失ったものはあまりにも大きかった。
母、伯父、家、そして妹。
結局薊には、真実を伝えられず終いだった。母の犯した罪、人間だという父、そして"力"の事。"力"を使いこなせるようになればなるほど、人間はまた気味悪がるのだろう。
しかし、その中でも光は在るもので。
「殺されるかと思ったぞ、朔。」
「其れ、此方の台詞だから。」
早朝も早朝、まだ陽は東の地平線から顔を出したばかりだ。
黒髪に澄んだ黒真珠の眼。旧友の蒼。
「元気にしてたか?」
静かに問う。その言葉に、朔は応える。
「元気…蒼は?」
「表面上は、だな。」
妙な答え方をする。その意を目で問うと、蒼は嘲笑った。
「あれからみんな疑心暗鬼。馬鹿だと思う。そして醜い。
己で疑い始めたものを…。」
今まで平和だった村が覚えた"疑う"と云う術。それと引き換えに"信じる"と云う術を失った。
何かを得るには、何かを失うのがこの世の摂理。しかしそれが、負の循環となってしまった。
朔が黙っていると、蒼は再び口を開く。
「朔と叔父殿は?」
朔は無理に微笑んで言う。
「おじさんはそこだ。」
指差す先は、未だ燻る炎。
蒼は察したように眼を伏せ、もう一人を待つ。
「薊はーーつい昨夜、家を出た。」
「何…?」
口にするのが辛かった。
「母上とおじさんを殺した人間を赦さないって。…消してやるって言っていた。」
蒼は悔しそうに唇を噛んだ。
「俺がもう一晩早く来ていたらーー」
朔は哀しげに微笑んで言う。
「そんな話はよしてよ、蒼。」
ーーもしもの話なんて、誰にも分からないのだから。
「それに、僕は、薊を止めると誓った。」
その決意は固いもので。
蒼はその眼を見て直ぐに悟った。
そして、言う。
「薊は俺の妹でもある。
…力を貸す。その為に来たんだ。」
朔は、情けなく微笑った。旧友が、あまりにも心強くて。
「よろしく。」
改めて固く握りあったその手は、何かを突き動かしたようだった。
あら、もう始動していたのですね。
序章は結構衝撃的な路線へ突き進んでいたので本章がどうなるか楽しみです。
頑張って下さいね。
レスありがとうございます。
はい、いつの間にか始動しておりました(笑)
楽しみにしていただけること、とても光栄です。本章も頑張ります‼
引き続きよろしくお願いいたします!
「母上、眠い…。」
「あら、眠ってしまってもいいのよ?」
眼を擦る我が子の髪を撫でる。
「でも、お話気になる…。」
「明日また聞かせてあげるわ。」
それでも納得できなそうである。
「寝るまで聞かせて、母上。」
私は微笑んだ。
「ええ、勿論よ。」
追伸:
今回も此方へお邪魔して。
2週間離れていた私ですが、その間にポエム掲示板初めましての方々、この話何だと云った感じなこととお察しします。この話は序章から始まっています。序章は全てまとめました。是非読んでみてください。
そして、忘れかけている初期設定。鬼ノ業は、お話の中のお話だったのです。
「薊を止めるとは言うが…具体的な検討はついているのか?今後の行動について。」
朔と蒼は、森のなかを歩く。蒼は刀、朔は矛を持っている。
「僕は、今きっと薊を止められない。薊ほどの、若しくはそれ以上の決意を持っていないから。だからあの時、止めなかった。いや、止められなかった。
でも、人間を無差別に殺していいだなんては思っていない。…ただ、其れを説明出来ない。それが何か理解出来たとき、僕は薊を止められる。…何故だか確証出来る。」
「つまりは、その理由を探すと。
…どうするんだ?」
人間である蒼にとって人間を殺さない何てのは、常識というよりも当たり前のこの世の摂理だから、理解できない節があるはずだ。しかし、敢えて其処を問い詰めるような真似はしない。それは、朔が鬼だと、人間ではないと理解しているから。考えなんて、違っていて当たり前だから。朔はちょっと考えるようにしてから、はっきりと告げる。「人間と関わりたい。」
あまりにも真っ直ぐな言葉だった。
追伸≫
またやってしまいました。載ってないと思って二回書き込んでしまうという。すみません(笑)
それに加え、改行も忘れていますね。
なんなんだか…(・・;)引き続きよろしくお願いします(^^;;
蒼は呆気にとられる。そして、笑みを溢した。
「いいと思う。朔は朔だ。変わってなんかいない。」
その言葉に朔は少々睨む。
「おいおい…肯定しているんだって。」
「違うくて。――そう思っていたのか?」
「そう…?」
にらみ続ける朔に、ようやく意味をとった蒼は笑った。一頻り笑って微笑む。
「正直なところ――多少は、な。
13年も会っていなかったんだから。」
思う気持ちをそのまま伝える蒼に、朔だって同じ気持ちを抱いた。
「お互い様だろ?」
蒼の笑顔に、いつも救われる朔だった。
追伸:
二行目にある、「変わってなんか」についてです。「変わってない」では駄目なんです。
蒼は、朔に13年会っていませんでしたね。この年月は、人が変わるに十分すぎる時間があります。蒼は不安でした。朔が変わっているのでは、と。だから、「変わってなんか」いないんです。
蒼の不安が拭われた瞬間なんですね。
16歳のピーターパンさん、レスありがとうございます!
