「へー」
転入生かーと師郎は彼女の顔を覗き込む。
「どこから来たんだ?」
師郎がそう聞くと、坂辺さんはますます顔を赤くする。
「え、えーと」
「ほら師郎、相手が怖がってるじゃんかー」
師郎の顔が怖いからだよーとネロが師郎の腕を引く。
「えー仕方ねーじゃん」
元々こんな顔ですーと師郎は笑う。
「ごめんね、坂辺さん」
わたしの友達、ちょっと変わってるから…と言いかけた所で、不意に坂辺さんが口を開いた。
「…大丈夫」
大丈夫だから、と坂辺さんは帽子を目深に被る。
「大丈夫って…」
わたしがそう言いながらふと前を見ると、”彼ら”の姿はそこになく、”壁”だけがあった。
「…え」
わたしは思わずポカンとする。
「あれ…?」
わたしはそう呟いたが、それを遮るように坂辺さんがこう言った。
「行こう、不見崎さん」
あ、でも…とわたしは言ったが、坂辺さんは気にせずショッピングモールの階段の方へ向かう。
「…」
何なんだろ、とわたしは思いつつ、彼女に続いた。
レスありがとうございます。
ジュウオウジャーがまさかゴーカイジャーとコラボしていたのは衝撃でした。
ゴーカイジャーは観たことないけど、あのコラボ回で余計観たくなりましたね。
「ハブ ア ウィル」はいつだって不思議なお話です。
今エピソードは場面転換が多くて忙しいけど、楽しんでもらえてるなら幸いです。
こんばんは!レスありがとうございます!
トッキュウジャー!正解です!配信公式でしていたんですか!?見たかったです(´;ω;`)
リアタイで見ていましたがめちゃくちゃ面白いですし、小さい頃電車が好きだったので、ワーワー騒いでました笑
あれをきっかけで、志尊淳と、横浜流星のファンになりました!またみたいですよねー!
ちなみに、「俺も(信用とまではいかないけど)、裏切られる前から疑うのをやめる」という名言は、トッキュウ4号ヒカリ(横浜流星)でしたー!
レスありがとうございます。
トッキュウジャー、懐かしいですね。
1号と4号が後にめっちゃ有名になるとは当時夢にも思いませんでした(3号も結構有名になったし)。
「俺も~」のセリフは4号のセリフだったんですね。
…そう言えば彼、そんなセリフを言ってたような気がする。
それから暫く。
わたし達2人はショッピングモールの休憩スペースにいた。
「不見崎さんて妹が2人いるんだ」
「うん、一方の性格はアレだけど…」
坂辺さんと他愛ない会話をしながらも、わたしはさっきの事を気にしていた。
”彼ら”に遭遇した時の事だ。
ほんの少し目を離した隙に”彼ら”がいなくなり、”壁”が現れた。
”彼ら”は割と神出鬼没な所があるから、突然姿を消してもおかしくない。
しかし突然壁が現れたのは不可解だ。
一体どういう事だろうか。
「…不見崎さん?」
色々と考え事をしている内にぼーっとしているように見えたのだろう。
坂辺さんは不思議そうにこちらを見ている。
「あ、ごめん」
ちょっと考え事してた、とわたしは笑う。
「何を考えてたの?」
「え」
坂辺さんからの意外な発言に、わたしは少し驚く。
「それは…」
秘密、かなとわたしは苦笑する。
「秘密…」
坂辺さんは目をぱちくりさせる。
「…」
2人の間に微妙な空気が流れた。
「…わたし、トイレ行ってくるね」
沈黙に耐えられなくなって、わたしは席を立った。
坂辺さんはいってらっしゃい、とわたしを見送った。
「ホーント、ネロ達どこへ行ったんだろ」
わたしはトイレに向かいながらそう呟く。
「突然消えて壁が現れるなんてやっぱり変だよね…」
何でだろ…とわたしは首を傾げる。
「もしかして壁を作り出す異能力者がいるとか…」
そう言いかけて、わたしはふと立ち止まる。
「…まさかね」
もしそういう異能力者がいても、動機が分からない。
第一、そんな事をする意味があるのだろうか?
