「気をつけ、礼」
「お願いしまーす」
始まった。眠たくて退屈な高校の授業。
先生は黒板に何やら数式を書き始める。私にはもはや暗号にしか見えない。
ノートを開く。しかし書くのは板書ではない。先生が話すことでもない。
私はしっかりシャーペンを握ると、一言書いた。
「元気ですか、大晟」
大晟・・・櫻木大晟(さくらぎたいせい)へ向けたメッセージ。
大晟は私・・・栗葉星羅(くりはせら)の中学時代の同級生。高校は違う。
「大晟、貴方にこのメッセージを届けられるなら、私はあの時・・・中1の時言えなかったことを伝えます」
そしてシャーペンを握り直した。
「忘れようと頑張りました。貴方のことを忘れようとしました。でも無理でした。やっぱり、貴方のこと好きだったんです。」
そして私は書いていた文章をすべて消しゴムで消した。