寝る気になれずにずるずる今日を引きずってしまっているのはなんでだろうって
ちょっと考えたらわかった。
あ。
今、何もかもうまくいってるようで何もかもうまくいってないからか。
鋭いナイフ 凍りつく背筋
ヒリヒリする痛みに酔う 白銀の世界
懐かしいあの季節 刃にすら温もりを感じた
白い吐息 痺れ続ける指
重なり合う手のひらは 意味を為さない
憎たらしいはずの瞬間 切先から零れた何か
泣き喚く心臓をあやして 一緒に凍えていた
ひとつ またひとつと 消えていく
踏み躙られた雪の中へ 痕も残さず
冷たいまま ひとつになる
ひとり またひとりと 消えていく
閉ざされた空の向こうへ あまりにも儚く
冷酷な銀世界 温もりの残った雫すら踏み潰して
何色に染まることも赦されず
赤く染まった指も 切先も 手のひらも 引き攣れも
例外もなく 白く塗りつぶされていく
冷気に灼けていく身体 冷たさすら恋しいのに
摩耗した感覚で 出来ることなんかたかが知れている
寒気の雪崩れ込む頭 思考回路が氷と化した
麻痺した感性でも どうしても愛おしい刃
それでも生き続ける 白銀の世界で
おはよう。
今日の君も綺麗だよ。
なんて言うわけないけれど
貴方が運ぶ風に乗って
私はゆらゆら流されていく。
ゆらゆら
貴方が歩く方へついていっては
危険から１つ守るの。
私だけじゃない
貴方を守るのは。
さぁ、おはよう。
ほらもう朝が来た。
恋敵は置いといて
貴方に挨拶を１つする。
君の“本気”がわからない
その態度がわからない
その距離感がわからない
だって他の人にも、そうしてるじゃん。
その君やまわりにとっちゃ当たり前の優しさに惹かれた私、なんなんだって話よ。
なんでもいいから好きだよとか、言っちゃうよ。
心の中で、だけど。
"夜9時にはねむい生徒”の中で山寺という生徒がいる。
山寺は2年前にここに来た中学3年生の女子生徒。
ここからは山寺の視点でどうぞ。
9時か。寝なきゃな。明日は体育あったけ？あったかな？あったか。じゃあ、体操服持って行かなくちゃ。
っていうか、今日の高田先生めっちゃ面白かったな。あんな言い方誰も笑わないわけない。
数学難しすぎだろ。南本先生ちょっと分かりにくいんだよな。話が長くて何言ってるか分かんない。字汚いし。
一ノ瀬くんは本当にカッコいい。あの汗の拭きかたとかカッコよすぎ。でも、同じこと思ってる人いっぱいいるだろうな。モテモテだもん。
よし、明日も楽しみだ。
あ！明日小テストあるじゃん。勉強してないよ。最悪だ。どうしよう。登校中に教科書とか危ないしな…。うわ～～！最悪だ！
みなさん、お気づきになられたでしょうか？
ここは、"夜9時にはねむい生徒”が集まる施設。
その名も「9時ねむ」。
夜9時には反射的にねむくなってしまうこの生徒たち。
しかしそれは世間に理解されてない。
「何でこんな時間にねむくなってしまうの！」と親に怒られてしまったり。
修学旅行で1人だけ先に寝てしまったり。
現在の時刻17:23
晩ごはんの時間。今日の料理は小籠包。みんな美味しそうに食べている。
この時間から食べないと9時には間に合わない。
これから片づけて順番にお風呂に入って歯磨きをして寝る準備に入る。
ここは100人いるため色々と大変だ。
それに3歳から18歳まで。
職員は5人。
現在の時刻20:45
ほとんどが自分の布団を敷いていつでも寝れるようになっている。
「さあ、みんな、寝る時間です。良い夢を」
職員の鈴木は言った。