まとめ。勝手にやって、すみませんでした。でも、喜んでもらえたことは、嬉しいです!
今の作品も好きです!これからも応援してます!頑張ってください!
Baseball-daichiさん≫
まとめの件、まったくもってそんなことないです。むしろとてもありがたいことだな、と。
応援していただけていること、とても光栄です。これからも頑張ります。烏滸がましいと思いますが、よろしくお願いします(笑)
なんとなく歩いている途中、朔が尋ねる。
「どうして僕の居場所が分かった?」
蒼は、なんだ急に、とでも言いたいような顔をする。
「あそこには、今まで誰も来たことがなかったんだ。だのに、蒼だけが来れるだなんて――。」
「朔、家からでていないのか?」
驚く蒼は続ける。
「朔と薊を捜している途中、沢山転がっていたぞ。
首の無い人間が。」
朔は顔をしかめて問う。
「どう云うことだ…?」
「だから、人間は訪れてはいたんだ。だが阻まれた。――今だから繋がった。朔も分かっただろ。」
薊の持ち出した大鎌にこびりついていた血。頭から離れない。薊は、普通なかんかじゃなかった。平静を装ってすらいなかったのだ。
薊は、鬼だった。
「薊っ…!」
呟く蒼の肩を叩く蒼。指差す先には――。
「またか。」
近づき手を合わせる。そして蒼は、遺体が身に付けているものを手に取ってみる。手懸かりもないが、高い確率で犯行に及んだのは薊だろう。もう一度手を合わせ、その場を去ろうとした瞬間だった。
レスありがとうございました!雪国ならではのエピソードを語らせていただきました(笑)ピーターパンさんのこの小説読ませて頂いてます!面白いので次が楽しみです(♡˙˘˙♡)
レスありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。この話からは季節感がまるで感じられないので、雪を出してみるのもいいかななんて、星乃歌さんのポエムを見て思ってしまいました。もしかしたら参考にさせていただくかもしれません。その時はよろしくお願いします(笑)
追伸≫
下から七行目。もう見つけてしまった人もいるかもしれませんが、とてもおかしな文章になっています。正しくは、「呟く朔の肩を叩く蒼。」です(・・;)失礼致しました。
血のついた大鎌は、序章の参拾か、最終話で出てきたものですね。
序章から全部一気に読んでしまいました〜( ´ ▽ ` )ノ
凄いですね〜とっても面白いです(^^)
頑張って書き続けていってほしいと願ってます
熊の置物さん≫
レスありがとうございます。そして、すべて読んでくださったのですね!とても嬉しいです。
書き続けます。最後までお付き合いくださいね。
「お、お兄ちゃん達、いい人…?」
怯えた様子の男の子が木の陰から顔を出す。其れにしても、いい人かどうかを問うとは。
「こんにちは。良い人かどうかは計りかねるけれど、悪い人にならないように生きてきたよ。」
すると男の子は、一瞬にして眼を涙で溜め、助けを乞うてきた。
「助けて!お父ちゃんが殺されたの‼」
そこからは泣き止まず、その声は小さいのに悲鳴にしか聞こえなかった。
追伸≫
l4「こんにちは。~」
この言葉に疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか…。これ、まだ朝なんですよね、それも早朝。気付かなかったと云う言葉ほど救われるものは在りませんが(笑)、気付いてしまった方には不自然極まりないと思って。
しかし、この流れはこんにちはが一番自然だと思ったので。気付いてしまった方々、気付かなかった振りをしてください(^^;;
しばらく遺体から離れたところで、男の子が落ち着くのを待った。聞いてみれば、男の子の名前は凜(りん)と謂うらしい。近くの村の住民だそうだ。
「お父ちゃんが、珍しい鳥を見せてくれるって散歩に来たんだ。そしたら、その珍しい鳥は居なくて…帰ろっかって言ってる途中に、鳥が鳴いたんだ。なんだか急に不安になって鳥見てて…もう一回帰ろって僕が言ったら、もう…お父ちゃんの首が…無くて…‼そのまま崩れるみたいにして…っ!」
