夏になって君は変わった
あんなに好きだった地雷メイクをやめて
清楚でおしとやかになった
浴衣が似合うようになってしまった
渋谷にも秋葉原にも行かない
僕だけなんにも変わらず
変わっていく君をただ見つめていた
トカゲなのにトカゲじゃない
謎めく君は私の心を見事に射止めた
四六時中君のことを考えて出た答えは
「あなたは誰」
しっぽを切っただけじゃ君のことは分からない
ただし
そんなことを考えている私は
もう
君の虜
アルバムを見返していると
思い出が蘇ってくる
まるでその時に戻ったように
辛かったことも
嬉しかったことも
後悔も
楽しさも
全部無駄じゃなかったんだと
実感できる
さぁ、次の思い出のページを
作っていこう
コンコン。
私は先生の部屋の扉を叩く。
『どうぞ。』
中から少し冷たい声が聴こえる。
「私。」
そう言いながら、扉から顔を覗かせる。
『あぁ。君か(笑)。』
さっきの冷たい声が嘘かのような優しい声で言う。
「ねぇ、私だと思ってなかったからだと思うけど、すっごい冷たい冷えきった声だったよ(笑)?」
『しょうがないだろ……。』
先生は少し恥ずかしそうに俯く。
「先生も私と同じで好き嫌い激しいもんね(笑)。」
『で、何しに来たんだよ〜。』
「ほら、約束。そろそろ魔法見せてもらおうかなと。」
『どんな魔法をご所望ですか??』
店員さんのようにそう言うと、貴族のようにお辞儀をする。
「今日は暑くないのがいいな(笑)。」
『そんな都合の良い魔法なんてないよ(笑)。薬学にはね!』
「うん、なんとなくそうだろうなって思ったのよ(笑)。いつものやつ見せて?」
『おう。今日は材料を変えてやってみようか。』
「色が変わったりするの?」
『それは見てからのお楽しみ(笑)。』
先生はイタズラに笑いながら、少し大きい釜のような鍋を取り出す。
『アルが来る前に済ませるぞ(笑)?』
私は手伝いをしながらいつもの魔法(材料を変えているが…。)を見ながら、先生の細い指を見ていた。
いつもとおなじように綺麗な魔法と、先生の美しさをこのまま記憶の中で冷凍保存してしまいたいと思った。