「……何?」
「私、モンストルムやめて人間になる」
「生物学的に無理じゃね?」
フェンリルの茶々を無視して続ける。
「人間側になる。それで、まともなモンストルムの子たちに守ってもらう」
「良いんじゃない? じゃ、あと2人脱走派を引き入れようか」
「……なんで2人?」
「俺の意向だよ」
フェンリルが答える。
「俺は別にどっちでも良いから留まっとく派だったんだが……いや脱走して人間ども困らせるのもナシじゃねーんだけど、スレイプニルが俺とじゃなきゃ出ないっつーから決めたんだ。俺らの集まりが偶数の時、票が偏った方に決めるって。今はデーモン合わせて2対2だな」
「そういうこと。まあ、ここに不満持ってる奴はそれなりにいるし、すぐ出られるんじゃない?」
スレイプニルはそう言って、自分の独房に引き返していった。
「デーモン、私のことも運んでくれる?」
「勿論」
私もデーモンに自分の独房まで連れて行ってもらった。何も無い硬い床に寝転がったけど、これまでの壁に括られた状態よりもずっと身体が楽だ。
ここでは最低限の食事は貰えるし、“メンテナンス”も受けられるから、この怪我もきっと良くなる。そしたら、フェンリルやスレイプニル達と一緒に脱走したいってモンストルム達を集めて、外に出るんだ。何だか希望が出てきた。
まずは戦いで失った体力を回復させなきゃ。私は再び、気絶するように眠りに就いた。
すっかり荒んだビル街を、二人の少年が和気藹々と歩いていく。
苔むした国道にツタの這い散らかした摩天楼。かつて世界でも指折りの大都市だったらしいこの街は、人より鳥の数のほうが多くなって十数年経つ。そんな街路に二人のはしゃぎ声はあまりにも異質に響いた。
「……で、その時の遺骸から摘出された第二頸椎が、どうも新しく開発される武装具の核になるらしくてな」
「へぇー、それ本当に効力あるの?」
「さてね。大方単なる“アヤカリ”ってやつなんだろ。極西のやつらの考えることはわからんな。」
「何言ってんの、てっぺいもそういうことするでしょ」
「てっぺい言うな」
そう言うと、『てっぺい』と呼ばれた少年は足もとの瓦礫の石ころを軽く蹴飛ばした。暗い赤髪の長い襟足が揺れる。
「はるばるヴェスプタくんだりまでやってきてなんで東洋風な名前で呼ばれにゃならんのだ」
「くんだりって、俺たちの前任地よりよっぽど大都会でしょうが」
「この廃墟ぶりを見ても大都会と言うか、たろうはよっぽど辺境の出らしい」
「だからたろうやめろって」
『たろう』はパーカーのひもをプラプラいじりながら答える。淡い青の背中には大きな毛筆の字で「防人」という字が踊り、その左下には小さく「でぃふぇんちゅ」と書いてある。いくら僕が、バカっぽく見えるからもう少しましな服を着たら、と提言しても「かっこいいっしょ?」と全く馬耳東風だ。お好きに。
「ねぇえぇ、松永が言ってた“絶景スポット”ってまだ着かないの」
振り返りながら嘆く『たろう』。
全然先だよ。というか行程の二割も歩いてないんだけど。あっ、露骨に不機嫌そうな顔をするんじゃない。旅行だ遠足だってはしゃいでいたのは君じゃないか。
「そうはいうけどさぁ、もうそろそろビル見飽きたもーん」
「昼でも薄暗いのには確かに参るな。このビル街はどこまで続くんだ」
もうじき開けた道に出るよ。そう言って僕は左腕のデバイスで昨日の晩インストールしておいたマップデータを確認する。三つの緑のバイタルシグナルが点滅しながらゆっくりと太い白線をなぞっている。
「ほんと!じゃあそこまで行こう!早く早く!」
「おい待てッ、いきなり走り出すんじゃない!」
騒ぎながら駆け出していく少年二人を、僕は見送りながら後を歩く。まるで中学男子だ。
「わたしはゲーリュオーンに言っているんです」
