雨の日の朝
窓の外の激しい雨音とけむる風景
いつもより遅くに起きてきたきみの寝癖と頬張るパン
コーヒーの匂いときみのにおい
新調した真っ赤な雨傘
ねえ、今日はどこに行こうか
金飾りがこぼれ落ちて、底に沈んでく
そんなことは、つゆ知らず
遠ざかる底に手をのばしてた
長い時が過ぎ
僕は気付く、金飾りがないことを
それはもう辛うじて、煌めきが見えるだけで
とても手の届く距離じゃぁない
まただ…
僕は過去のガラスに手をのばす
今日の金が落ちてゆくことも気づかずに
いつもおなじ、まただよなぁ…
トーラスドーナツ咥えたあなたの
口許にそっと 左手の薬指を
押し当てるけど
どっちが甘い?なんて訊いても
どうせ届かないんでしょう
どうかしてる
透過してる
ある程度の硬さがないと
刺さらない 届かない 伝わらない
すり抜ける 通り抜ける
柔らかすぎるの?
それとも穴が空いてるの?
覗き込めたらわかるのに
ううん わからなくていいから
来世は あなたみたいなひとになりたい
今はいいの あなたがいるから
来年は この指を空っぽにはしないでね
ねずみ色の空でもいいよ
夜になったら晴れるでしょう
世界が色付く音がした
単調なメロディの世界に色が付いていくのが見えた
あなたは、僕を色付く世界に連れ出した
この気持ちはなんだろう…
きっと、この気持ちに名前は付かない
世間にありふれた言葉じゃ言い表すことなんて出来ないんだ
どんな風景より、弾むようなカラフルな音がするこの気持ちには
世界が色付く音がした
きっとこの音に名前なんてないんだ