恐怖でしかない。
拙い言葉ながらながら、しっかりと伝わった。子供にはあまりに過酷である。
「凜、君の村にまずは戻ろう。話はそれからだ。」
朔の言葉に頷く。
蒼は何も言わず、見守っていた。
「道、覚えているかい?」
「うん…此方だよ。」
すると、その村まではすぐに着いた。しかし、やはりながら事はそう上手く運ぶものではなかった。
追伸≫
追伸もチェックください。なんて書いているわりには、ちょっとした解説か、それもないときは独り言しか書き込んでいない此所。
新しい登場人物として凜が出てきましたね。次回、凜について少し触れます。触れるといっても、容貌等ですがね。ちなみに、下から五行目の台詞はさっくんです。
「誰だい、あんた達は。」
訝しげな顔、不信な眼。自分に向けられたものと思うと、胸に、針で刺されたような、ちくりとした痛みが走った。
「あんた達、鬼じゃないだろうね!?」
声の大きさ、憤り、怒り、悲しみ、不安、恐れ――一つの台詞から読み取れる幾つもの感情に、敏感に反応したのは蒼だ。
「いえ、人間です。」
すると、明らかにほっとした様子で。…何があったのだろう。
そこで生まれた一つの疑惑。――この村も、鬼と人間の間に摩擦が生じたのだろうか。それも、鬼に優勢な形で。
人間と鬼は、外見による区別は特に無い。"力"が出るか出ないか、だ。ただそれが、あまりにも大きすぎる違いと云うだけで。
蒼は人間で、その言葉に嘘、偽りは無い。しかし、朔の正体が露見するのも、時間の問題かも知れない。朔が鬼だと云う事実を、蒼一人しか知らないのが幸いである。
追伸≫
いつだかの私がプレイバックしましたね。台詞が三つ…。はい(笑)
話題は変わって、"鬼"についてです。鬼とは、角のはえた妖怪のイメージが強いかと思いますが、それとは違うのです。日本人とアメリカ人のようなもので、本質は同じなんですよ。喩えが意味不明ですね。質問があったら受け受けます。
「凜のこと、送りに来てくれたのかい?悪いねえ、わざわざ。
うちへ入っていきな。」
どうやら、この女性は凜の母親のようだった。ということは、殺されたのはこの人の旦那さんであると云うことで。
「お邪魔します。」
初めは身構えたが、座るなりお茶をたててくれた凜の母親は、思っていた以上に気さくな人だった。だからこそ、なかなか話を切り出せない。
「そういや凜。父ちゃんはどこいった?一緒だったんじゃなかったのかい?」
空気が凍った。霜が降りる程に。切り出せないではいたが、そちら側から振られると動揺を隠せない。流石に、その空気に違和感を感じたように眉を潜める。
一番に口を開いたのは朔だ。
「凜の母上殿一一。」
「信乃でいい。あたしの名前さね。」
「…それでは失礼して。信乃殿、貴女の夫殿は、亡くなられた。」
あまりにも単刀直入だった。信乃は、思考が停止しているように見えた。
「おい、朔…。」
蒼の諫める声が、肯定を意味してしまう。
「申し遅れました。私は朔というものです。
偶然、凜と出会い、凜のお父上、つまり貴女の夫殿が殺害されている状況に遭遇致した所存です。」
朔の自己紹介は意味がない。相手の耳には届いていないのだから。
「此方は蒼。私の旧友です。」
「なんなんだい…あんた達は!?適当なこと言ってんじゃないよ!」
「母ちゃん‼」
制止する凜。
「やめてよ、母ちゃん。お兄ちゃん達の言うことは本当なんだ…父ちゃん、死んじゃったんだよ!」
「凜まで何言ってんだい!?」
凜は目を赤くして叫ぶ。
「来て!」
母の手を引いて駆ける。凜の表情は真剣だ。
朔と蒼は一瞬視線を交わし、直ぐに追いかける。
信乃は声にならない悲鳴を発した。戦慄く手が痛ましい。
「あんた…ねえ、あんた…。」
恐れから怒りの声音になる。
「なんでだい…なんであんたがこんな目にあわないといけないのさ!?」