暴走し、仲間を危険に晒した挙句街を破壊した…と羽岡は言う。
「これでは、隊長失格ですよ」
羽岡がそう言うと、テメェ今何言った‼︎とイフリートが立ち上がる。
「今回ばっかりはゲーリュオーンだけが悪い訳じゃないんだぞ!」
元はと言えばワイバーンが勝手に怪物態を使ったから…とイフリートは続ける。
ワイバーンは、あ、あたい⁈と自身を指差し驚く。
「でもあたいに怪物態使えって囃し立てたのはイフリ…」
「あーもーうるせー‼︎」
イフリートは地団駄を踏む。
「今回は別に誰も悪くない!」
悪いのはインバーダ、以上‼︎と言ってイフリートは羽岡を睨みつけた。
羽岡は暫くの間黙っていたが、やがて諦めたように会議室から出て行った。
「…」
モンストルムたちだけになった会議室に沈黙が流れる。
「ねぇ、イフリート」
ふと思い出したように二つ結びのコドモ、ビーシーがイフリートの方を見た。
「珍しくゲーリュオーンのこと庇ってるけど、どうしたの?」
普段はもっとバチバチなのに、とビーシーは呟く。
イフリートは別にいいじゃねぇかと答える。
・フェンリル
性別:男 外見年齢:16歳 身長:160㎝
特殊能力:行動の全てが破壊に帰結する
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「破壊力」は「強さ」。無数の拘束具でガッチガチに拘束されているものの、ほぼ無意味。何なら彼の能力で全滅していてもおかしくないので、気を遣っているまである。自分に邪魔な錘を付けて閉じ込める人間は嫌いだが、暴れた分だけ喜んでくれるから人間を守ることは好き。拘束具は邪魔だから嫌いだが、武器になるから好き。正直脱走しようとすれば余裕で出られるし嫌いな人間たちに迷惑かけられるからアリだとも思っているけど、今の生活も好きなので別に逃げない。
・スレイプニル
性別:女 外見年齢:16歳 身長:166㎝
特殊能力:超高速で移動する
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「速度」は「強さ」。無数の拘束具でガッチガチに拘束されていたものの、フェンリルに解放された。好きなことは走ること。普段は隔離施設の廊下を爆走している。できることなら永遠に走り続けていたいのだが、速度があり過ぎて周囲への被害が尋常でないので、あまり走らせてもらえない。そういうわけで人間は嫌い。恩人であるフェンリルが脱走しないので自分も我慢しているが、脱走派が多数派になった瞬間脱出する準備はできている。
・デーモン
性別:男 外見年齢:15歳 身長:155㎝
特殊能力:人間の望みを叶える
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「実行力」は「強さ」。人間大好き派で能力も対人間のものだが、「受けた望みをどう叶えるか」にちょっとした問題があってあまり表には出せない。別に脱出しても構わないとは思っているけど、それをして嫌な気分になる人間もいることは理解しているので逃げたくない。
・ベヒモス
性別:女 外見年齢:14歳 身長:150㎝
特殊能力:自身の質量を変える
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「質量」は「強さ」。初めて戦場に出た際、ちょっとやらかし過ぎて閉じ込められた。そのせいで人間は大嫌いだし逃げ出したい。それはそれとして一般人が危ない目に合ってるのを放っておけない程度には良識と正義感ある、良い意味で普通の子。割とタフいけど、もう二度と戦いたくないです。守ってもらう側になりたい。
