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病床

昼間はなんの変哲もなかった
寝室は今や 突発性痛覚中毒症患者の病室
どうやらその異常は 彼らにとっては正常そのもの
締め付けられる胸の痛みだって もはや快感そのもの

太陽が昇る間は まともなフリ
でも 腕にある奇妙な痣は誤魔化せない
赤ボールペンも輪ゴムも 代わりにはならないようで
さあどうしましょうねなんて 彼には他人事

月が出始めれば 高揚感もひとしおだそうで
病室は今や 慢性的感覚異常症候群患者の住処
なにやらこの病気は 彼女らにとっては個性そのもの
異常というレッテルだって もはや勲章そのもの

太陽が沈むまでは 普通を装う
でも どうしても歪な痣は隠しきれない
カウンセリングは絆創膏にもなりやしない
ICUすらお手上げで 為す術もなく
さあどうしましょうねなんて 彼女には他人事

もう ほっといてくれねぇかな
俺はこれで幸せなんだ これが俺の幸せなんだ
もう 余計な世話はいらねぇんだ
アンタらの言う幸せにはうんざりさ

嗚呼 このささくれた心にも 優しく包帯を巻いてくれれば
あとはなんでもいいの
嗚呼 そんなことは覚えてないの
このごろのあたしは忘れっぽいのだから

今日もまた夜が寄り添ってきて 灯りを消して 目は閉じないで 
病みと戯れたいのに  邪魔をするな  馬鹿にしないでよ

生きている悦びに浸りたいだけだ
これをしないでどうやって生きていることを証明すればいいんだ
虚しく淋しい心を満たしたいだけなの
だったらほかにどうやって心を満たすの? あなたが満たしてくれるの?
どうしてわからないのだろう? どうしてわかり合えないのだろう?