この事実を受け入れられない様子の信乃。悲しみの色は窺えない。その分を感じられる余裕がまだ無いのだ。
追伸>>
昨日あげわすれました。そしてどこで切ればいいものか迷ったあげく長くなり、読みにくいと云う点で申し訳ないです。
もう一話載せられたらと思います。
なにか気になることや質問があればレスを頂きたいです。たまに矛盾していたりすることがあるので…(^^;;
すすり泣く声と共に感じるのは怒り。
「…鬼の仕業だ…鬼のせいだ!」
信乃から冷静なんて言葉は失せていた。急に薊を思い出す。このままでは、負の連鎖が続くばかりである。
しかし、だからと云って朔が何かを言ってあげることはできない。自分の母やおじ、友人の命を奪ったのは人間だ。
するとここで声が掛かる。
「信乃さん…?」
後ろから姿を現した人物。村人、だろうか。
「見かけねぇ旅人が来たと思ったら、焦ったような顔して出ていって…何事だと思ったば…一一!?」
叫び声があがる。そして、人がわらわらと集まってきた。こうなっては手の回しようもない。村人にまかせるだけだ。
岡っ引きも来た。随分と遅いご到着である。そして偉そうにその場を仕切ってしまった。
思わず出た朔の溜め息に、蒼は苦笑する。その笑みが、朔の心を見透かしたようで恥ずかしかった。
しばらく其処にいると、岡っ引きが旅人二人に訊ねる。
「主らが第一発見人か?」
朔が答える。
「正確には、凜が第一発見人です。それも、現場に居合わせた。」
一人は頷き、二人に背を向ける。もう一人の岡っ引きは、朔を訝しげに見やり、背を向けた。あの目は一一
「蒼。」
「ん?どうした。」
朔は、その一人の岡っ引きから目を離さない。
「あの岡っ引き…鬼だ。」
追伸>>
巧く情景描写が挟めません…努力します。
そして、またもや長いという。まとめる努力も必要です。
私が書くと、どうしても時間経過が遅いんですね。どんどん進めていきたいと思っています。
「見ただけで分かるものか?」
「眼が違う。」
蒼は、勿論分からなかった。鬼と人間は、見た目による違いは無いに等しい。
しかし、蒼はそんな自分の勘よりも、旧友への信頼の方が厚かった。だから、朔の言っていることの方を信じた。
「そうか。…しかし、それがあることで何か問題は在るのか?」
この時代において、鬼と人間の共存は当たり前だった。だから、たとえ岡っ引きが人間だろうと鬼だろうと特に問題はない一一もっとも、共存出来ずに崩壊した村も少なからずあるのだが。
「今回裁くのは鬼。しかも、人間との仲は良いわけではなさそうだ。」
蒼は何となくわかった。朔の言わんとしていることが。
つまりは、公平に裁かれない危険性があるといいたいのだ。犯人が薊だとした場合、捕まえられる確率はほぼない。しかし、裁かれる相手がたとえいなくても、何らかの形にしないと、被害者も遺族も報われない。だが、そうなると裁く方が手間である。これが、内部の人間の、しかも人間の手による犯行ならば、鬼達はどれだけ楽なことか。
鬼という自分等の面子も潰れない。稀に、こう云った事が無きにしもあらず。この岡っ引きはどうだろうか。
「しかし一一此のままだと、僕達の方が危ないかもしれないな。」
「何故?」
朔は笑う。
「愚問だね。」
蒼は肩をすくめた。
追伸>>
朔の、「愚問だね」と云う言葉についての補足です。
※この下には私の解説が載っています。自分の捉 え方で読みたい方は、読まなくても大丈夫です。
この台詞の前に、此のままだと自分達が危ないと言っています。これは、外部から来た朔達に罪を被せることが容易に出来ると云うこと、つまりは、罪をきせられる恐れがあることの指摘です。それを分かっていながら、蒼は朔に危険だと言った理由を訊ねています。朔はあえて聞いている事に気が付き、愚問だね、と言ったのでした。
空は曇天。鈍色の雲が重たそうに山に被さる。その様子を見ていた凜は、子供ながら考えた。信乃を一一母を、独りにしてあげようと。
「お兄ちゃん、ぼく、村を案内してあげるよ。」