「今回ゲーリュオーンが暴走したのは8割ぐらいおいらのせいでもあるし」
なぁ、とイフリートは隣に座る長髪を高い位置で束ねたコドモ、ゲーリュオーンに目を向ける。
「…別に」
「別にってなんだよ別にって」
そっぽを向くゲーリュオーンに対しイフリートは突っ込む。
「おいらが怪物態使えないとか言って煽っちゃったからああなったんだろ」
別にお前が悪びれる必要はないとイフリートはこぼす。
「…」
ゲーリュオーンはイフリートに目線を向けた。
イフリートはゲーリュオーンに目を合わせたが、すぐにゲーリュオーンは目を逸らした。
「まぁ、そんなことでこの話は終わりにして」
ここで長髪のコドモ、デルピュネーが手を叩いて皆の注意を集める。
「そろそろおやつの時間だから宿舎へ行きましょう」
デルピュネーがそう言うと、わーいおやつー!とワイバーンが立ち上がる。
「昨日は出撃でおやつ食べそびれちゃったもんねー」
行こう、ビィとワイバーンはビーシーの腕を掴み立ち上がらせる。
「あ、うん」
ビーシーは少し驚いたように立ち上がった。
「ほら、デルピュネーも」
ワイバーンがそう言うと、ええと答えてデルピュネーも立ち上がる。
そして3人は会議室を出て行った。
「…」
2人だけになった会議室に、微妙な沈黙が流れた。
「イフリート」
不意にゲーリュオーンが自分の名前を呼んだので、イフリートは驚いたようにゲーリュオーンの方を見た。
「…昨日は、ありがとう」
ちゃんと止めてくれて、とゲーリュオーンは淡々と言う。
「なんだよ」
普段はそんなことおいらたちに言わない癖にとイフリートはそっぽを向いて口を尖らせる。
ゲーリュオーンはその様子を見てほんの少し微笑む。
そして椅子から立ち上がる。
「そろそろ行くぞ」
先に行ったあいつらが待ってるからな、とゲーリュオーンは会議室の扉に向けて歩き出す。
「へいへい」
分かってるよ、“隊長”とイフリートは返すと、イフリートはゲーリュオーンの後に続いた。
そして2人は会議室から去っていった。
〈おわり〉
「まあ良いや。朝ごはん食べるから外で待ってて。作業場には入らないでね、蒸し死んじゃうから」
キュクロプスに言われて、ひとまず小屋の前で待機することにする。
手帳の内容を復習しながら待つことおよそ30分。扉が僅かに開き、キュクロプスが顔だけを覗かせてきた。
周囲に注意を払うキュクロプスと目が合う。
「いた」
「やあ」
キュクロプスが屋外に出てきた。そのまま丘陵を下り、麓の村落の方へ歩いて行く。とりあえず後をついて行くことにする。
道中、私は手帳に書いたとある項を思い返していた。
・散歩には、手も口も出さないこと
・散歩には、必ず同行すること
黙ってついて行け、か。たしかに過干渉はストレスになるだろうが、モンストルムはあんな外見でいても所詮は“兵器”だ。手出しすらしてはいけないというのは奇妙な……。
考えながら歩いていると、いつの間にか村落に到着していた。
既に活動を開始していた島民たちは、キュクロプスの姿を見ると親し気に近寄っていって挨拶を交わしていた。意外にも、キュクロプスはこの島ではかなり親しまれているらしい。
キュクロプスは島民の1人と随分話し込んでいて時間がかかりそうだったので、近くにいた別の島民に話を聞くことにした。
モンストルム”ヨグ=ソトース”の肉体生成がようやく終了した。
管理モニタから目を離し、大きく伸びをして凝り固まった身体を解してから腕時計を見る。午前7時過ぎ。これで三徹目か。
流石に一度仮眠を取ろうとデスクを立つと、部屋の外からアコースティックギターの音が近付いてきた。
「……む、カリョウビンガか。ちょうど良い」
そう呟くのとほぼ同時に、モンストルム”カリョウビンガ”が研究室に入ってきた。
