それから1週間後。
わたし達は寿々谷公園の入り口にいた。
公園の入り口には”寿々谷市民まつり”と書かれた空気を入れ続けることで膨らんで直立するゲートが設置されており、その入り口を多くの人が通って行った。
「…メイ、遅いな」
耀平が思わず呟くと、だなと師郎はうなずく。
「迷子になっているのか、それともと言った所だな」
師郎もついそうこぼす。
「…大丈夫」
大丈夫だよとネロは自分に言い聞かせるように言いながら顔を上げる。
「メイは、あの子は、そんなに弱くないから」
もしかしたらすでに異能力が発現して、奴をぶっ飛ばしてるかもしれないし、とネロは明るく笑う。
「…」
わたし達は思わず沈黙する。
「だから大丈夫だいじょ…」
ネロがそう言いかけた所で、すぐ側からどうしたのネロ?と声が飛んできた。
ネロはメ、メイ⁈と飛び跳ねる。
レスありがとうございます。
いえいえ、こんな拙い作品なんて参考にしない方がいいですよ(笑)
大人から自分が書くものは「小説の体を成していない」と指摘されたこともあるので…
ノリを参考にするのはいいけど、文体はあまり参考にならないかも…
メイは自分の方を見たネロに対して笑顔で手を振った。
「お、ちゃんと来てくれたな」
良かったなと師郎はネロに目を向ける。
「う、うー」
ネロは突然の事にしどろもどろになってしまった。
「ほら、しっかりしろ」
メイと一緒に周るんだろ、と耀平がネロの背中を押す。
「う、うん」
ネロはそううなずいて、メイに向き直る。
「…じゃあ、行こっか」
ネロがそう言うと、メイはうん!と答える。
そして2人は公園内へ向けて歩き出す。
わたし達4人もそれに続いた。
ネロやメイ、そしてわたし達は寿々谷公園内の屋台やステージを周った。
お昼時も近かったのでたこ焼きの屋台に寄ったり、スーパーボールすくいの屋台で色とりどりのスーパーボールをすくったり。
屋外ステージでは近所の寿々谷高校の吹奏楽部の演奏を見たり、大道芸人のパフォーマンスに盛り上がったり。
わたし達4人はネロとメイの様子を側で見ているだけだったが、2人共楽しそうにしていて見ているこちらも楽しかった。
時々ネロがメイに対して恥ずかしそうな顔をするのを見ていると、ネロってこんな顔をするんだなと新たな発見もあったし。
わたし達はすっかり市民まつりを楽しんでいた。
「…それにしてもネロ、今日はすっごく照れまくってたな」
メイがお手洗いに行っている最中、公園の遊具がたくさんあるエリアで耀平がネロにそう話しかけた。
「見ていて楽しかったぞ~」
耀平がそう言うと、ネロはた、楽しかったって…と顔を赤らめる。
「そうだな」
滅多に見られないネロの顔が見られて俺達は良かったぞ、と師郎は腕を組む。
「えー」
ネロは思わず目を逸らす。
「べ、別に照れてるつもりないし…」
ネロがそう言うと、そんな事言うなよ~と耀平はからかった。
わたしはその様子を見て笑っていたが、ふとある事に気付いた。
「…そう言えば、メイ戻って来ないね」
わたしが言うと、皆はそう言や…と我に帰る。
「メイがトイレ行ってからどれ位経ったっけ?」
「30分…位?」
「結構時間かかってんな」
耀平、ネロ、師郎はそう話し合う。
「でも言うて女子はトイレにいる時間長いし」
「だけどここから1番近いトイレはそんなに混んでたか?」
耀平と師郎はそう言うが、不意に黎がこう呟く。
「…まさか”奴”に捕まったとか?」
その言葉で皆の視線が彼に集まる。
「た、確かにそれもありそう」
「まさかな」
耀平と師郎はそれぞれそう答えるが、ネロは思わず黙ってしまう。
その顔はどこか不安げだ。
「さすがにそれは考え過ぎだろ黎」
なぁ、と師郎はネロの方を見るが、ネロはすでにうつむいていた。
「ネロ…」
耀平はそう声をかける。
「ボク、探しに行って来る」
ネロの言葉に耀平はえ?と返す。
「探すって…」
彼はそう言いかけたが、ネロはメイが向かったであろうお手洗いの方へ駆け出した。
「ちょ、ちょっと待て!」
お前1人で人探しは大変だぞ‼と耀平は彼女を呼び留めようとする。
しかしネロはそのまま走り去っていった。
「…」
その場に沈黙が下りてくる。
「耀平」
ネロを追うぞ、と師郎は耀平を促す。
「あ、あぁ」
耀平がそううなずくと、わたし達はネロの後を追いかけ始めた。
レスありがとうございます
すっかりお久しぶりになってしまいましたね
幸い元気にしています。
この掲示板も見てはいたのですが、投稿するほどの時間が取れず…
でも覚えていてもらえて嬉しいです
まさか文体でバレるとは思いませんでしたが笑
はい、皮肉たっぷりです!
