何処にも行かないで
傍にいて
離れないでって
抱き締めても
もう
きみの声
体温を
感じることは
できない
零れる言の葉ひとしずく、ぜんぶ笑顔に換えられたなら。
しかめつらのあのひとひとり、いらいらぜんぶ吸い取って、笑顔笑顔にできたなら。
もしもの話。だけど、もし。
そんな夢想をゆらゆらふわり、日々をたゆたう魔法の話。
待って、行かないで。
手を伸ばすけれど、伸ばせば伸ばすほど遠くなっていくような。
追いかければ、追いかけるほど空まわりして。
あなたにヤキモチを焼かせることしかできないけれど、そんなことで振り向いて欲しくないけれど。
でもでも。ダメってわかってるの。
ちゃんと素直にならなくちゃ。
怖いものなんてない。そのくらいで、行かなくちゃ。
ひとりじゃないよ。
繋いだ手の温もりが、優しすぎて
壊れないように、壊さないようにぎゅっと握りしめる。
傷つけあって、疑い合って
たくさん喧嘩もしたし
たくさん笑いあったりもしたね
涙だって、笑顔だって
僕らの絆だね。
見えない絆を胸に
これからも手をつないでいこう。
たった一人、あなただけに
届けたいと紡いだ言葉が
たくさんの人の胸を打つならば
たとえ一番伝えたいあなたに
届くことはなくても
私は歌う。言葉を紡ぐ。
こんな事、前にもあったな。
なんて、思い出した時にはもう遅くて、
また同じところに置いていかれる。
忘れちゃいけない、忘れちゃいけない。
必要なのは自信とちょっとのプライド
無駄にうつむいたり僻んだりせずに生きていたいから
強く響いた音楽を自分の心のそばに置いて歩んでく
現実は孤独で、辛くて、ちょっと楽しい。生きることは苦難で簡単だ。
それでも心臓の鼓動が止まることは無く、今日も生かされる。
僕らはどこに向かうのか。誰も知らず、恐る恐る一歩を踏み出す。
僕らが目指す幸福はどこか遠くのものではなく。
日常の中にある幸福を見つけることだと気が付いたとき、
人は人生を謳歌する。
「もしもし、」と夕ご飯のとき電話に出たのはママで、どうやら相手は清水のおばちゃんらしい。話が盛り上がっているのを良いことに、僕は小さくごちそうさま、と言って席を立つ。食器を片付けるフリをして、アスパラガスを生ゴミと一緒の袋に詰めてしまう。ばれませんように、と願いつつ、背すじがぞわぞわしてるのをごまかすために、ごちそうさまー、と大きな声で。
はーいとママの返事が聞こえた。
僕が妖精たちに会ったのは、そんな日の次の日で。楽しみにしていた給食の揚げパンが、妖精になっていた。いや、揚げパンだけじゃなくて、おわんやお皿に1匹ずつ、アルミのおぼんにのっているもの全部。そして僕の方を見て口々にこんなこと言うんだ、「きみ昨日アスパラガスを捨てたね。」
「捨ててない」「いや捨てただろう、ボクたちは見ていたよ」「なんでよ、てか誰なの」「ボクたちは妖精、ところできみ、今日の給食は楽しみにしていた揚げパンだよね」「僕のはそれが妖精になってるんだけど、」むすっとしている僕をよそに、妖精たちは ははは、と甲高い声で笑い出す。「きみの分はボクがもらったよ。返して欲しけりゃもう食べものを捨てたりしないって約束するんだね」ふよよ、と僕の鼻先に浮かんだ揚げパンの妖精は、意地悪なことに揚げパンの匂いがうんとして。
「そんなのムリだって!」
「ねえサトシくんさっきから誰としゃべってるの」聞いてきたのは隣の席のアユミちゃんで、
あ。その手には揚げパン。
「アユミちゃんごめん、それ一口ちょうだい」「え」ぱくりと口の中に楽しみにしていた揚げパンが拡がって、キャーーッと妖精たちの黄色い悲鳴が教室に響いた。
だからと言って嫌いなものは嫌いだ。僕は相変わらずアスパラガスは残すし、妖精たちはキャイキャイ騒いで現れる。あと変わったことといえば、僕がアユミちゃんを、アユミと呼ぶようになったこと、だろうか。
青い空は気持ちが悪い。
赤く染めあげてしまおうか。
丸い地球は気持ちが悪い。
割り砕いてみせようか。
あぁ気づかなかったな
君は泣いていたんだね。
あぁ気づかなかったな
僕が泣かせてしまったんだね。
全てを潰したこの赤く染まった手で
貴方の涙を拭きにいっても良いですか?
貴女を抱きしめに行っても良いですか?