カリョウビンガ。仏教上の霊鳥の名を持つモンストルム。私の『研究室長』という立場と権力を濫用……もといほんの少し活用して作成した、非戦闘用モンストルム。『あらゆる楽器と音楽技法を扱う』能力を持つ、華奢で小柄な少女のような人間態の、可愛らしい演奏人形だ。別に外見は私の趣味では断じて無い。ただ単に生成コストが低く見た目に圧迫感が無いからそうしているだけだ。現在は『研究室の護衛』の名目で自由に歩き回らせている。
と、カリョウビンガが部屋に入ってきた。
「おはようございます、作者さん」
「やあ、カリョウビンガ。今日はギターかい?」
「はい。……作者さん」
「何だい?」
カリョウビンガは何も言わずにこちらをじっと見つめ返している。
「カリョウビンガ?」
「…………」
「どうしたんだ、私の可愛いカリョウビンガ?」
「何でも無いです。そうだ、新曲を作ったのです。子守歌にどうですか?」
「良いね、ちょうど仮眠を取ろうとしていたんだ」
カリョウビンガと連れ立って、仮眠室に移動する。カリョウビンガがプレイヤーにCDを入れて、再生ボタンを押した。流れてきたのは、アップテンポでロック調の音楽だった。2分半ほどでその曲は終了した。
「……うん、良い曲だったよ。しかし驚いたな、デスク・トップ・ミュージックと歌声合成ソフトまで使いこなすとは」
「作者さんが創ったカリョウビンガですから。それでは、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
カリョウビンガはぺこりと頭を下げ、仮眠室を後にした。
・ナーギニー(ナギニ)
性別:女 外見年齢:15歳 身長:150㎝
特殊能力:人間を守護する/有毒物質を操る
ある都市に配備されていたモンストルム。ご近所に出張に出たところ、相手が思いのほか強くて死にかけた。
人間のことは守るべき存在であると同時にか弱い生き物として認識している。
趣味は日記をつけること。日記帳やデジタルデバイスを持っているわけでは無く、頭の中に文面を正確に、永遠に記憶する。
・荼枳尼天(ダキニ)
性別:女 外見年齢:15歳 身長:148㎝
特殊能力:人間を守護する。対象が死に近いほど力は強まる。
ある都市に配備されていたモンストルム。ナギニの相棒。相棒であるナギニの心の支えの一つであると同時に、ナギニはダキニにとって最も重要な存在なので、ナギちゃんのやりたいことにダキニがついて行く流れが多い。
〈アウトロウ・レプタイルス〉
誕生秘話
大昔、何かにアウトプットするという発想も無かった時代、ナニガシさんが脳内に設定だけ考えていたキャラクターが、今回の企画にめちゃくちゃ合致していたので使ってあげようと思いまして。
Q,サラマンダーってレプタイル(爬虫類)じゃなくね?
A,細けえ事ァ良いんだよ。
Q,ラムちゃん不死身すぎない?
A,ちゃんと死ぬよ。外的要因で殺すのはちょっと難しいけど、魂や生命を直接抜き出せば死ぬんじゃない? 不死身なのは肉体だけだし。
Q,ククルカン(ケツァルコアトル)って神様じゃ……。
A,外見は翼のあるヘビさんだしセーフセーフ。
〈水底に眠る悪夢〉
誕生秘話
カナロアって神様がいるんですよ。ハワイの神様で、魔術が得意で、外見はタコさんなの。「タコ」「魔術」「神様」何かを思い出す特徴ですね。
そう、偉大なるクトゥルフですね。神様が条件的にセーフかは分からなかったんですが、クトゥルフはどうも、一神話生物がアホほど高齢になった結果神格扱いされるレベルになった個体という説があるらしいのです。じゃあカナロアもセーフやろ()ってことで。
そんな感じでできたお話です。
Q,何故カナロアが“ロード”?
A,龍王。ググれ。
Q,何故クトゥルーが“リトル”?
