夜勤明け、家にはまっすぐ帰らずに、いつものコース。24時間スーパーでビールを買い、公園のベンチ。深く息を吸い込む。何年も変わらぬ毎日。新鮮なのは外の空気だけだな。と、アレクサンドルはつぶやいてビールを開ける。
いまのような空気ができたのは、よくは知らないけど億単位のレベルの昔だ。そんな前からある空気のどこが新鮮なのだろう。
目の奥が痛む。仕事中は、今日はまっすぐ帰り、すぐに寝ようと思うのだが。
妻は子どもができてからすっかり変わってしまった。子どもができる前までは聡明だったのに。いまはなにを言っても通じない。話の内容ではなく、表情や態度にばかり注意を向けるようになった。ちょっとしたことで感情的になり、ぐちと文句ばかり。要するに、すっかりばかになっちまったってことだ。
結局、生きるというのは、理屈ではないのだろう。
子どもができるまでは、ああしようこうしようというビジョンがあった。いまは子どもに振り回されっぱなしだ。結局、生きるというのは、理屈ではないんだ。
相性ばつぐんだって占い師に言われてそれがきっかけで親密になった。どこがばつぐんなんだよ。
相性ばつぐんだって占い師に言われてそれがきっかけで結婚したのに。
そろそろ帰るか。妻が朝食、俺にとっての夕食を用意して、不機嫌な顔で待っている。
そろそろ帰ろう。子どもが起きてしまったかもしれないし。わたしがいなかったら主人が動揺する。
こんな感じで、アレクサンドルとアレクサンドルの妻は公園をあとにする。入れ違いで、アンドレイとアンドレイの妻がべつべつにやってくるのだが、わざわざ描写するまでもないだろう。
「もしもし、」と夕ご飯のとき電話に出たのはママで、どうやら相手は清水のおばちゃんらしい。話が盛り上がっているのを良いことに、僕は小さくごちそうさま、と言って席を立つ。食器を片付けるフリをして、アスパラガスを生ゴミと一緒の袋に詰めてしまう。ばれませんように、と願いつつ、背すじがぞわぞわしてるのをごまかすために、ごちそうさまー、と大きな声で。
はーいとママの返事が聞こえた。
僕が妖精たちに会ったのは、そんな日の次の日で。楽しみにしていた給食の揚げパンが、妖精になっていた。いや、揚げパンだけじゃなくて、おわんやお皿に1匹ずつ、アルミのおぼんにのっているもの全部。そして僕の方を見て口々にこんなこと言うんだ、「きみ昨日アスパラガスを捨てたね。」
「捨ててない」「いや捨てただろう、ボクたちは見ていたよ」「なんでよ、てか誰なの」「ボクたちは妖精、ところできみ、今日の給食は楽しみにしていた揚げパンだよね」「僕のはそれが妖精になってるんだけど、」むすっとしている僕をよそに、妖精たちは ははは、と甲高い声で笑い出す。「きみの分はボクがもらったよ。返して欲しけりゃもう食べものを捨てたりしないって約束するんだね」ふよよ、と僕の鼻先に浮かんだ揚げパンの妖精は、意地悪なことに揚げパンの匂いがうんとして。
「そんなのムリだって!」
「ねえサトシくんさっきから誰としゃべってるの」聞いてきたのは隣の席のアユミちゃんで、
あ。その手には揚げパン。
「アユミちゃんごめん、それ一口ちょうだい」「え」ぱくりと口の中に楽しみにしていた揚げパンが拡がって、キャーーッと妖精たちの黄色い悲鳴が教室に響いた。
だからと言って嫌いなものは嫌いだ。僕は相変わらずアスパラガスは残すし、妖精たちはキャイキャイ騒いで現れる。あと変わったことといえば、僕がアユミちゃんを、アユミと呼ぶようになったこと、だろうか。
作って頂いてありがとうございます、さんくすです
なかなか意味深な終わり方をしましたね。
僕がそんなことをしたら絶対に二度と口をきいて貰えないでしょう笑
そんな事はどうでも良くて、なかなか平和な話でしたね。僕がこのタイトルを考えた時の妖精たちの反乱は尋常ではないものでした、拷問でした笑
本当にありがとうございました♪
スマホのバイブがポケットの中で揺らいだ。バイブのはずがどこからか、オーケストラの演奏が聞こえてきた。「天国と地獄」いいセンスなんて、自嘲しながら母の小言の電話に出た。
電車の中で、またスマホが震えた。「ラデツキー行進曲」先輩から運動会の練習のお知らせ。チア始めたけどできるかしら。
家の机の上。スマホは静かに、ゆっくり点滅した。胸の中であの曲が流れた。表示なんて見なくてもすぐにわかった。
「もしもし」
私のオーケストラは、着メロだけのオーケストラ
気分にぴったりな演奏を届けるオーケストラ
君のオーケストラは、何を演奏しているの?
