さむいのは好きじゃない
さむいのは好きじゃないけど
さむいいときのあったかいいは安心する
枯れ草色のコートを着込んで
あの娘の唇のようなピンクを見ている
死んだ木である一方変わらない炭素と
きまりよく並んだ水を踏みしめている
僕らが生まれた場所を思い出せそう
とてつもなくでっかい黒曜石に包まれて
その中で何億ものひかりを吸う
昨日と明日が隠し味の今日の匂いがする
こたつの古い木のうえで
みかんがごろごろごーろごろ
僕は白い息を吐きながらひとり、裏山の山道を歩いていた。
きんきんと冷たい空気が僕の耳に囁きかけて、僕の耳をじんじんと冷やしていく。
昔、君の言っていた話を思い出した。
(宇宙はとても広いから、私たちの知らない宇宙のどこかで地球みたいな星があるかもしれないよね。それってとっても素敵なこと!)
懐中電灯頼みの僕は、ただただ下を気にしながら黙々と歩き続けた。
(新しい星座をつくるには、今ある星座を覚えなきゃね。だから、私、星座を暗記するの。……それってとても無意味なこと?)
すがるような眼差しとあっけらかんとした声色が、僕の頭に焼きついている。
君は違った角度から物事を考えていて、それのためにひたすら真面目で、他の人はそれを無価値とするけど。
(ふたご座流星群ってどのくらい沢山の流れ星でできているのかな。見てみよう、ねえ、見てみよう?)
頂上は開けていて、空は満天の星空だ。
ぽうっと灯る明かりがあって、寒さに小さく丸まる背中も見えた。
僕が後ろから近づいていくと、君は振り返って笑みを浮かべた。
「さっきね、流れ星に君がここに来ますようにってお願いしたの。叶うんだね、願い事」
そんなことお願いしなくても来たのになんて言わなかった。
嫌いも好きのうちっていうけど
大嫌いは大好きのうちにはならない