そう思いながら歩いていると、不意にある事に気付いた。
「あれ?」
このフロアのトイレがある辺りへ来たのに、肝心のトイレが見つからない。
あるのは壁だけだ。
「何で…」
道でも間違えたのかな?とわたしは周囲を見渡す。
しかし、それらしい物は見当たらない。
「…」
とりあえず探そう、とわたしは再度歩き出す。
だが…
「…見つからない」
壁に沿って歩いてみたが、それらしい物は見当たらなかった。
「おかしい」
”彼ら”が姿を消した時と言い、トイレが見つからない所と言い、さっきから何かがおかしい。
何がわたしの周りで起きているのだろうか。
「て言うか、こんな所に壁なんかあったっけ?」
わたしは思わず壁を見上げる。
物心付く前からこのショッピングモールに通っているが、そもそもこの辺りに壁なんてあっただろうか。
何か妙な事が起きている、わたしはそう思った。
…と、後ろから声が聞こえた。
「不見崎さん!」
振り向くと、白い帽子を被った坂辺さんがいた。
「中々戻って来ないから探したよ」
坂辺さんはそう言いながらこちらへ近付いてくる。
「…あ、ごめん」
トイレが見つからなくて…とわたしは苦笑した。
「そんな事は良いから」
早く行こ?と坂辺さんはわたしの腕を掴む。
「え、ちょっと」
トイレは…とわたしは戸惑う。
「わたし、不見崎さんと一緒にいたいの」
…駄目かな、と坂辺さんはわたしの腕を握りしめた。
「一緒にって…」
わたしが困り顔で言った時、不思議な事が起こった。
背後の壁から突然、少女が飛び込んできたのだ。
「⁈」
飛び込んできた少女は着地するとこちらへ目を向ける。
「…ネロ⁈」
わたしは思わず声を上げる。
「何だよ、アンタ」
ネロは訝し気な顔をする。
「何だよって…何?」
「いや何ってこっちが聞きたいよ」
わたしの言葉に対し、ネロはそう答えた。
「おーい、ネロ〜」
すると明るい声と共に耀平が壁をすり抜けてきた。
「お、やっぱり、お前もいたか」
続けて壁をすり抜けてきた師郎はそう呟く。
「…」
黎も黙って壁の向こうからやって来た。
「え、皆、どうして⁈」
わたしが途方に暮れていると、ネロは呆れたようにこう言った。
「どうしてもこうしても、この壁実は幻みたいなモンなんだよ」
ネロは隣の白い壁に手を触れる。
彼女の手は壁をすり抜けた。
「え嘘」
「嘘じゃないホント」
ネロはそう言ってため息をつく。
「…実はおれ達、ショッピングモールに変な壁が現れたモンだから何なのか調べてみたんだよ」
耀平はそう言って説明し始める。
「そしたらこれは幻で、どうやら異能力者の仕業っぽい事が分かったんだ」
まぁすり抜けられるから問題ないんだけど、と耀平は続けた。
「まさか壁の向こうにお前がいるとはね~」
びっくりだぜと耀平は笑う。
「…はぁ」
わたしはワケのわからない出来事に呆然としていた。
…と、ふと気になる事が出てきた。
「ねぇ、どうして異能力者の仕業だって分かったの?」
わたしがそう尋ねると、ネロはこう答えた。
「え、さっき目の前に壁が現れた時にアンタの連れ合いの目が一瞬光ったから…」
「へ?」
思わぬ答えにわたしはついポカンとする。
「それってどういう…」
「どうもこうも、そこのお嬢さんが異能力者だって事だよ」
師郎はそう言い放った。
「え⁈」
わたしはいつの間にか自分の後ろに隠れていた坂辺さんの方を見る。
坂辺さんは帽子を深く被ってうつむいたままだ。
「そこなお嬢さん、ちょっと顔を見せておくれよ」
師郎はそう言ってこちらへ近付き、坂辺さんの帽子を取った。
「‼」
帽子の下から淡い緑色に光る目が現れた。
「ほーらやっぱり」
「やっぱりか」
師郎と耀平はそれぞれ呟く。
「…アンタ、何者だ」
ネロは訝し気な目を彼女に向ける。
彼女は想定外の事態に暫くおどおどしていたが、やがて途切れ途切れにこう言った。
「わたしは”ヌリカベ”…」
向こうにあるモノを認識できなくする”壁”を作り出す異能力…と消え入りそうな声で彼女は続ける。
「そんな」
わたしは思わずそうこぼす。
でも思い出してみれば、あの時鷲尾さんが坂辺さんのことを見ていたのはそういう事だったかもしれない…
わたしはそう思った。
「んで、どうしてこんな事したんだ」
関係ない人にとっては迷惑だぞ、とネロは言う。
「それは…」
坂辺さんことヌリカベは恐々呟く。
「不見崎さんに、1人にされたくなかったの」
わたし、前いた所には友達ほとんどいなかったから…とヌリカベは続ける。
「でも、寿々谷に来て、不見崎さんと仲良くなって、わたし、嬉しくて嬉しくて…」
ヌリカベはワンピースの裾を握りしめる。
「だから、独り占めしたくなった」
それで他の人に邪魔されたくなくて壁を張ったの…とヌリカベは震える声で言う。
