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それでも戦い続けるんだ

さかた校長、遅くなりましたが一昨日の峯田先生の授業を聴きました。
冒頭の校長の手紙、聴いていて思わず泣いてしまいました。
私は自分の思ったことをあんまり言葉にできない。
親でも親友でも友達でも、仲のいい先生でもどこか壁を作ってしまう。SOLに書き込みをするのだって実を言うとちょっと勇気がいる。
本当は嫌だって言いたい時に周りに合わせてへらへら笑って、周りが笑ってくれるなら本当は思ってないことでも言葉にしてしまう。
人を悲しませたくないから、笑っていてほしいから、傷つけたくないから。
それもある。でも一番は私が怖いんだ。本当のことを言って傷つけてしまうのも、傷つけられるのも。私は臆病者なんだ。
校長が泣きながら手紙を読んでいるのを聴いてこの人から出てくる言葉は全部本物だって思いました。優劣も人の目も気にしていない。ただ真っすぐに自分に向けて言葉を紡いでいるんだと。芸能人でラジオに出ているこんなすごい人も私みたいに爆音で好きなバンドの曲を聴いたり、叫んで走ったり、レギュラー入れなかったり、一人で泣きながら帰ったりしてたんだなって。
そう思ったら、なんだかほっとして、熱くなって、涙が出ました。
かっこ悪い自分も情けねぇ自分も全部校長に肯定してもらった気がしました。
いつか校長が銀杏BOYSや他のものに肯定されたり、救われたように、今私は校長の言葉にさかた校長という人に自分を肯定して救い上げてもらいました。
茨城の狭い町で人の目ばっかり気にしてる臆病でひねくれたダサい私。部屋を真っ暗にして爆音で音楽を聴きながら「ふざけんな」っていつも思っていた。
でも、別にそれは無駄でもない。私は臆病者だ、なら臆病なりに闘うおうぜ。
絶対に上手くいかないけど、まずは声を出してみよう。そう思えた。
さかた校長ありがとうございます。いつかあなたに会いに行きたい。話がしたい。

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「My Quest」…2

コドク。孤に独りって書く方。蟲毒ではない。ひとりぼっちの意味を持つ方。
目に見えないものと戦うのは大変だ。相手にどのくらい勝っているのか、自分が今どのくらい傷ついているのかが分かりにくい。目に見えないコドクは性質が悪いのだ。スッと目の前を睨みつける。廊下を進むたび賑やかな声は遠ざかる。たぶんコドクは近づいて来ている。

こっちに来んなよ。俺は悲しくなんてない。

振り切るように力強く空き教室の扉を開けた。

「いただきます」
両手をぴったりと合わせ、軽く頭を下げる。感謝を捧げる。
感謝もそういえば目に見えない。プレゼントとかで形に表すことはできても、一番奥の奥にある気持ちは透明だ。こうしてみると人間はかなり見えない物に縛られている気がする。縛られているっていうのはちょっと違うか?でも近い何かは感じる。
なんて考えていたら弁当の中のタコと目が合った。真っ赤なウインナーはなぜか下部が六等分されていて、目と思われる黒ゴマがかなり離れた位置に二つちょこんと乗っている。前言撤回。タコというかタコに近い生物型のウインナーだ。なんていうか、マヌケで笑える。朝、兄ちゃんが彼女に作っていた弁当の残りらしい。この謎生物に彼女が喜んだのかは不明だが、俺の気持ちは少し落ち着いた。このマヌケなタコを前にウジウジしている方が間抜けだ。そんな気になる。

一人で食べても弁当はうまい。そしてそこそこ笑える時もある。
だから、大丈夫だ。俺は一人でも大丈夫だ。賑やかな教室に一人でいる勇気はないけど、こうして隠れてじゃないと弁当も食えないけど。だから何だ、何が悪いと開き直る。

そうやって不安定な何かを保って綱渡りするみたいに今日もやり過ごす。

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「My Quest」…1

昼休み=憂鬱。
いつから当たり前になったのかはもうあんまり覚えていない。
机をくっつけて弁当を広げるクラスの奴らをぼんやりと眺め、溜息を一つ。息を吐くと楽になるとか言ったのはどこの誰だ?全然気分は落ち着かない。むしろどんどん苦しくなる。溜息をつくと幸せが逃げるっていう言葉の方が正しい気がする。

「お前の卵焼き美味そうじゃん、一個くれよ」
自分の食えばいーじゃん。

「ねぇねぇ、みっちゃんって、岡部先輩のこと好きらしいよ?」
「うそっ、告っちゃえばいいのに。絶対お似合いだよ!」
好き「らしい」んだろ?勝手に告白しろとか言うなよ。

「数学のあいつさぁ、なんかキモくね?」
「あの新任の?分かるわ、なんか気合入りすぎてて引くよな」
人のこと簡単にキモいとか言うなっつーの。

……なんで俺いちいちツッコミ入れてんの?
かなり寂しい奴になっている。ていうかすでに寂しい奴なんだけど。
なんとなく心地が悪くなり、視線を窓の外に移した。
水色の絵の具をぶちまけたみたいな空がパッと目に飛び込む。まさに絵にかいたような空。俗にいう秋晴れ。見ていて何だか空っぽな気分になる。雲がないからか、単に腹が減ってんのか。それとも……。
なんだっていいや。とりあえず弁当を食おう。
ぱんぱんの箱に蓋を押し被せるように無理やり考えるのをやめる。
腹が減っては戦ができない。まぁ腹が膨れても勝てるか分からない戦いだけど。
ランチバックを引っ掴み、足早に席を立つ。

中二、秋。俺、堤圭二郎は戦っている。
姿を一切見せず、それでいてつねに近くにいるソイツの名は「コドク」という。