A,ク・リトル・リトル。
「CHILDish Monstrum:CRALADOLE」のおまけ…というか設定集です。
・ゲーリュオーン GERYON
身長:165cm
特殊能力:分身(本編未登場)
使用武器:槍
一人称:自分
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
クララドル市のインバーダ対策課のモンストルム部隊の隊長を務めている。
冷静で自らに与えられた仕事を淡々とこなすタイプ。
しかし怪物態になると苛烈な戦い方をする。
チームメイトとあまり深く関わらないようにしているが、これはかつての仲間を戦闘で失ったことによるもの。
自分以外の仲間のモンストルムが全滅した戦闘でショックのあまり暴走、街を破壊して回ったという過去を持ち、今でもそれがトラウマになっている。
長い茶髪を高い位置で結わいており、黄土色のパーカーを着ている。
怪物態は三つ首で有翼の巨人。
・ワイバーン WYVERN
身長:155cm
特殊能力:飛行
使用武器:拳銃(本編未登場)
一人称:あたい
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
明るくてテンションが高く、食べることが好き。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
短髪で(本編で書き忘れたが)赤いパーカーを着ている。
怪物態は赤い前脚のない赤い飛竜。
・イフリート Ifrit
身長:158cm
特殊能力:火炎放射
使用武器:長剣
一人称:おいら
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
お調子者で気が強め、あれこれ縛られるのが嫌い。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
金髪でオレンジ色のパーカーを着ている。
怪物態は燃える髪と瞳を持つ巨人。
長いので「おまけ 2」につづく。
他の子たちのラテン文字表記が大文字なのに、イフリートだけ小文字混じりにしちゃった。
ま、いっか。
「CHILDish Monstrum:CRALADOLE」のおまけ…というか設定集、その2です。
・デルピュネー DELPYNE
身長:162cm
特殊能力:バリアの展開
使用武器:盾(本編未登場)
一人称:私
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
心優しく世話焼き、ビーシーと仲良し。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
長髪で青緑色のパーカーを着ている。
怪物態は(本編未登場だが)下半身がヘビになった女巨人。
・ビーシー BIXI(贔屓)
身長:150cm
特殊能力:怪力
使用武器:ハンマー(本編未登場)
一人称:ビィ
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
気弱だが仲間思い、デルピュネーと仲良し。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
二つ結びで茶色のパーカーを着ている。
怪物態は巨大な亀。
あだ名は“ビィ”。
・羽岡 Haoka
身長:175cm
一人称:わたし
とある都市“クララドル”のインバーダ対策課の職員。
クララドル市に配備されているインバーダたちの世話や外出時の監視などが担当業務。
真面目で業務や上からの指示に忠実。
個性豊かなクララドル市のモンストルムたちに手を焼いている。
〈人造神話隊〉
『水底に眠る悪夢』を思いついた後に、「あ、クトゥルフの神話生物使いてえなー」って思って、最推しであるビヤーキーとその他適当にモブ生物使って適当に書いたやつ。
〈カミグライ・レジスタンス〉
人間のために生み出されたからと言って、別に自分の為だけに生きたって『僕は』何も文句無いよ?
自我と心があるんだから、矛盾にも見える何かがあるのも自然なことだし。
ところで話は変わるけど、「強さ」とは何ぞや。答えとなる要素は1つじゃないと思うんですが、バトル物じゃ常々デカい奴は噛ませにされがちですよね。悲しい。
Q,「グレイプニル」と「スレイプニル」って似てない?
A,そうだね。
Q,↑フェンリルがスレイプニルと一緒にいるの、何か示唆的じゃない?