作って頂いてありがとうございます、さんくすです
読んでてすごく心温まりました。
このタイトルを思いついた時携帯電話を擬人化して団結して人間を何とかする話を思い浮かべてたその時の俺を殴り倒したいです笑
いやぁいいもの見せて貰いました。
本当にありがとうございました♪
私なりの解釈のうえの物でして(笑)ほっこりしてもらえたなら、幸いです!見てくださりありがとうございます。
「俺ぁよ、アイツに会ったときに死を覚悟したんだ。」
愛知県某所在住のトイプードルさんは、噛みしめるようにゆっくりと語り始めた。
「最初に目に入ってきたのは、黄色い毛並みに赤い真ん丸ほっぺさ。赤いとこがバチバチ音をたてて放電してやがった。戦闘準備万端って訳だ。こっちはボール追っ掛けながら公園走り回った後でぐったりしてんのによ。洒落にもならねえ。」
ふわふわの茶色い毛に覆われた小耳を上下させながら、トイプードルさんは小柄な身を小刻みに震わせる。
「勝敗は最初から決まってたんだ。そこへさらにあの声が聞こえた訳よ。『ポ○モン、ゲットだぜ‼』甲高い声だ。ヤツの背後から聞こえてきやがった。こいつが聞こえちゃ、もうどうにもならねえ。俺のこの愛くるしい尻尾も、一気に臨戦体制に入る。」
彼は、その愛くるしい目を閉じて、真ん丸の尻尾をピンとさせた。
「だがそのときだ、愛しのご主人が投げた緑色のボールが、俺とヤツの間を横切ったんだ。俺ぁ思わずそのボールを目で追っちまった。その隙にヤツは、俺の全身に電気ショックを食らわせやがった。俺ぁ毛並みが良いからよ、電気の通りも良い訳だ。身体中がちぎれるように痛んだ。あまりの痛みに俺ぁ、そのまま気を失っちまった。」
再び開かれたその愛くるしい目には、微かに涙が浮かんでいた。
「気がついたときには、近所の今西動物病院のベットの上だった。完敗さ。俺ぁアイツに手も足も出なかった。可愛さでは負けてねえつもりだが、まだまだ修行が足りねえな。ま、ご主人と一緒に一からまたやり直しだ。」
トイプードルさんは深いため息を吐き出すと、どこか晴れ晴れとした顔で部屋から出ていってしまった。
すごい!keyさんが番外編を作ってくれたのかな、と思ったら〒サトツさんでした!ヽ(・∀・)ノ
そして唐突ですが、〒サトツ兄さんって呼ばせていただいて良いでしょうか!
作って頂いてありがとうございます、さんくすです
はじめ読んだ時腹がよじれるかと思いました。(読んだのが放課後の教室で助かったという裏話付きです)
衝撃の展開にすごく早いテンポに程よい二次創作感がうまい具合にミックスされてすごく読んでて楽し
いです。
ガ〇ダム来ると思ったらポケ〇ンだった衝撃はしばらく忘れないと思います笑
本当にありがとうございました♪
カチョフのしゃちほこさん 読んでくれてありがとうございます。また近い内に幽霊部員になるかもですが、付き合ってやってください。〒はいらなくてサトツで良いですよ!
