SOL!限定小説「パラレルワールド~分岐点の反対側~」#0
ミーンミンミンミーン……。
毎日のように蝉の合唱コンクールが行われている、家の裏にある木。その根っこのところで私は静かに大合唱を聴いていた。
もちろん、暑い。日陰とはいえ、息苦しくなるほどの暑さと肌にまとわりつくかのような湿気で不快指数は90近いんじゃないだろうか。
それなのに私がエアコンが効いた涼しい家の中に行かない理由。それは家の勝手口で耳を澄ますと蝉の声に紛れて聞こえてくる声のせいだ。
「あなたがあの子にゲームなんか買ったから!」
「さっきから何度も言っているが、お前もあの時『少しならいい』と言っていたじゃないか!」
「でも最終的に決めたのはあなたじゃない!これも何度となく言ってるわ!」
「……。でも結局はどちらも買うことに賛同したんだからどちらも悪いことになるじゃないか」
どんな口喧嘩も最終的にはこれに行き着く。そうなると私は「ちょっと出かけてくる」と言い残しここにやってくる。ほとぼりが冷めた頃にまた家の中に戻り自分の部屋にこもる。
少しは自分がダメな人間だということも自覚している。でもちゃんと学校には行っているし、勉強だって約80人いる自分の学年で20番くらいには入れている。好き嫌いもほぼないし、身だしなみもちゃんとしているつもりだ。
……毎日夜更かしをしてゲームをしてしまうこと以外は、どこにでもいるような平凡な中学二年生だ。
どうしてこうなってしまったのだろう。ただの反抗期?もとからそういう素質があっただけ?──いや、あの時ゲームを買ってもらっていなければもっと違ったかもしれない。
あの時にもう一度……戻りたい。