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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ⑮

あれから1週間後。
あの後、わたし達は”今日はもう解散にしよう”と話し合って、早めに解散した。
泣き止まないネロは耀平が家まで送っていく事になった。
…わたしはこの1週間、彼女の事が気がかりだった。
あの”オーベロン”と名乗った少女とネロの間に、かつて何があったかわたしは知らない。
しかし、ネロのあんな姿を見てしまっては、何だか彼女の事が心配になってしまった。
彼女は大丈夫だろうか、そう思いつつわたしはいつものようにショッピングモールで”彼ら”と合流した。
「…あれ、ネロは?」
普段通り彼らが溜まるショッピングモールの休憩スペースのイスに座る彼らの元にやって来たわたしは、ネロがいない事に気付きそう尋ねる。
「あーネロ?」
耀平はそう呟く。
「今日は来てないぞ」
え、どうかしたの?とわたしが聞くと、耀平は分からん、と答えた。
「そもそも音信不通だし」
「え」
思わぬ言葉にわたしは唖然とする。

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もうすぐね、と桜がささやく

ほんのすこし暖かい陽だまりと、
大きめの制服と。

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お題募集

最近エッセイを書き始めました。
このままだと近いうちネタ切れになるので、お題を募集します!
何でもかんでも下さい、感想やダメ出しでもいいです!
よろしくお願いします。

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てぶくろ異説・冬を越す雪下の2匹

「ただいま、カエル君」
この手袋の拠点の中に声をかけながら、我が相棒ネズミ君が拠点に帰ってきた。これ幸いとすっかり冷めきっていた寝床から這い出す。
「やァ、危うく凍え死ぬところだったんだ」
「馬鹿言え。せっかく僕が作った防寒着を着ておきながら、凍え死ぬってことは無いだろうさ」
ネズミ君は笑いながら、自慢の毛皮についた雪を払って拠点の外に蹴り捨てた。
たしかに彼の手先は器用だ。外で拾ってきたという何かの毛皮の欠片を、これまた外で拾ってきたという植物を解した繊維で縫い合わせたこの防寒着を着ていれば、ただ寝床で丸まっているよりは随分とマシな気分になる。しかし、我がカエルの身体はひんやりと湿っていて、防寒着の内側に溜め込む熱を生み出すには向いていないのだ。ネズミ君の体温は我が生命維持にきわめて重要なのである。
「ネズミ君、今回の収穫はどうだったい?」
「ああ、いくらか毛皮と植物片を拾ってきたよ。これから肉を削いで、もう少し頑丈な防寒着を作ろうかと思ってね。そうすれば、君も雪掘りに出てこられるだろう?」
「ああ、2匹がかりなら多少は危険も避けられような。我が足技が唸るぜ」
「ははは、期待しているぜ。それじゃあ、僕は防寒着づくりに取り掛かるよ」
ネズミ君はそう言って手袋の奥へ引っ込んでいった。手袋の四指の側は彼の休息と製作作業のための空間になっている。彼は毛皮を作業台の上に伸ばし、石の欠片のナイフを用いて毛皮を洗い始めた。
さて、彼がああして疲れた体に鞭打って働いてくれるわけだし、彼を労うために疲労回復の膏薬でも作り溜めておくとしようか。植物片を拾ってきたと言っていたし、我が観察眼を以てすれば有用な薬草の1つや2つは見つかるだろう。

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Trans Far-East Travelogue㊷

兄貴達は無事に仲直りして手を繋ぎ、俺達を呼びに来て「調印式しようか」と耳打ちするので「白の二の舞は踏むなよ」と返して兄貴について行くと嫁は「白の二の舞ってどういうこと?」と訊いてきたので,「旧ソ連圏で一時期対立が深刻化した地域が多いことは知ってるか?」と返すと「ナゴルノ=カラバフ・アルツァフ紛争とかグルジア・ジョージア紛争のこと?」と返ってきたので「それも旧ソ連圏で起きた歴史の悲劇だけど,俺が言いたいのはロシアとウクライナの争い,いわゆるドンバス戦争のことさ」と返すと「一度ミンスク合意で停戦してたよね?あの後数年で反故にされて色々あったけど」と返ってきた。
そこで,「そのミンスクの街があるのは何ていう名前の国?」と訊き返すと「ベラルーシよね?ルーシは確かロシアって意味で…ベラは白ね。もしかして,白の二の舞って…」と返ってきたので「その通り。白の二の舞はミンスク合意の二の舞,つまり一度仲直りしたのにそのことを反故にしてもう一度いがみ合うことさ」と返すと兄貴が「ブラウヴォルフ,早く来い」と怒鳴るので「卒アルで俺のクラスが世界史選択でなぜかモンゴルの紙幣にあるチンギスハンの肖像画を差し替えられて俺がチンギスハン扱いになったからって,チンギスハンをはじめとするモンゴル遊牧民の伝説にある蒼い狼呼ばわりかよ…しかも,ドイツ語だし」と笑っていると兄貴が4人分冊子とペンを用意し出してそれぞれの冊子にサインした後お互いに冊子を回し合うので本当に国際会議のようになった。
「卒アルの寄せ書き交換会かよ!」と言う俺のツッコミの声と多摩川のせせらぎだけが田園調布の街に響いていた。

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つなぎめ

いつもよりゆるゆると朝を過ごせて
いつもよりスマホも長くいじれて
いつもより早く眠りに就ける
そんな休みが大好きだけど

いつもより友達との関わりが減って
いつもより時間を持て余して
いつもより笑う時間が少なくなる
そんな休みが少し苦手で
やっぱり学校に行きたいな、とおもう

そう思える愛しい日々
そう思えた3年弱
そんな日々がまた繰り返されることを信じて
次の3年へ手を伸ばす

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花束

ただの知り合いから突然、抱えきれないほどの花束を貰ったら?
困るでしょう。
そうですよね。
その花束の香りが苦手だったら?
受け取る側にとって、その花束は素敵なプレゼントなんかじゃないでしょう。

でもこの花束、何年も抱きしめすぎて、
あなたに渡さないまま枯らしてしまいそうなの。