あの日あのときあの場所で、スカート3つ、魂みっつ
最後の日へと向かう今に、誰かがホチキスか何かで繋ぎ止めてくれれば良かったのに...
スカート3つ、魂ふたつ
もう感情的には語れないけど、最後に残ったぼくの夢
ホチキス止めした楽譜をいつも抱えていた君は歌がとても上手い人で。
流れるように
なんてありふれた言葉だけれど
そんなふうに唇から歌が紡がれる。
誰かにいちいちホチキス止めするなんて面倒くさいと言われたとき、
君はこう言っていたね。
「作者の気持ちも私の気持ちもここに釘付けして、最後の日にはお客さんの目を耳を、心を釘付けするためのおまじない」
秋の葉が感傷的な風に舞う頃
なんてかっこつけすぎと笑われたけれど
そんな頃
君はスカートを風に揺らしながら
遠くへ行ってしまった。
もう君の歌を隣で聴くことは出来ないのか
なんてため息を吐いたあの日から
一体いくつの秋が巡ってきたかな。
上京してきて初めての夜。
秋の風が少し強い夜。
大通りの隅っこでギターを抱えて歌っていたシンガーソングライター。
彼女も歌詞を書いた紙をホチキス止めしていた。
何故だか
君だとわかったんだ。
ホチキス止めする人なんてこの世界にはいくらでもいるだろうけれど
あの日と同じスカートを風に揺らして去っていった
流れるように歌を歌う君だって。