「なるほどな」
だから初めて会った時に異能力を使ったのか、と耀平は腕を組む。
「じゃ、じゃあ、どうしてさっきわたしが席を離れた時に異能力を使ったの?」
邪魔する人はいないよね…とわたしは彼女に尋ねる。
「それは…」
ヌリカベは気まずそうに目を逸らす。
「不見崎さんにあまり遠くへ行って欲しくなくて…」
ヌリカベは消え入りそうな声で言った。
「…束縛、か」
ネロはポツリと呟く。
「そ、束縛って」
ちょっと言い過ぎじゃない?とわたしはネロに言う。
ネロはえーと返す。
「だってそうとしか聞こえないじゃーん」
「だよな」
「うんうん」
耀平も黎もそう言ってうなずく。
わたしはえー…と言いながらヌリカベの方を見る。
彼女はわたしの陰でうつむいている。
「人を縛ろうとしたって離れていくだけなのにね」
ネロはヌリカベに目を向ける。
初めて書いた長編の旅日記、楽しんで頂けたようで幸いです。
今思えば、記憶違いや誤字脱字がかなり多くて悲惨な物になりましたが、そちらの企画から頂いた着想のお陰で今までにない良い経験になりました。
「そこまでする必要はないと思うんだけど」
ネロがそう言うと、ヌリカベはますます縮こまる。
「…ネロ、ちょっと言い過ぎじゃない?」
わたしはそう言ったが、ネロは別に良いじゃんとそっぽを向いた。
「…わたしってヒドい奴なんでしょうか?」
不意にヌリカベはこぼした。
「え」
「だって束縛しようとするから…」
ヌリカベは消え入りそうな声で言う。
「こんな人間が友達を持つ資格なんて」
「そ、そんなワケないと思う!」
ヌリカベの声を遮るようにわたしは声を上げた。
「…へ?」
「あ、あー…」
ポカンとするヌリカベを見て。わたしは自分がやった事にやっと気付いた。
「と、とにかくね」
わたしは気を取り直して続けた。
「あなたはヒドい人間じゃないと思う」
目を光らせるのをやめた坂辺さんは顔を上げる。
「わたしの事、心配してくれたんでしょ?」
それってあなたが優しいって事だよ、とわたしは笑いかける。
「だからヒドい人じゃないってわたしは思ってる」
それを聞いて、坂辺さんは静かに顔を上げる。
「…本当?」
「もちろん!」
わたしは大きくうなずいた。
「…ありがとう不見崎さん」
「もう下の名前で良いよ」
苗字じゃ堅苦しいし…とわたしは言う。
「じゃ、じゃあ、サヤカ…ちゃん」
「うん、それで良いよ」
恥ずかしそうな顔をする坂辺さんこと里加古ちゃんを見ながらわたしは微笑む。
「なーんか仲良くなってるじゃーん」
この様子を見て、師郎はニヤニヤする。
「下手に異能力を使って人を困らせるのはアレだけど、まぁ良いんじゃない」
ネロはジト目でそう言った。
わたしと里加古ちゃんは互いに顔を見合わせて笑い合った。
〈14.ヌリカベ おわり〉
どうも、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の作者です。
2022年もあと今日入れて2日になりました。
と、言うワケで年末のごあいさつです。
今年は「ハブ ア ウィル」の物語がもう1度動き出した年でした。
元々高2の内に再開させる予定があったのですが、忙しかったりコロナ禍のストレスで何も手に付かなくなったりして結局お流れになっていました。
それでも再開に漕ぎつけたのは、受験が一応終わって暇になったからです(笑)
それ以前にリハビリ代わりに「緋い魔女」を書いていたのもあって、その頃にはまた文章を書けるようになっていました。
というワケで書きかけの物語「7.サイレントレイヴン」の続きをノートに書き出して、初見の方用の「解説編」を投稿した上で2月24日の再開を迎えました。
この1年、世界にも、自分の身にも、色々なことがありました。
それでも「ハブ ア ウィル」という物語を続けてこれたのは読者の皆さんのお陰でもあります。
本当にありがとうございました。
さて、来年の展望です。
「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は前にも言った通り、大きく動き出していく予定です。
具体的に言うと、現在執筆中の次のエピソード「15.」ではとあるメインキャラの過去が描かれる予定になっています。
また、来たる15個目のエピソードや連載再開1周年、そして連載開始4周年を記念した「ごあいさつ」、そしてキャラ紹介コーナーも予定しております。
どうぞお楽しみに。
最後になりましたが皆さん2022年もありがとうございました。
この物語が終わるまではまだ長いので皆さん気長に付き合ってください(笑)
あと「造物茶会シリーズ」の方もよろしくね(*^^*)
というワケで、皆さんよいお年を!
