LOST MEMORIES ⅩⅤⅥ
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「はやくきて!はやくはやく!」
「待ってください、パプリ。そんなに焦らなくても、お花は逃げないよ。」
少女というには幼すぎる女の子が、後ろからついてくる少年に手招きをする。
咲き誇る花たちが眩しい。
ここは、先を行く女の子たっての願いで決まった行き先、お花畑。
花が 蝶々と二人を歓迎する。
「おそいっ!おいていっちゃうんだからね!」
ぷうっと桃色の頬を膨らませ、走り出す。肩についた蜂蜜色の髪が揺れる。
「ちょ、危ないから!」
女の子の足がもつれた。
少し焦って追いかける。
さすがに、5歳の少女には悠に追い付いた。
「ごめんなさい……」
肩に手を置かれ、止まる女の子は反省した様子で。
「怪我がなくてよかったです。」
にっこりと微笑まれることで、女の子もくすぐったそうに微笑う。
「行きましょう。」
腕を差し出すと、女の子はその腕に抱きついた。
「うん!大好き!」
少年は、その子の頭をくしゃっと撫でた。
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