A,スレイプニルはフェンリルに手綱握らせてる側なんだけどねぇ。でもフェンリル、責任が発生するとその分は全うしてくれるタイプだと思うね。
元ネタ的にはフェンリルは確かスレイプニルの主であるオーディンを食べてるから、なんかこの2人が一緒にいるのには意味があるのかな〜と思ってた。
皮肉めいたものも感じたし。
「すみません、今年度から新しく、インバーダ対策課から派遣されてきた見沼というものですが……」
「あら、お役人さん」
「あのモンストルム……キュクロプス。随分と皆さんと親しいようですね」
「当然よ。あの子、クロちゃんは10年以上前からこの島の守り神なんだから。あの子のお陰で、私たちはあの化け物……インバーダ? から、身を守ることができるんだから」
相槌を打っていて、ふと違和感を覚えた。
「……『身を守る』? 『守ってもらう』、ではなくですか」
「あら、前のお爺さんから聞いてないの?」
「えっと……前任の浦和さんからは、『能力が能力だから、モンストルムは一人で十分なのだ』とだけ」
それを聞くと、島民は朗らかに笑った。
「それなら、あの子に実際に聞いてみなさいな。きっと身を以て分かるから」
「は、はあ」
キュクロプスの方に目をやると、島民との会話を終わらせたようで、またどこかに歩き出した。まるで私のことを完全に無視しているみたいだ。
「CHILDish Monstrum:CRALADOLE」のおまけ…というか解説編です。
〈このエピソードを書いた経緯〉
企画主催者として、自分が作った企画で皆の手本になるよう作品を作らなければいけないということで、元々この企画の物語を自分の中であれやこれやと動かしていた時に使っていたキャラクター・舞台を使って物語を作ることにしました。
本当は自分が作ったキャラクターは色々いるのだけど、今回は主役っぽさのある「クララドル市」のモンストルムたちを中心に話を作りました。
今回執筆するにあたって「メインキャラ全員に見せ場を作る」ことを目標に書いていました。
残念ながら全員に平等に見せ場を作るのは難しく、デルピュネーだけ怪物態を出せなかったりしたのは心残りです。
また、主役はゲーリュオーンのつもりなのに気付いたらイフリートが主役みたいなことになってしまいましたね(笑)
ちゃんと完結できるかどうか怪しくなったりもしたけど、無事に書き切って投稿し終えてよかったなと思います。
キュクロプスは迷いない足取りで村落の中を突き進み、一軒の民家に扉をノックすることも無く入っていった。
キュクロプスの後を追ったものか、しかし不法侵入するわけにもいかないと逡巡していると、数分ほどしてまたキュクロプスが出てきた。
「あ、キュク……」
キュクロプスは、まるで私のことが見えていないかのように横を素通りして、またどこかへ歩き出した。
目的地はまた別の民家のようだった。そこからも数分ほどして出てくる。そしてまた別の民家へ。
それを何軒か繰り返し、また島民と交流して、作業場のある丘陵に引き返していった。
帰りは、行きで通ったのとは反対の斜面を登る。そちら側は、一面に何かの果樹が植えられていた。
住居に帰ってから、キュクロプスはまず小屋の方に入っていった。一瞬迷ったものの、後を追って中に入る。
扉を閉じて振り返ると、目の前にキュクロプスが立っていた。手には紐状の道具を持っている。
「おじさん、動かないで」
「は、はい」
いやに重い声色に、身体が強張る。
キュクロプスが持っていたのは、巻き尺だった。それを私の身体の至る所に当て、どうやら私の身体の採寸をしているらしい。
「…………ん」
終わったようで、キュクロプスは一度私から離れ、テーブルの上のメモ帳に何かを書き始めた。
時々考えるように虚空に目を泳がせながら、キュクロプスは2分ほどかけてメモを完成させたようだった。
「これくーださい」
メモ帳のページを破り、こちらに差し出してくる。ページを受け取り、内容を確かめる。
『牛革3頭分、鋼鉄400㎏、合成ゴムロール10m、プラスチック75㎏、和紙1m四方、アルミニウム10㎏、銅線200m、インバーダの硬質な外皮または甲殻用意できるだけ、インバーダの羽毛用意できるだけ、インバーダの爪または牙用意できるだけ、米5㎏、鶏胸肉300g程度、キャベツ1玉、醤油1L、食器用洗剤1本、歯ブラシ2本、ペット用ウサギ1羽』
後ろの方は食品や日用品だ。1人でこんな場所に暮らしているわけだから、生活支援に必要なのは分かる。しかし、前半の大量の素材の要求は、キュクロプス1人の需要にしてはあまりに多すぎる。まるで工場か業者の発注ではないか。