どうも、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の作者です。
この度、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は連載再開から1周年を迎えました‼︎
めでたいですね!
ここまで続けてこれたのも、スタンプやレスを下さる皆さんのお陰です。
いつもありがとうございます。
さて、1周年記念にこの物語の裏話をしようと思います。
元々この物語は、2019年のバレンタインデー辺りに学校の英語の授業中に思いついたお話でした。
その直前にポエム掲示板で「死神」が出てくるある人のポエムを読んだことを授業中に思い出し、「死神と死のうとする少女の読み切りマンガ」的なお話を思いついたのが「ハブ ア ウィル」のルーツになります。
ただ読み切りにするのがもったいないと思って続きを考え、「少女と死神がばったりショッピングモールのゲームセンターで再会する」みたいな話を思いついた所で、「異能力ものにした方が面白いかもしれない!」と考え、「死神」を異能力者の少女(ネロ)にして、彼女の愉快な仲間達を考え…と現在の「ハブ ア ウィル」の形が出来上がっていきました。
そこから2週間ちょっとで初投稿になるので、相当なスピードで話を考えたことが分かりますね(笑)
ま、空想のスピードは速いので。
さて裏話はこれくらいにして。
最後に作者への質問コーナーです。
ストーリーについての質問、作者自身への質問、その他諸々…何でもOKです。
とりあえずレスからお願いします。
では今回はこの辺で。
次は「連載開始4周年記念! 作者からのごあいさつ」でお会いしましょう!
本当は今日1周年なのに、昨日投稿しちゃった。
まいっか。
どうも、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の作者です!
この度、おとといの3/4をもちまして「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は連載開始4周年を迎えました!
めでたい!
と言うワケで前回のごあいさつで募集した質問の回答をしたいのですが…
質問が集まらなかったので今回はパスします(笑)
なので今回は「ハブ ア ウィル」のこれからについてお話したいと思います。
この物語はそんなに長くない物語の積み重ねでできているのですが、最近になってやっと物語の半分くらいまで辿り着きました。
でも正直な所、これからが本番です。
これからメインキャラ達の過去が明かされたり、新たな異能力者が登場したりで、物語は大きく動いていくと思います。
メインキャラ達がピンチに陥ることもあるかもしれません。
それでも、彼らの物語は続いていくのでどうぞよろしくお願いします。
さて、今回の「ごあいさつ」はこれくらいにしたいと思います。
いつもより短めですが、長々と自分語りをしてもどうしようもないのでね。
何か質問などあればレスからお願いします。
ちなみに今日の22時台から新エピソードを投稿します。
どうぞお楽しみに。
ではこの辺で!
テトモンよ永遠に!でした〜
こんばんは!レスありがとうございます!
そうです!ジュウオウジャーです!私も配信で見ています!面白いし、
ナレーションのチョーさんの声でいつも『いないないばあのワンワンだーワンワンだー!』って騒いでます笑
特に最近の回で、ゴーカイジャーや小さい頃のトッキュウジャーとコラボしていて、びっくりしました!
次の回も楽しみですね!
追伸: ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ 、ずっと面白くていつも楽しませてもらっています!
今回のお話は、すごく不思議だなーと思って見てました。次のお話も、ワクワクしながら、見させていただきますね!