「気をつけ、礼」
「お願いしまーす」
始まった。眠たくて退屈な高校の授業。
先生は黒板に何やら数式を書き始める。私にはもはや暗号にしか見えない。
ノートを開く。しかし書くのは板書ではない。先生が話すことでもない。
私はしっかりシャーペンを握ると、一言書いた。
「元気ですか、大晟」
大晟・・・櫻木大晟(さくらぎたいせい)へ向けたメッセージ。
大晟は私・・・栗葉星羅(くりはせら)の中学時代の同級生。高校は違う。
「大晟、貴方にこのメッセージを届けられるなら、私はあの時・・・中1の時言えなかったことを伝えます」
そしてシャーペンを握り直した。
「忘れようと頑張りました。貴方のことを忘れようとしました。でも無理でした。やっぱり、貴方のこと好きだったんです。」
そして私は書いていた文章をすべて消しゴムで消した。
人を愛するってなんだろう。
まだ未熟な高校生にはわからないのかな。
私がほんとに好きな人は・・・
忘れられない人は・・・
明日起きたらなにもなかったことになっていてほしい
明日起きたらこの不安が消えていてほしい
明日起きたら。
明日に望むことは残酷なことだと知っているけど、気づかないフリで、今日も願う
目覚めたら、
今日が終わっていて
わたしは少し泣きたくなった
すきな人の詩集をめくっていたら
青じそドレッシングの匂いがした
少し開けたれいぞうこのドアから
暗闇にもれるオレンジ色に
あたまをつっこむあなたが
世界でいちばん愛おしい
僕と君の関係は愛想笑いを添えないと
保てないって知ってるよ
きみがすきです
いつか真剣な
眼差しを僕に向けてくれるかな
なんて切り出したらいいのかしら?
ずっと前から好きでした。なんか男っぽい
いきなりキス。絶対出来ない
「はぁ〜」
あ、今なんか聞こえた。
なんか言った?って訊こうとしたけど
なんか鼻唄歌い出しちゃったし…。
ねぇ、あなたはいまなんていったの?
居場所?ああ、あるよ。
自分。俺の居場所は自分。
ふはは。
彼の乾いた笑い声を忘れないだろう。
税込1980円か、どうしようかな。
愛なんてちょっと欲しがればすぐ手に入る。
だけど君からの言葉は
そんなんじゃ手に入らないし
安いと思いたくない。