あぁ、あぁ。
惚れていたからって
愛していたからって
それに飲み込まれて
容易く“一緒に…”などと
口にするんじゃなかったわ。
だって好きだから
大切だから
独りになんてできないじゃない。
なぜだかそこに
つけこまれたような
じわりじわりと粟立つような
そんな心持ちなのよ。
あぁ、あぁ。
このまま一人
逃げてやろうかしら。
あぁ、あぁ。
でも、もう手遅れね。
あなたの首は鮮やかな赤で染まっているし
わたしの胸には
何かを誇るようにキラキラと
揺らがずに立つ
銀のもの。
あぁ、あぁ。
あぁ。
押し入れに一時避難させた要らないものは
何時か彼女が欲しがった精文館のぽイントカードと
同じ匂いがして
朝に感じた栄光が遠くなる昼、欠席連絡を躊躇いなく
化学反応が終わった電池みたい
もうどうにもならない電池みたい
貴方の心を諮るのに
小指と小指を絡めては
その指先を口に含む
あたしは狡い女よね。
小指に付いた紅を見て
なにも言わずに目を伏せて
あたしの胸に顔埋め(うずめ)
嗚咽の余韻を残すのは
貴方の狡さなのかしら。