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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑤

「あ、あの」
思わず声がする方を見ると、転入生の坂辺さんがこちらへ目を向けていた。
「すみません、その…」
坂辺さんは恥ずかしそうに目を逸らす。
「次の授業の移動先が分からないので…」
坂辺さんの声は徐々に小さくなっていった。
「あ、もしかして次の授業の場所が分からないの?」
わたしがそう尋ねると、坂辺さんはそうです!と答え。
「それなら良いよ」
わたしが案内するよ、とわたしは彼女に言った。
「え、良いんですか⁈」
「うん、別に良いよ」
驚く坂辺さんに対し、わたしはそう答える。
「じゃあお願いします」
坂辺さんはそう言って、荷物を持って立ち上がった。
それを見てわたしは、じゃあ行こっかと歩き出した。

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「やさしさ」の解釈

「やさしい」人ってなんだろう?

そう考えてみたときに

私は

ただ同調して

肯定して

慰めて。

そんなのは本当のやさしさなんかじゃないと思うのです。

相手を気遣いつつも自分の思ったことを伝える勇気が、

相手のことを想うからこそ間違ったことは間違っているよと伝える勇気こそが、

私は本当の「やさしさ」だと思うのです。

きっと相手も貴方の厳しいやさしさに

いつか感謝する日がきっと来るから。

「伝える」ことを大切にして生きていきたいね。

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のりこめー

船員の皆さんを乗せるスペースが無きゃ意味無いでしょうに。

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ミュージック 4

休みの日の朝、近くの公園までを軽く走る。
静謐な景色を眺めながら、イヤホンを耳に、音楽を聴きながら走るのが心地よく好きだった。
でも美しいと感じていた景色が今は、寂然としている。私の頭の中に音楽というものが無いからなのか、ただそこにあった木々たちがどこかに行ってしまったからなのか。
少し前まで使っていたイヤホンは机のなか。自分の息の音と足の音。一定のリズムを耳にすると、歌いたくなる。
爽やかとも言えない風が私を通り過ぎていった。

公園のベンチが埋まっていた。
老夫婦と小さな兄妹と、その母らしき女性。
まあいいやと公園を去った。
汗が首に流れてきた。
あの日の続きを、また思い出す。

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ユーラシア大陸縦横断旅44

ホテルにチェックインして、部屋で用意されていたスーツに着替え、セーヌ川のクルーズ船に乗り込む
「え?なんでこんなに大勢の人いるんだ?今日何か式典でもあるのか?」と幼馴染に訊くと「君の彼女さんの誕生日パーティーだよ。ただ、彼女さんのSNSを見た彼女さんの知人達がが昨日一斉にパリに押しかけちゃって調整が大変だったんだ。本当なら、僕は今日君たちとパリで合流したら荷物を預かって最終のユーロスターでロンドンへ先に戻る予定がお察しの通りさ」と言って苦笑いを浮かべていると前から
高校の同級生、中学の同級生、小学生時代に仲良かった仲間がこちらに来ていた
そればかりか幼稚園時代の仲間達もいた
彼女も知人達と大勢会ったらしく、「みんな来てくれたの?」と息を合わせて言ってしまった
「せっかくの誕生日でサプライズするなら、大規模にやった方が良いだろうと思ってね。彼女の知り合いしかいなくて肩身が狭いんじゃ彼氏は辛いと思ってね。シチュエーションならぴったりだ。バンクーバーの管制官みたいに、カッコよく決めちゃいな。そのために『愛の町、華の都』でやると決めて、モスクワで買い直したんでしょ?」という幼馴染からの返事が返って来た
「そうだな。こんな大規模にやって後で怒られても知らないけど」と言って笑い出す
そして,彼女の誕生日にという憧れのシチュエーションで行ったプロポーズは成功した
次の瞬間、俺がボタンを押したことでエッフェル塔の照明が代わり、日本語が浮かび上がる
「おめでとう」とだけ書いてあった
「これ、全部貴方がやってくれたの?」と彼女がはしゃぎながら訊いてくる
「全部じゃないさ。俺がやったのは指輪の買い替えとセーヌ川のクルージングの手配、そして最後のメインイベントの手配だけさ。彼達が細かいところの調整と費用の支払いをしてくれたんだ」そう言って幼馴染の肩に手を添える
彼は俺にアイコンタクトをして「Are you ready?」とマイクに向けて話し、「Un,deux,trois! 」とフランス語でカウントダウンをする
次の瞬間、色とりどりの花火が打ち上がる
「クールだけどロマンチックな所あるんだね」と彼女が笑い、「コイツはツンデレなだけさ。」と昔の俺を知る仲間達からツッコミが入り、誰もが同意して笑い出す
夜景と花火という光のアーチの下、船は進み続ける

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ほうじ茶

ああ、そうか。
目の前の眩い光に目が眩み、見失いかけていたんだ。勝手にこちらが影だと思って、あなたから消えようとして。
なんで忘れてしまっていたんだろう。あの月日は消えないのに。ずっと私の中にあったのに。
ああ、私は。
こんなにも素敵な人と出会っていたんだ。上辺じゃない、見た目じゃない、頻度じゃない関係。
思い出せて本当によかった。お話させてくれた事に、最大限の感謝を。
ああ、こんなにも。
容易に扱いたくない、そんな時間だった。リボンをかけて、そっと宝箱に仕舞いたい。これは、私とあなただけの時間だった。


いつか、話したいな。全部。