前向きな単語をいかに後ろ向きに、自嘲気味の言葉に聞かせるか、これがクリスマスみたいな恋人の日には合うかなって思ったんです笑
大学も休みに入るので投稿もそろそろ増やそうかと思ってますのでよろしくお願いします
こちらこそレスありがとうございます。
大学、忙しいですよね。
ぼくもそろそろ期末テストが迫っているので頑張らなきゃ…
無理せずこれからも頑張りましょう。
ネロを追いかけ始めて暫く。
幸いにもコマイヌの能力と彼自身がネロの行動の”軌跡”を見慣れているお陰で、彼女の追跡はできていた。
わたし達はコマイヌを先頭に人で混み合う公園内を駆け抜けた。
「ネロ…アイツどこ行ったんだ?」
両目を黄金色に光らせ、ウィンドブレーカーのフードを目深に被ったコマイヌが呟く。
気付くとわたし達は、公園のはずれの森のようになっているエリアまで来ていた。
「…アイツの事だ、もう既に”奴”と接触してたりしてな」
師郎はそう呟くが、耀平の顔は深刻そうだ。
「ホントアイツどこに…」
コマイヌはそう言いながら辺りを見回した所で、あっと何かに気付いたように声を上げた。
「ネロ‼」
わたし達がいる場所から十数メートル離れた木の根元辺りで、小柄な少女がうずくまっている。
コマイヌが異能力を使うのをやめて、ばっと彼女の方に駆け寄った。
「ネロ、ネロ!」
大丈夫かネロ!と耀平がネロの顔を見ると、彼女は弱々しく大丈夫、と答えた。
「…ちょっと、異能力使い過ぎちゃった」
ネロがそう苦笑いすると、耀平はつい溜め息をつく。
「お前の異能力だけじゃ人探しは難しいのに」
何で1人で飛び出したんだと耀平はネロの肩に手を置きながら言う。
「だって、遠い昔ネクロマンサーの能力を持っていた人と友達だったから…」
ネロはそう言いかけて、不意に言葉を止める。
と言うのも、耀平がうつむいていたからだ。
「耀平?」
ネロに名を呼ばれて、耀平はハッとしたように顔を上げる。
「どうしたの?」
ネロの質問に耀平は何でもないと横に首を振った。
「とにかく、メイを探そう」
ネロにとっては大切な人なんだろ?と耀平は笑う。
「うん!」
ネロはそううなずくと、立ち上がって両目を赤紫色に光らせる。
耀平も目を黄金色に光らせた。
ネクロマンサーとコマイヌは手を取り合ってメイを探し始めた。
2人の異能力を組み合わせることで圧倒的に人探しの効率は上がっているらしく、2人は確かな足取りで森のようなエリアを歩いていった。
わたし、黎、師郎も、その後に付いて行った。
「…あっ」
木々が生い茂る中で1人、髪の長い少女を見とめたネクロマンサーは、思わず彼女に駆け寄る。
「メイ!」
ネクロマンサーが異能力を使うのをやめつつそう声をかけると、メイはネロ!と笑顔を見せた。
「どこ行ってたの?」
再会早々メイに聞かれて、ネロはえ?と驚く。
「どこ行ってたって…」
どっか行ってたのはメイの方じゃ、とネロが言いかけた所で不意にネロの背後から高笑いが聞こえた。
「⁈」
バッと声がする方を見ると、さっきまで誰もいなかった場所に白ワンピースにツインテールの少女が立っていた。
「ご機嫌よう」
ネクロマンサーにまだ見ぬ異能力者さん、と少女は笑みを浮かべる。
「…メイをここまで連れ出したのは、アンタか‼」
ネロはそう怒鳴るが、少女はうふふふふと笑うばかりだ。
「そんな事はどうでも良いわ」
両目を暗赤色に輝かせた少女ことヴァンピレスはこう続ける。
「2人共、わらわの餌食になって?」
そう言って彼女は白い鞭をどこからともなく出すと、それを思い切り振り回した。
「危ない‼」
いつの間にか異能力を使うのをやめた耀平は思わず飛び出す。
ネロは咄嗟にメイを突き飛ばすと、どこからともなく黒い鎌を出してヴァンピレスの伸びてくる白い鞭を受け止めた。
「ネロ‼」
メイは困惑した顔で叫ぶ。
ネクロマンサーは具象体同士のぶつかり合いに苦悶の表情を浮かべた。
「これは、どういう…」
「ボクに構わず逃げろメイ‼」
メイの言葉を遮るようにネクロマンサーは怒鳴る。
「ほら、逃げるぞ」
耀平がそう言ってメイを立たせようとする。
しかし、メイは立たない。
メイの目はヴァンピレスと戦うネクロマンサーの姿に釘付けになっている。
「アイツが逃げろって言ってる」
だから…と耀平はメイの顔を覗き込んだ時、耀平はハッとしたような顔をした。
「…メイ?」
耀平がそう言った瞬間、彼女はよろめきながら立ち上がる。
「あら、逃げないのね」
それなら…!とヴァンピレスはメイに向かって白い鞭を伸ばす。
「メイ‼」
ネクロマンサーは思わずそう叫ぶが、彼女は動かない。
白い鞭が目の前まで迫った時、バッと彼女は顔を上げた。
