夜は暗いからって
遠回りして
一緒に帰ってくれる
歩くのが遅くても
今日は疲れたねって
歩幅を合わせてくれる
信号が青でも
私が見えなくなるまで
手を振ってくれる
あと何回君にまた明日ねって言えるかな
血が足りないと倒れる私は、電池を入れないと動かないロボットみたいだ。
飽きて放っておかれるゲームのように、倒れたまま一人で死んでゆく。
雪国の山奥、新聞紙の蚊帳の中、妹は隣で寝てゐる。トクトクと血液の流れる音。
ごめんねタツミ、お母さんまたお酒飲んじゃったあ。
ごめんねタツミ、お母さんまたパチンコ行っちゃったあ。
ごめんねタツミ、晩ご飯ないんだあ。
ほんとにごめんねぇ。
枕元の時計を見た。村祭りの始まる時間だった。僕は一日、本を読んでゐたかったが、妹に綿菓子をせがまれてゐたから、しぶしぶ布団を出た。
ミツコを中心とした派手なグループが、ステージの前でわいわいやってゐた。ミツコのふたつ上の彼氏のバンドが、演奏するのを見に来たのだった。
ミツコは綿菓子を買ってゐる僕を見つけて、近づいて来た。
「ひとくちちょうだい」
ミツコが言った。僕はそういった不衛生なことは嫌だったのだが、ミツコは勝手に袋を開け、手を突っ込み、綿菓子をちぎった。白いふわふわが、口の中に消えた。ミツコはマニキュアを塗った指を舐めると、グループに戻った。バンドの演奏が始まった。僕はステージに背を向け、帰路についた。
布団で折り紙をしてゐた妹に、綿菓子の袋を渡すと、妹はすぐに袋を開けた形跡があるのに気づき、「お兄ちゃん、つまみ食いしたでしょう」と、からかうように言った。
「うるさい。買って来てやったんだから文句言うな」
僕は思わず怒鳴ってしまった。妹はびくっとなり、泣きそうな顔をして布団にもぐり込んだ。僕は放っておいた。泣くふりをして僕を驚かせてから笑顔を見せるといういたずらを最近好んでやっていたからだ。布団が大きく、上下した。
やや間があって、ぜんそくの発作が始まった。僕は、「ごめんな。ごめんな」と言いながら、妹の背中をさすった。
いつになく曇った空を
鳥の羽がまい散ったとき
パッと星降る丘の上
気付かぬうちにおり付いていた
禍福の中と呼べる出来事
そう信じ込んでいた僕の気持ちは
いつの間にか確信に変わった
君の背中追いかけて
今日も私は進んでく
君に会うたび胸が締め付けられるのは
そのくらい大好きという証です
泣きたい日は君の笑顔を思い出す
辛い日は君の努力を思い出す
君に会うたび好きが積もって
もう心に収まりきれないほど
そのくらい大好きです
伝えたいという
意思だけ強く燃え上がり
何を伝えたいのかは
全く分からない
自己承認欲求の現れでしょうか
僕には断定できない
来世は性別のない自由人
男でも女でもない人間
「お前は人間じゃない」
そんなことを言われないような
優しい世界で生き直したい
君が掻き鳴らすギターの音が 私の心をかき乱して まだ消えなくて
あの子から届いたメッセージが 誰にでも送っているようで 辟易して
それでもその方が私は好きだな とか
それでもその方が世渡り上手で 狡いな とか
きっとひとつひとつのことを深く考えすぎていて
もっとラクに考えよう って言ってくれる歌が好きで
私は私のことを許したくて
私は君のことを許したくて
あの子は私に許されたくて
みんな必死で 媚び売ってるなら嫌いって言葉が私をえぐって
ぜんぶぐちゃぐちゃに混ざって わかんなくなるけど
なにが好きで なにが嫌いで なにがそうじゃないのか それだけ
それだけを、忘れないように
だから吐いちゃえよ
愛を吐いちゃえよ
喉元で腐らすくらいなら
好きの2文字くらい
息と一緒に空気に混ぜて
君との間の空気を揺らして
君の鼓膜を震わせる
君の鼓動を狂わせる