凜だって辛いはずなのに。泣きたいだろうに。
朔は、胸が締め付けられる想いだった。固く握られた小さな手からは、握っているはずなのに何かがこぼれ落ちそうな、そんな不安にかられる。
「…お願い。」
不意にこぼれたその声は、凜への返答なんかじゃなかった。
追伸>>
凜君、年齢不詳ですね。いや、不詳ではないのですが、年相応でないというか。
もっと子供を子供らしく描きたいです。遊ばせてあげないと、さっくんや蒼兄みたいなのが出来上がりますね。
追伸>>
凜君、年齢不詳ですね。いや、不詳ではないのですが、年相応でないというか。
もっと子供を子供らしく描きたいです。遊ばせてあげないと、さっくんや蒼兄みたいなのが出来上がりますね。
「なあ、凜?」
「なあに、蒼兄?」
凜がこう呼び始めたのはちょっと前。
『そういえば…お兄ちゃん達、お名前は?』
『僕が朔。此方が蒼だよ。名乗らないでいてごめん。』
『じゃあ、朔兄ちゃんと蒼兄ちゃんだね!』
先程とは違う感情が朔の胸を締め付ける。朔は、兄だった。今でも兄なのに、不意に忘れそうになる。そして、凜に応えてあげられない。
『いや、蒼兄でいい。』
凜は不思議そうに蒼の黎い(くろい)眼を見つめ、無邪気に笑った。
そして冒頭に戻る。
凛、いい子だなぁ…
このお話、不思議に小さくまとまっていて(もちろんいい意味で)、ほっこりして好きです。
あ、お節介かも知れないけど一つだけ。
「凛がこう呼び…」の行の前か後、それとも前後ともに一つ、改行を入れたら少し読みやすいかな、なんて思いました。
俺が改行好きなのを押し付けるようで悪いけど(笑)、時の隙間を感じさせるように。
シェアさん>>
感想、アドバイスを、どうもありがとうございます!
押し付けるだなんてそんな…とてもありがたいです。一人で黙々とやっているだけで、読んでいる人がどう感じているか、中々分からないもので。貴重なご意見として、是非参考にさせていただきます。
初めてそういったレスを頂いたので、なんだか嬉しい私でした。
「なあ、凜?」
「なあに、蒼兄?」
「俺達を何処に連れていってくれるんだ?」
「大おばばの処!」
朔と蒼は顔を見合わせた。
大おばばと云うことは――
「村の一番偉い人?」
朔が尋ねると、楽しそうに首を振る。
「ううん、一番偉いのは'そんちょうさん'だよ。」
朔は困ったように微笑む。
「どんな人?」
「んー…なんでも知っているんだよ!」
凜はとても楽しそうだ。つられて朔も笑みを溢す。その歪みに気付く由もない。
畑が見える。自分達で育てているのだろう 野菜とおぼしき集まりは、まだ芽を出したばかりのようだった。
「大おばばー‼大おばば、旅人さん!」
そうして呼ばれ出てきたのは、'大おばば'と呼ぶにはあまりにも若く、可憐と云うよりかは幾分か妖艶な女性だった。
追伸≫
区切る部分をもう少し考えた方が良かったかなと少々反省です。
'大おばば'という表現では想像しにくいかもしれないですが、大変美人で顔立ちの整った御姉様です。次回、'大おばば'さんについて、少し解説を含めた形で書いていきます。
言葉通り、朔と蒼は開いた口が塞がらない。
「わざわざこんな何もない処にどうもいらっしゃい。」
手を出してくる。握手と言うことだろうか。
状況をのみこめていない朔は、それでも握手を交わす。その時に一瞬見えた冷たい眼は、見間違いか、勘違いだったかもしれない。
この'大おばば'と呼ばれる女性の風貌を少し説明しよう。
身長は、女性にしては高い。この村を通った限り、一番女性の中で高いかもしれない。髪は結構長めで、毛先が巻いている。そして、陽に照らされたそれは綺麗な茶色を映し出している。何より――若い。おばばなんて年齢ではない。ましてや大の字がつくなんてもっての他だ。年は大体二十代も前半ではないか。朔や蒼よりも少し年上か――もしくは、同い年かもしれない。なんて考えてしまうほど若い。なぜ'大おばば'なんて呼ばれているのだろうか。
「アタシは'大おばば'だ。よろしく。