Key-tower さん ありがとうございます。もはや思い付きの産物そのままなので、笑ってくれるのが一番嬉しいです。ガ○ダムも確かに電流流せるよな...!電流と聞いたらピ○チュウしか思い付かなかったので勘弁。
『ノスタルジイ』
ぽたり......ぽたり......。
次の瞬間、ガラシャの顔にはガラシャが干からびてしまうのではないくらいのの涙が流れていた。
「ねぇ、ユリ。」
ガラシャは流れる涙以外は無表情で呟いた。
「ねぇ、これが正解だったのかしら。
全ての記憶を取り戻して、果たして幸せなのかしら。もしかしたら私酷い間違いを犯してしまったのかもしれないわ。いや、きっとそう。」
ユリはゆっくりと言った。
「そんなことまだわからないさ、それはこれからの君次第だよ。ただひとつ言えることは、君はこの図書館の外の国のお姫様で君はここに連れ去られてきたってことさ。」
ガラシャはまだ流れる涙を拭いて言った。
「一気に思い出してしまったの、怖いことを。
私、どうしたら良いんだろう。
でも一つだけわかるわ。私、あそこには帰りたくない。帰ってもどういう顔をすればいいかわからないよ。」
ユリはまたゆっくりと、今度は言い聞かせる様に、
「ガラシャ、今決めなくてもいいんだよ。ゆっくりとゆっくり決めればいいから。
今日は疲れたでしょう。一旦寝なさい。心を落ち着ければ見える景色も変わるよ。」と言った。
ガラシャが寝てしまった後、ユリはアパルトマンの外へ出て柄でもなくののしった。
「鵺ェェェッ!!貴様聞いているかァァァァッ!!
貴様だけは、貴様だけは絶対に許さんぞォォッ!!
この虚構を壊してもなッ!!」
その声は、無機質の空に虚しく響くだけである。
To be continued #39 第4章最終話↙
『虚構の崩壊、ロマンチック逃避行』
P.S.あとがきだけでもほっこりとしていって。
暇な時になんとなく意味わかんないタイトルを思いつきます。
だいたい使えませんけど。少しここで吐き出しておきます。良ければ使って頂いても結構です。
・その時、トイプードルに電流走る!!(物理)
・樹海ロスト
・着メロしかないオーケストラ
・ベラルーシのおとなたち
・妖精たちの反乱(飯テロ)
他にももっとあるんですけどこの使えそうなお(か)しいものたちを供養しときます。
これを文章化してくれる人が出てくる事を祈って笑
着メロしかないオーケストラを借りようとしたら、着メロだけのオーケストラになりました…。申し訳ありません…。イメージは、着メロしかないオーケストラです!
いえいえ、こちらこそ作っててとても楽しかったです!(^○^)そしてぜひ拷問の方の反乱も見てみたいです^ ^
ファヴァー図書館の最終話、楽しみにしてます!(^○^)✨
ガサ......ガサガサ......。
「なぁ......この本は何だ?」
ある男は樹海の中で不思議な本を見つけた。
『幻想詩』に『白蓮記』、ありとあらゆる本がそこにあった。
「何だ?と言われても俺はそこじゃなくて電話の前にいるからなぁ......何とも言えないぜ。」
そこはある地方の深い森。
こんなところに本などあるだろうか。
普通なら無い、だが実際に目の前にはある。
男はこの時、世の中はやはり捨てたものじゃないと思った。
男は何故この森にいたのか、理由は定かではない。
どうせろくな事ではないが。
「色々と考えたけどこの本は持っていく事にするよ。また会おう。」
「おう、また。」
この後、男の姿を見た者はいない。
P.S.まさかの公式番外でございます。
これで全て文章化されましたね。
改めて書いて下さった方に食べられない感謝を。
樹海ロスト、これならなにか書けるかなァ…なんて甘く考えていたけれど、なんにも思い浮かばないまま週が明けました(笑)
また欠片も放ってくれたらいろいろ考えてみたいと思います。
なかなか書けないんだけどね…
レスありです。
書こうとして下さっていたんですね。ありがとうございます。
また今度気が向いたら(ボツがたまったら)やろうかなと思うのでやる時にはよろしくお願いします♪
作って頂いてありがとうございます、さんくすです
このお話を読んで理解するまで時間がかかりました。すごいですね、理解した時おにょいっ!?ってなりました。
とても深くて深くて、あったかいんだか冷たいんだか不思議な関係で......言葉で言い表すのがすごい難しい、そういう風に感じました。(語彙力が無くてごめんなさい)
いやぁ...こんな創りにくいタイトルでよく作ってくれました、本当にすごいです。
本当にありがとうございました♪