また謎が深まっただけだ。滅多なことでこの言葉は使いたくないが、絶対、正真正銘、あればチャールズである。
その微笑みに触発され、無性に腹が立った瑛瑠は、おへそでお茶が今まさに沸いている状態で質問攻めだ。
「じゃあどうして私はお兄ちゃんと呼んでいたの!?」
「どうしてあなたは私をパプリと呼んでいたの!?」
「お母さまだってお兄ちゃんと読んでいたわ!!」
「あのチャールズは誰!?」
「あなたは誰なの!!」
「私は誰!!」
はいはい落ち着いてくださいと宥めるチャールズは、ぐずる子供をあやすママだ。ホットミルクを加えてくれる。そしてスプーンで蜂蜜を掬ってかき混ぜるまでの流れる所作で、瑛瑠はいとも簡単にあやされてしまった。
「そもそも、私とお嬢さまでは似ても似つかないでしょうに。」
空気が浮上したため、瑛瑠も軽口を叩く。
「そうね、どうせ私はチャールズの顔の足元にも及びませんわ。」
ありがとうとは伝え、口許に運ぶ。拗ねた口調にチャールズは苦笑いだ。そもそも髪色も眼も違いすぎますよと言われる。
そう言われて思い出す両親の顔。基本瑛瑠は父似である。そういえば、母は白髪で碧眼であった。髪と眼の色が違うと、やはり抱く印象は変わるもので。
そうしていきついた先は、母とチャールズが似ているということ。
母を疑うわけではないが――
「チャールズ。あなた、隠し子?」
世界中の
あの子と同じ洗剤を
生産中止にしてほしい
隣を通った人の匂い
その度
思い出しちゃうから
少しでも期待した自分が馬鹿だったように思う。明日、英人と何を話そうか。
「ただ、」
瑛瑠が思考を移す前に口を挟むチャールズ。
「先程のお嬢さまの予想とやらを否定するつもりはありません。」
肯定もしませんが,と間に髪の入る隙間も作らずいれてくる。
しかし、少なからず他人に話しても良いだけの内容ではあったということで。
少し道が開けた気がして、浮上する思いがする。
その気持ちに背中を押され、先はスルーした、でもずっと気になっていたことが音になる。
「チャールズは、私のお兄ちゃんなの?」
どんな答えでも瑛瑠は戸惑ったと思うけれど。
チャールズは
「違いますよ。」
そう言って微笑んだ。
秋風に揺れたロングスカート
金木犀に色づく木の葉
「この季節が終わったらお別れだね」
転校
それは君をより感傷的に見せていた
「離れるときが来るなんて」
「この街も季節もあなたとの想いでも」
想いでなんて離さなくていいじゃない
なんなら、
君の心のホチキスで僕を繋ぎ止めてくれないか?
怖い
怖い
今まできずいて来たものガラガラと音を立てて崩れていく気がする。
そんなことを頭で考えてしまっている。
言うと決心していても君を前にすると言えない。
逃げてしまう。
やっぱり怖い