――凜、ちょっと席を外してはくれまいか。」
「えー…これからお兄ちゃん達を案内してあげようと思ってたのに…。」
'大おばば'は少し頭を下げるようにする。
「すまない。しかし、頼む。」
凜は微笑んだ。
「うん、大おばばがそこまで言うんなら…ただ、お話終わったらぼくんとこにきてよね。家の前で遊んでるから。」
追伸≫
'大おばば'の身長ですが、大体169cmくらいです。170ではなく、169です。
cmという単位はこの話に不向きな上、尺や寸という単位は今ほとんど使われずイメージしにくいため、ここで説明させていただきました。
凜の姿が小さくなり、米粒大となると、やっと'大おばば'は口を開いた。
「まず中へ入りな。」
口調こそ乱暴ではあるが、声音は柔らかい。二人は促されるままに木の一軒家へ入った。
座るなり茶をたて、慣れた手つきで出す。そしてこう言った。
「若い旅人たァ、珍しいねェ…。」
彼女は、一番最初にお茶に口をつけた。その様子を見た朔は尋ねる。
「申し訳ないのですが…僕達を残した理由を図りかねます。
教えては頂けないでしょうか。」
ふむ、と呟き微笑む。それは愉しそうな笑みでもあり。
「まずは自己紹介からいこうかねェ、
アタシはこの村じゃ'大おばば'と呼ばれているが――名を、藤と申す。」
それは、村人の誰にも明かしたことのない名だった。
「アンタ達は、朔と蒼って言ったかい?」
こちらの自己紹介はまだのはずである。すると藤は、
「風の便りだァね。」
あっけからんと言い放った。
朔は思い詰めたような表情をし、尋ねる。
「いくらか質問してもいいだろうか。
――まず、何故貴殿が'大おばば'と呼ばれているので?」
口元に笑みを浮かべた藤は答える。
「端的で非常に良い。答えようか。
しかし、その前に。アタシのことは藤でいい。」
朔が何とも言えない顔をしているのを見て、何だと呟きながら、
「何なら藤姐さんとでも呼べ。堅苦しいのは好まん。」
朔は困ったように微笑する。
「はい、藤姐。…続けてください。」
藤はにっこり笑った。
ポエム掲示板に来たのは初めてですが、このタイトルに惹かれて最初からイッキ読みしました‼️こういう和風な感じのお話が好きなので、ファンになってしまいました(((o(*゚▽゚*)o)))
私も時々ゆる〜いやつを載せているので、読んでいただけたら嬉しいです♪( ´▽`)
黒にゃんこ先生さん≫
ありがとうございます。そういって頂けると励みになります‼
続き、楽しみにしてもらえると嬉しいです。
「アタシが'大おばば'なんて呼ばれているのは、此処の村人達より、本の少し外の知識を持っているという事と、正体を隠し続けているからこそ出来ることなんだ。」
正体を…隠している、とは。
二人は藤の言葉を待つ。
「蒼の方は人間として。朔、アンタはただの人間じゃあないね?」
「…人間と、鬼の間に生まれました。鬼として育てられてきましたが。」
「…境遇が同じだな。」
初めて驚いたような顔をする。ということは――
「しかし。アタシは忌み子として育った。
アタシはこの村の出なんかじゃァない。…そこでは、鬼と人間の仲は最悪でねェ…まあそんな中でも、愛ってモンはとめらンないらしいのさ。その間に産まれたモンだから、こっちはたまったもんじゃない。どこいったって扱いは酷かった。――だから、殺したのさ。村一個潰れたねェ。」
展開がはやい。
事もなさげに言う藤に、聞きたいことは山のようにあるが。
「そこで初めて判った。アタシは鬼なんだってね。」
追伸≫
最近追伸を書かないという。お久しぶりです。
書かなかった理由は、特にこれといった解説しなければならないことが無かったからなんですね。
ちょっと補足すると、藤姐は今のモデルさんのような外見だということです。モデルさん、なんて表現はこの物語に合わないので、此処で説明致しました。…以前にも説明したような気がしてきました。もし二回目なら、「あ、疲れてるんだな」
と生暖かい目で見守って下さい。
そうして続ける。
