紡げ、詩。【第1話】
放課後。
私は一人で、いつものようにノートとにらめっこしていた。
「何、詩書いてるん?」
『え、いや、ちょっ、勝手に覗かないでよ』
「さっきから何べんも声かけてたで?
聞こえてへんかったん?」
”彼”は私の前の席の机にもたれかかった。
まだ”彼”の視線は私の手元のノート─中身は恥ずかしながら自作の詩ばかりである─に向いている。
「はぁ…ついに反抗期が来たんか」
『反抗期?
私、別にそそそそんな、こ…』
「こ?」
『こ、小林くんの子供じゃないんだから、
小林くんに対して反抗期なんて無いよ』
「んー…」
”彼”は顎を軽くさすって何かに悩んでいる。
「直らん?その”小林くん”ってやつ」
『直すってどういうこと?』
「もうさ、そろそろ”隼人”で良くない?」
『そろそろって…
私たち、その…付き合ってるんじゃないし』
「…ふーん。付き合ってない、ねぇ」
”彼”は少し苦しそうな顔で、外を見つめた。
なんとなく気まずくなって、どうしようか迷っていたところで、完全下校15分前のチャイムが鳴った。
帰ろう。
私はノートと鞄を抱えて教室を出た。
”彼”は追って来なかった。