「ふーん」
グレートヒェンは何だか面白そうな顔をする。
そしておもむろにナツィに近寄った。
「ねぇ、”ナハツェーラー”」
珍しくグレートヒェンがフルネームで呼ぶからなのか、ナツィは微かに身じろぎした。
「いっそのこと、私と一緒に逃げてしまわない?」
グレートヒェンは不思議な笑みを浮かべながら続ける。
「同じ”人が嫌い”という者同士、人間達から逃げてしまいましょうよ」
2人であちこちを転々とね、と付け足しながらグレートヒェンはしゃがみ込む。
「もちろん、生きていくために多少は人間と接する必要があるのだけど」
ふふ、と笑ってグレートヒェンは続けた。
「それでも私達は決して誰かの物にはならないわ」
あ、お前は私の物になってしまうのだろうけど、とグレートヒェンは補足する。
「…さて、どうかしら?」
グレートヒェンは立ち上がりながら言った。
「お前…この誘いに乗らない?」
そう言ってグレートヒェンはナツィに手を差し伸べた。
いつかその時が来たら、私は伝えられるだろうか
真っ直ぐなあなたの瞳を受け止めて
きっと叶わない想い
いいえ、伝えたいの。
わずかな望みも捨てたくない。
でも無理よね。
大丈夫。
ただ、
はっきりと、
あなたに言ってもらわないと、
2年分は捨てられない。
区切りをつけたい。
次に進みたい。
きっと言うわ。
震えながら、
あなたの瞳を真っ直ぐ見て。
きれいな何かが
きたない何がが
とてもとても大切な気がしたそれを
救いあげる
今日も僕は人間です
なんで伝えられないんだろう。
こんなに好きなのに。
嫌われるのが怖いから?
フラれるのが怖いから?
変に見られるのが怖いから?
でも伝えないと何も始まらない。
伝えないと絶対後悔する。
その勇気が自分を変えるんだ。
謝るのは
怒りの確認作業じゃないよ。
「あなたに会いにいく理由がほしい」
そう伝えてしまったら、もう待ち合わせの理由は無くなっちゃうぜ。