「アンタ見たとこ、誰かを手にかけたことは無さそうだ。」
「…はい。」
「そのまま、誰も殺めるんじゃないよ。その手を汚しちゃァならない。こんなに悲しいことは無いんだから。」
伏せた目に、長いまつげが降りる。
差し込んだ光と風。そよ風というのに相応しいそれは、春をかもし出させる程暖かい割には、一瞬で空気を凍らせてしまうような冷たさをも持っていたように感じた。
追伸≫
私事ですが…小5の頃に書いていた物語が出てきまして。ちょっと読み返してみたのですが、恥ずかしすぎて心臓が異常な動きをしておりました。
なんだってあのような物が未だに残り、今さら出てきたのでしょうか。これも、今別の物語を書いていることに関係した、何かの巡り合わせなのかも知れません。そう思って、11冊ものノートを読み返しております。…それにしても恥ずかしいなー*v.v
「藤姐、おいくつですか。」
「ちょ、朔、おまっ…!」
藤は一瞬真顔になったが、堪えきれずに笑った。少なからず、蒼にはそう見えた。
「朔、アンタ面白いね。好きだ。
良い、教えよう。
アタシは二十だ。」
「え!?」
反応したのは朔じゃない。蒼だ。
すると藤は、蒼に顔を向ける。
「なんだい?もっと老けて見えるっていうのかィ?えぇ?」
「いや、そんなことは…!ただ、俺と同い年だと…。」
藤は笑う。
「冗談だ。敬語もいらん。朔もな。」
胸を撫で下ろす蒼を横に、朔が口を開く。
「藤姐、そういえば、何故僕達を残したんだ?」
追伸≫
蒼の焦ったような台詞や、藤姐さんの一瞬の真顔の意味をとって頂けたでしょうか。
女性に年齢を聞くだなんて、なんて恐れ知らずなのでしょう。蒼兄は、一般常識というか、暗黙の了解をわかっていますよね。
つまりはそういう事でした。
藤は朔を見据える。
「早くこの村から出ていくんだ。
その説明のために残した。」
朔と蒼は無言だ。
「この村では、旅人が消える。」
「どういう事?」
朔の目は真剣だ。藤は言う。
「鬼は人間に、人間は鬼に喰われるからねェ。」
「喰われるって――」
「正しく言うのなら、殺される、だな。…お互いにお互いの首を狙い合ってンのさァ。」
事もなさげに言うが、思っていた以上にこの村の治安は悪そうだった。
「だから行くんだね。もう直、色んな輩が訪問してくるよ。…アンタたちに罪を被せるために。」
先に口を開いたのは蒼だ。
「俺達は別に此処に留まる必要も義理もない。出るのが得策だと思うが…。」
「いや、残ろう。」
その言葉に、呆れたように微笑った。
「朔ならそう言うと思っていたよ。」
驚いたのは藤だ。
「朔、今の話を聞いていなかったのかい?蒼も何故止めない。」
朔は答えた。
「僕達の村の二の舞になってほしくないんだ。」
と。
藤は表情を変えない。
「本当は平和だったんだ。
でも、崩壊した。…いや、させてしまった、かな。だから――」
固く握られた拳は震えていた。
蒼はその背中を軽く2回叩き立ち上がると、藤を見下げて言った。
「凛の所に案内してくれ。このままじゃ、凛が気の毒で仕方がない。」
藤は疲れたように、深く深く溜め息をついた。
「アンタたちは早死にするよ、まったく…。
アタシもついていってやる。」
二人は驚く。
「ちょっと待ってな、着替えてくるよ。」
藤が奥に下がると、蒼は少々顔をしかめる。
「客人を迎えて着替えだなんて…。」
「まぁまぁ…外で待っていようよ。」
静かに外を出る。
すると、開口一番に朔は謝った。
「ごめん、面倒なことになりそうだ。」
「いや、こうなるとは思っていたしな。」
皮肉げに言う蒼は続ける。
「それに、一番面倒なことになりそうなのが出現したじゃ――」
「誰の事だい?」
朔は苦笑いするだけだった。
お久しぶりです。テストも終わり、開き直りの境地に至る私です。
やっと本章!ということで、もうテスト無いし追われることもないので、気長にやっていこうと思います。よろしくお願いします。
今日は全国家庭訪問イン秋田です。これからFM秋田に行ってきます!