その途端、白い鞭の動きがぴたりとその場で止まった。
「⁈」
ヴァンピレスは驚いたような顔をするが、その体は動かない。
「…メイ⁇」
ネクロマンサーが彼女の方を見ると、彼女の瞳は藤色に輝いていた。
「わたしは、”メドゥーサ”」
”メドゥーサ”と名乗った少女は淡々と告げる。
「わたしと目が合う限り、あなたは動けない」
彼女のその言葉に、ヴァンピレスは苦しそうな顔をする。
「…今だ‼」
どうやっても動けないヴァンピレスを見たネクロマンサーは、すかさず黒鎌で彼女に斬りかかる。
しかしすんでの所でヴァンピレスはそれを避けた。
「っ‼」
ネクロマンサーは思わずつんのめりそうになり、ヴァンピレスは枯れ葉の積もった地面の上に転がる。
「…まさか、わらわが奪い取る前に発現するなんて」
想定外だったわと地面から起き上がりながら、ヴァンピレスはこぼす。
「アンタ、これで”メドゥーサ”の能力は奪えないな」
奪おうとすれば動きを止められるし、とネロはにやりとする。
「くっ」
ヴァンピレスはゆっくりと立ち上がる。
「…まぁ良いわ」
他にも狙っている異能力者はいるし、と彼女は呟く。
「今回は見逃してあげるわ」
だけど、とヴァンピレスは顔を上げる。
「貴女には容赦しない」
ネクロマンサーとヴァンピレスは低い声で言うと、パッとその場から消えた。
「…」
その場に沈黙が流れるが、すぐにハッとしたように異能力を使うのをやめたネロがメドゥーサに駆け寄る。
「メドゥ‼」
「ネロ」
メドゥと呼ばれたメドゥーサは、目を光らせるのをやめるとネロにそう呼びかけた。
「良かったぁ無事で」
一時はどうなるかと…とネロはメイに抱きつく。
「そんなに心配しなくても良いんだよ、ネロ」
わたし、”メドゥーサ”だから、異能力者だからとメイはネロの頭を撫でる。
「あの”ヴァンピレス”って子、怖くないよ」
「でも~」
「でもじゃない」
メイとネロがいちゃいちゃする様子を見ながらわたし達は暖かい目を向けていたが、ふと耀平だけが不満気な顔をしている事にわたしは気付いた。
「あれ、どうしたの耀平」
何かあったの?とわたしは聞いたが、耀平は黙ってそっぽを向いた。
「どうしたの?」
わたしが再度聞いた時、ははーんと笑いながら師郎が耀平の肩に手を置いた。
「お前ネロが他の人といちゃいちゃしてるのが許せないんだな~」
師郎がそう言うと、耀平はち、違うし!と自分の肩に置かれた師郎の手を払う。
「別に、ネロを独占したいとかそういうのじゃ…」
「俺そこまで言ってないぞ」
「うるせー‼」
師郎からのいじりに耀平が反論し、わたし達は思わずふふと笑う。
ネロとメイはその様子を見て、笑みを浮かべながらわたし達の方へ近寄った。
〈18.メドゥーサ おわり〉
どうも、テトモンよ永遠に!です。
2023年も終わりが目の前に迫って参りました。
という訳で年末のごあいさつ2023です。
今年は思ったより「ハブ ア ウィル」の物語が進まなかったなって思います。
去年は8エピソード分くらい投稿したんですけど、今年は約4エピソード分くらいしか投稿できませんでした。
まぁ去年から始めた「造物茶会シリーズ」の投稿もあったり、企画の開催もしたりと「ハブ ア ウィル」以外の投稿もよくしたのでこうなったのかな~と思います。
それでも初期の頃から書きたいと考えていた「15.」や「18.」の投稿をやっとできて良かったです。
また、ずっと出したいと思っていた「ヴァンピレス」をやっと登場させることができました。
彼女についてはまだまだ謎だらけですが、多分来年の内に彼女について語ってあげられると思います。
お楽しみに。
さて、今回のごあいさつはここまで…と言いたい所ですが、最近気になることがあるのでもう少し。
ここの所、ぼくの作品につくスタンプの数が前より増えているんですけど、皆さん「ハブ ア ウィル」はどこから読んでいるのでしょうか?
良かったらレスで教えて欲しいですね。
多分最近読み始めた人が多いと思うんですけど…
でも初期のエピソードを読んでないと理解できない部分もあると思うので、最近読み始めた人はぜひまとめから初期のエピソードを読んでいただきたいものですね(宣伝)!
では、今回はこの辺で。
来年は元日から投稿し始める予定です!
また、新年明けてすぐに既に投稿した「企画アンケート」で1位になった企画を開催します!
「造物茶会シリーズ」もまだまだ展開していきますよ~
そういう訳で、テトモンよ永遠に!でした。
皆さん良いお年を~
レスありがとうございました!!参考にさせていただきます!!テトモンよ永遠に!さんの作品もチェックしながら技を勉強します!