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境界線 Ⅰ

 いつからか、自分には霊体なのだろうか、怪異というのだろうか、分からないが、そういった異質なものを見る能力があることに気が付いた。ただ、知覚したり意思疎通したりできるが、それ以外のことはできないらしかった。こういうものを『観測者』というらしい。
 また、この能力には個人差があるらしく、まだ能力対象が同じである者に出会ったことはない。これによって孤独を感じることもしばしばある。異能を持つ者が近くにいればいいのにと思うこともある。ただ、他異能、他位階どうしが同じコミュニティの中で生活していれば、胸糞悪い場面に遭遇してしまうことも有り得る。だから本当は、会わなくていいように世界がなっていれば良いし、そう思うようになっていれば結果的には幸せでいられるのだ。
 この度は、そういった異能に関する奇妙な体験をしたのでそれについて書こうと思う。

 まずは予備知識として、私の在籍する中学校について説明しよう。
 校舎は四階建てで、一階には特別教室があり二階には昇降口と職員室、PTA室、会議室などがある。三階には図書室と、元は普通学級の教室だったが、生徒数が減って使わなくなった教室と、特別支援学級の教室が連なっている。そして四階に音楽室と普通学級の教室がある。
 この内問題なのが三階である。
 この階は基本的に通ってはいけないことになっている。西、中央、東側にある階段と、図書室以外の利用は禁止だ。入学した当初、「三階の特支の中には人に会うのが苦手な生徒がいるのだ」との説明を受けた。
 ある日の帰り際、図書館を利用した。帰る時、図書室に一番近いのは西階段だったが、中央階段から降りた方が昇降口が目の前に来て昇降口が近い様な気がする。先生が図書室にいたものの、生徒はもういなかった。だからその程度の軽い心持で三階の廊下を通ろうとした。
 その時、後ろから声が掛かった。
「駄目だよ、特支の方通っちゃ」
 振り向くとそこには図書室から出てきた国語科教員小木がいた。
「何故です」
「通ったら駄目って言われたでしょ」
「生徒がいないから大丈夫だと思いました」
「駄目なんだよ」
「そうなんですか」
「そう。だから帰るよ、ほら」
「分かりました」