた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-13 22:55

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑬

その様子を見て歩き出した時、ふと視界に見覚えのある4人組が目に入った。
「あ」
わたしも相手方も、思わずそう呟く。
「…」
目が合うと、両者の間に微妙な空気が流れた。
「…何だよ」
最初に口を開いたのは、4人組の1人、小柄な少女ことネロだった。
「何って…」
「いや何か用かよ」
ネロはジト目でこちらを見る。
「用って…特にないけど」
「あっそ」
わたしが言い終わる前に、ネロはそう吐き捨てた。
「て言うか珍しいなお前」
おれら以外の人間と一緒にいるなんて、と黄色いTシャツの少年…耀平が言う。
「友達か?」
そう耀平に聞かれて、わたしはうんとうなずく。
「友達、わたしのクラスに転入してきたばかりなの」
わたしがそう言うと、坂辺さんは恥ずかしそうな顔をした。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2022-12-14 22:47
続きは後半戦のまとめで。