今日、この日。
多くの生徒が一度はテンションをこれでもかと下げ、そして現実逃避とばかりに部室へと駆け出した。
要するに答案返却だ。
まあ、俺もそこまで良い成績ではなかったが……いつもよりは良い成績だったと言えるだろう。その要因は桜木ノアにある。
時を遡って5月後半。桜木が多くの生徒から無関心を獲得していた頃(今もそれは続いているが)、新入生学力調査という名目のテストが返って来た。
そのテストで桜木ノアという女子は学年10位内に入っていたのである。正直、単純にビックリした。勝手に平均値くらいだと思っていた。
まあ、桜木が高成績を取ったおかげでまたクラス内に賛否ができてしまったのだが、それに関しては桜木同様気にしないことにした。気にせずに桜木に教えを乞うことにしたのだった。
そんなわけで、依然としてトップクラスの成績を維持する桜木と、成績の改善が見られた俺は大して気落ちすることなく部活に向かった。
文化祭の準備を、始めなければならない。
小指をファに置くきみの指先
茶色くくすんだ僕のつま先
きみにしかわからない音の行き先
揺られる電車の終点のその先
安っぽくて薄っぺらな言葉は口先
それでも悪くない僕らの幸先
なれない笑顔に戸惑うぼくは
息をするように笑うあなたのよこで
息が詰まって笑顔になれない