UFOの落ちてきた夏~10話目~
走った。祖母の家まで、走って走って走って走った。まだUFOがあるかもしれないと。だが、庭には既に何も残っていない。破片や跡など、何一つ。そんななか、まだ状況を飲み込めていない私に、一本の電話が入った。
「「はやく病院へ、ばあばとくるんだ!」」
父からだ。病院へは歩いて五分程度。私はこの偶然の奇跡に、胸の鼓動が高まるばかりだった。
はやく、はやくいかなきゃ。
祖母へは伝えたので、後から来るだろう。私は、一刻もはやく行きたかった。
着いた。四階の304号室。病院の扉を開く。
「お母さん!」
疲れているような、それでも嬉しそうに微笑む母の腕のなかには、小さな小さな男の子。私の、弟がいた。覗き込むと、先ほどまでの男の子の顔とダブった。茶色い髪と、深くて黒い目。私は息を飲んだ。
続く