伏し目がちに塗る口紅は 当然はみ出すことも無く まだ子どもだとたかを括っていた私は 少しだけ恥ずかしくなった
君はいつも本を読んでいた 乱暴に扱うその辺の男の子とはちょっと違って 体の芯から指先までに通る神経を 1枚1枚にのせるように。 その瞬間私は少しだけ本が嫌いになった
どこにしまったか忘れていた折りたたみ傘を引っ張り出した。 あの日あなたが貸してくれた可愛げのない傘。 本当は嘘ついてた。 いつもちょっとだけ左肩濡れてたの。
ミニスカートとか好きじゃないって言ってたじゃん。ばか。
喉の奥に差し込んだ痛みは あなたが私に吐くはずだった溜息 全て飲み込んだら、また、戻れるよね
逸る鼓動と不規則な呼吸を飲み込み はねた前髪は手で押さえつける 珍しくアイロンなんかかけたもんだから時間が無くて、お気に入りの靴は履いてこれなかったけど うまく言えないかもしれないけど 聞いてほしいことがあるの あのね、
あと一回瞬きをしたら 零れ落ちてしまうから 持ち前の面の皮の厚さで 無理矢理私を抱き寄せて 今日だけは許してあげる
イヤホンからコードを無くした人を 私はすごくおこりたいんだ 女の子の頑張りかたを 絶対知らないんだ
どこか浮き足立つ思いを隠して なんでもない顔をして歩いていく 久しぶりに会えると微笑む あなたはとても可愛くて いつの私も、あなたの一番の親友。 今日の私は、あなたの彼女の親友。
君のイヤホンから漏れていた音楽は 正直私の好みじゃないけれど 気づいたら口ずさんでたよ