1度、自分の手帳を確認する。
・キュクロプスが欲しがった物は可能な限り提供すること
・特に工業素材やインバーダの遺骸は絶対に入手すること
・ペットの要求は断ること(長期間作業にかかりきりになることが多いキュクロプスには面倒を見られない)
「……ウサギ以外は次来た時に」
「ざんねん」
どうも、テトモンよ永遠に!です。
昨日をもちまして、企画「CHILDish Monstrum」は無事に終了いたしました。
今回も案の定参加者が少なかったのですが、最終盤に滑り込み参加する方が出てきたりしたので根気良く待つのが1番かなと思いました。
という訳で、毎度恒例の企画の裏話をば。
今回の企画は、去年のニコニコ超会議開催中にニコニコ生放送で一挙放送されていたアニメ「ダーリンインザフランキス」というアニメを観ていた時に思いついたものです。
件のアニメの後半でとあるキャラクターが「僕たちは君たち人間と違って優れた存在だから」みたいなことを言っていて、この場面を観た瞬間に「人間が作った、人間より優れた人外たちが人間を守るために戦う話」を思いつき、この企画の原型である物語ができました。
しかし、最初はこの物語を自分の中で色々展開させていましたのですが、その内忙しくなったり他の空想に走ったりして気付いたら放置するようになってしまいました。
それから時間が流れて去年の12月上旬、ふと学校帰りに「あの話を企画として昇華しちゃえばいいんじゃね?」となり、他に思いついた企画と共に企画アンケートをここに投稿、この企画に1番票が入ったので年明け早々に始めて今に至ります。
アンケートで4票も入ってたので4人くらいは参加者が出てくれるんじゃないかと踏んでいましたが、そうはいかなかったので企画って相変わらず難しいな〜と思いました。
でも某ナニガシさんがめっちゃ楽しんでたみたいなのでよかったです!
本当にありがとう!
長々と書いてしまいましたが、今回はこの辺で。
次は企画アンケートで2番目に票が入った企画「Daemonium Bellum RE」を3月に開催します!
今度は天使と悪魔が大暴れする企画なので、皆さん楽しみにしててくださいね〜
遅刻投稿も待ってます!
では、テトモンよ永遠に!でした〜
「じゃね、おじさん。もう帰っていいよ。私はおじさんの魔剣作るから」
魔剣? 作る? キュクロプスの能力に関係することなのだろうか。これから関わっていく以上、知っておいた方が良いだろう。この機に尋ねることにする。
「魔剣? 君の能力か?」
「ん。私の能力、『魔剣の鍛造』。島のみんなも全員持ってるよ。おじいちゃんにもあげたの。たくさん」
「悪いけど、私は剣なんか使った事……」
「別に、剣になるとは限らないよ」
「『魔剣』なのに、かい?」
「ん」
微妙に話が飲み込めない。首を傾げていると、キュクロプスが話を続けた。
「『魔剣』っていうのは、別に剣だけじゃない。武器でも何でも無いこともある。分かりやすく言うなら、『魔法のアイテム』みたいなもの。その辺のモンストルムの特殊能力にも負けない不思議な力を持った道具類。その人専用の最高の相棒。それを私は『魔剣』って呼んでる」
説明しながら、キュクロプスは『作業場』に続いている方の扉に向かっていた。
「次、いつ来るの? 私、3日は作業場から出てこないよ」
「あ、ああ……それじゃあ、3日後の12時頃、また来よう」
「ん。じゃね、おじさん」
最後にこちらに手を振って、キュクロプスは作業場への二重扉をくぐり、あちらへ籠ってしまった。
投稿お疲れ様でした。
個人的にこの企画の1番の功労者はナニガシさんだと思います。
だっていっぱい作品を書いてもらっちゃったし。
どれもナニガシさんらしい面白い作品ばかりでした。
3月には次の企画を開催する予定なので楽しみにしておいてください。
では。
うわぁぁぁぁぁ‼︎
企画へのご参加ありがとうございます‼︎
この状況下じゃもう参加者は出ないかと思ってたのでビックリです!
「ブリンバンバンボン」は調べた所「Bling-Bang-Bang-Born」という曲のようですね…
早速聴きましたが、自分の理解力が足りないせいかこの作品にどう影響しているのかよく分からなかった…(^^;
まぁそんなことは置いといて、本当に企画参加ありがとうございます。
まだ開催期間は5日ほどありますので、よかったら楽しんでいってください!