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「My Quest」…2

コドク。孤に独りって書く方。蟲毒ではない。ひとりぼっちの意味を持つ方。
目に見えないものと戦うのは大変だ。相手にどのくらい勝っているのか、自分が今どのくらい傷ついているのかが分かりにくい。目に見えないコドクは性質が悪いのだ。スッと目の前を睨みつける。廊下を進むたび賑やかな声は遠ざかる。たぶんコドクは近づいて来ている。

こっちに来んなよ。俺は悲しくなんてない。

振り切るように力強く空き教室の扉を開けた。

「いただきます」
両手をぴったりと合わせ、軽く頭を下げる。感謝を捧げる。
感謝もそういえば目に見えない。プレゼントとかで形に表すことはできても、一番奥の奥にある気持ちは透明だ。こうしてみると人間はかなり見えない物に縛られている気がする。縛られているっていうのはちょっと違うか?でも近い何かは感じる。
なんて考えていたら弁当の中のタコと目が合った。真っ赤なウインナーはなぜか下部が六等分されていて、目と思われる黒ゴマがかなり離れた位置に二つちょこんと乗っている。前言撤回。タコというかタコに近い生物型のウインナーだ。なんていうか、マヌケで笑える。朝、兄ちゃんが彼女に作っていた弁当の残りらしい。この謎生物に彼女が喜んだのかは不明だが、俺の気持ちは少し落ち着いた。このマヌケなタコを前にウジウジしている方が間抜けだ。そんな気になる。

一人で食べても弁当はうまい。そしてそこそこ笑える時もある。
だから、大丈夫だ。俺は一人でも大丈夫だ。賑やかな教室に一人でいる勇気はないけど、こうして隠れてじゃないと弁当も食えないけど。だから何だ、何が悪いと開き直る。

そうやって不安定な何かを保って綱渡りするみたいに今日もやり過ごす。

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