下町裏物語 一百鬼夜行編一
空が橙色に模様替えし、夜がインターホンを押す時刻の縁側
「ねぇおじいちゃん百鬼夜行って何?」
今年小学3年生になった雷太は言った
「百鬼夜行ってのは、読んで字の如く。百を超える鬼や妖怪達が夜に行進することだよ」
「へぇ〜行進かぁ〜…なんだか運動会みたい」
そう言って雷太はくすくすっと笑った
その時、おじいちゃんが思いがけないことを言った
「雷太、百鬼夜行見てみたいか?」
「え?見れるの!?」
「あぁ見れるさ。お前がソレラを信じるならな」
「ソレラって何?、本当にいるの?」
「…人間が皆寝静まった後、この紅月町の火輪神社をソレラは通る。どうだ行くか?」
「うん…行く!」
雷太は戸惑いながらも少し、いやかなりワクワクしていた。今年で151歳となるおじいちゃんが、いまだに真っ黒な目を紫色に輝かせる満月の夜はいつも何かが起こるサインなのだ。やけに夜になると元気になるおじいちゃんは雷太にこう言った。
「このことはお母さんには内緒だからな。夜遅くにお前を連れ出したことがバレたらワシはもう…お前のお母さんは鬼より怖い」
「あはは、おじいちゃんはお母さんに頭があがらないもんね」
おじいちゃんはその長い後頭部をポリポリとかいた
どーんと言う音が町中に鳴り響く。おじいちゃんにとって何度目になるのだろうか。紅月町一番の大イベント、
紅月妖蘭花火大会が始まった。