ぼくが80年かけて見つけてきたものぜんぶ
天国には持っていけないんだね
そんなのさびしくない?
ぼくがひとつひとつ見つけていくものぜんぶ
無くなってしまうんだね
そんなのせつなくない?
ぼくがだいすきでだいすきなものぜんぶ
消えちゃうんだね
そんなのずるくない?
ぼくのたいせつな宝物ぜんぶ
忘れてしまうんだね
そんなの悲しくない?
『愛』に当てはめてていねいに
標本にしてきたんだよ
たくさんの思い出とかバラバラの記憶
かすみ草
ラジオ
紅茶とミルクの混ざるとき
ぜんぶ永遠じゃないなんて
ぼくはいつもやるせない
人生いつも白昼夢みたいに
ねえねえ
そう言って君が差し出してきたのは
ステンドグラスをバラバラに割って、
混ぜて、もう一度固めたようなお菓子
ガラスの破片のように
ところどころ尖っているそれは
外側はガラスほどではないけれど硬くて
でも、それに相対して中側は
なんとも言えないふよふよした食感で。
不思議そうな顔をして食べる僕の横で
君はそれを夕陽に翳して、
何かをみるように目を細めて、
それから美味しそうに食べていたよね。
残念ながらそれは
ステンドグラスのように
光を通すものではなかったけれど。
君はあのとき、何をみていたの?
このお菓子ってさ、琥珀糖って言うんだ
なんだか、お前に似てるお菓子だよな。
そう言って君は僕に微笑みかけた。
何が言いたいのかわからなくて
首を傾げる僕に君は、
琥珀糖を差し出して言葉を続けた。
外側はなんだか強そうにみえるんだけど
内側は実は誰よりも繊細で。
琥珀糖ってさ、自分で作ろうと思うと
何日も乾燥させて、この食感にするんだ
きっとずっとずっと我慢してきた時間が
お前を強そうに見せてるだけなんだよ。
だからさ…
何よ急にー(笑)
って話を遮ってしまったこと
まだ謝ってなかったよね。
ごめん。
僕はその先をきくのがなんだか怖くなってしまったんだ。
あの日の放課後、
君と並んで座って琥珀糖を食べた日から
僕は密かに琥珀糖作りに挑戦してるんだ
未だに上手く作れてはいないんだけど
いつか、上手く作れたら、
食べてもらうから。
その日まで待っていてね。
僕の我慢してきた時間よりも
ずっとずっと長く
大好きな君へ。
僕からの長ったらしい言葉。
真夏の蒼天 音のない飛行機曇
光に踊るカーテン
フェンス越しの街並み
誰もしらない 美しいもの
僕しかしらない 美しいもの
秋の星空 理科室の落書き
水溜りとコスモス
上向きの蛇口 水飛沫
誰も見れない 美しいもの
僕しか見れない 美しいもの
白い階段 最上階
見上げた青空 ひとりぼっち
逆光 逆光 逆光