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守人たち

この星は
いつでもどこかで日がのぼる
いつでもどこかで日がおちる
そうやって
順番に朝と夜とをくりかえして
順番に朝と夜とを守ってる

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心に宿る灯火。

さぁおいで
よってたかって
なき合いながらハグしまょ。
らったった  らったった

そんな音を鳴らしながら。
のんきでいいの。
日が昇るまで
はぐをして
いつか少し前に進めたら。
つみきを積んでいくように
かっこよくなくていいから。
くりの木みたいにトゲトゲしてもいいから。
るーびっくきゅーぶのように
  他人と重ならなくていいから。
    あなたは大切な人だけと手を取り合って
    あなたの人生を選択すればいい。
    だってあなたの人生でしょう。
    あなたに選ぶ権利があるんだよ。  
    大丈夫だよ。
    『ここ』が大事なんだよ。
    僕は君の『ここ』 から見ているから。
    僕は君の為だけの灯火だから。

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手の中の思い出

いつから僕の右手は
スマホを触り始めたんだろう

"1年2組" 自分のなまえ を
大きく書いた2Bの鉛筆
オクターブが届くようになったピアノの白鍵
友達と騒いだカラオケのマイク

こんなにたくさん思い出を
持ってるはずの僕の右手は
今じゃスマホタイピング特化型

これからは僕の右手じゃなくて
SDカードが思い出を溜めてく

あなたの肌の温もりだって
僕の右手で感じることなく
SDカードに溜められてく

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私はその飴の味を知らない
ある人はその飴はいちごの味だという
別の人はその飴はレモンの味だという
この人はその飴はカルピスの味だという
どうやらその飴は人によって味が違うらしい
気になるから私もその飴を舐めてみたいけど
私にはできない、無理と言って舐めないまま
賞味期限が過ぎていく
私はその飴の味を知らない
だから、私はその飴の味を知りたい
私は恋の気持ちを知らない
だから、私は恋をしたい

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霧の魔法譚 #2

「ご無沙汰してるよ、シオン」

濃く立ち込める霧の中、街路灯の橙色の明かりは水に絵の具が溶け込むかのように照らされている。
まっ黒い影が落ちる大賢者の足元にまた一歩近づいて。

「ごきげんよう大賢者様。とても久しく感じるわ」

紫の髪飾りが印象的な着物を着た少女は、いつ以来だったかしらと小首を傾げながらほんのわずかに顔を綻ばせた。

「約百年だ、すまなかったね」
「まあ。どうしてそんなに長い間、会いに来てくれなかったんです?」

少女は大賢者を責めるように唇を尖らせる。

「私は基本的にマジックアイテムを渡すだけで、それ以外は傍観だからさ」
「わたしは会いたかったのですよ?」
「…………」
「それに会いに来るって約束もしました」

今来たからそれはノーカンと言ったら乙女失格なのだろうなと思いつつ、そうだねごめんねと謝った。感情がこもっているかいないか微妙なラインだったが、彼女は赦してくれたようだ。
けらけら、と笑い。

「それで。大賢者様は如何な用事で?」
「久しぶりに君に会いに……と言いたいところだけど、そうじゃなくてね」

大賢者は空中に手を伸ばすと、次の瞬間には水晶の球が収まっていた。
それはなぁにとシオンが尋ねると、大賢者はまあ見ていてくれ給えよと二人の目の前に差し出す。
この水晶は一種の録画再生機器として機能する。
大賢者がパチンと指を鳴らした。

「…………」

映し出されたのはファントムの大群だった。しかし普段見るようなファントムとは何やら違う雰囲気を感じる。
海、それも奇妙に凪いだ水面に影一つ落とすことなく。それはさながら海戦で死んだ兵たちの亡霊のような。
水の上を滑るようにして進むその数、

「推計で3万ほど、だそうだ」

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霧の魔法譚 #1

大賢者がそこに踏み入るのは実におよそ100年ぶりのことであった。
当時辺境だった場所は今は立派な家々が立ち並ぶ住宅街となっていた。土埃の立つ未整備の道は舗装され、空き地ばかりが広がっていた場所にはたくさんの家が建てられている。しかし大賢者にとっては哀愁を誘うものでもなく、淡々と人気のない道を選んで進んでいく。

気が付くと霧の中を進んでいた。
だんだんと煙り始めたのではなく、気が付けば視界が白く染まっていた。まるでそうと気が付かずに神社の鳥居をくぐってしまっていた時のように。或いは迷いの森の深くへと立ち入ってしまっていた時のように。
こんな風に突然現れる霧なんかは、大抵魔法のにおいがするものだ。
そしてその中心にはもちろん、魔法使いが存在するもので。

からり、からり。

聞こえてきた足音に立ち止まる大賢者。下駄の鳴らすその音はだんだんと近づいてきており。
やがて白霧の向こうから、可憐な声を笑わせながら。

「あら、大賢者様。お久しぶり、けらけら」

一人の少女が浮かぶように現れた。


***
先週まで「魔法譚」という素晴らしい企画が開催されており、僕もそこに参加しようと思ったものの、残念な文章力のせいで期間内には完成しないことが発覚。主催者であるテトモンさんに「来週まで待って!」と言ったのが先週の金曜日(つまり締切日)だったと思います。
はい。その「来週」の”最終日”にようやく投稿です。まじでテトモンさん申し訳ございませんでした!
正直言うとまだ完成してません。本作大迷走しており、今の僕には手に負えない大きさになってしまった感を大変感じます。人間が生み出した怪獣に人類滅亡エンドを喰らうみたいな感じです(は?)。
ということで書き込んでいこうと思いますが、如何せんまだ完成してないので来週以降に続きます。学期末というのも重なり途中更新がストップするかもしれませんがご容赦ください。テトモンさんもう少しだけ待って……。いくらでも謝罪しますから……。

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何度でも

飛び散る赤い魂が
全てを赤へ赤へ飲み込んでゆく
もう俺は何も出来ないって分かったから
そう言ったらあなたはそっと
俺を抱き寄せて言った

何度でも君に命を与えてあげる
ここじゃあなたはどこまでも仮初の存在
何度でも私がやり直させてあげる

僕は今日も赤い沼からあなたの救いの手に黒い世界に
引き上げられている

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風邪

風邪をひいたから
君は心配してくれたりするかな
とかって優しさ期待するから
私は甘えたがりだね