「これで1つ」
グレートヒェンは一息ついて言う。
「これをあと9個位、森の中に仕掛けておくのよ」
そう呟いてグレートヒェンは先に進もうとしたが、ふとナツィの方を振り向いた。
「あ、お前、そこ歩く時は気を付けるのよ」
この術式は精霊みたいな大きな魔力の塊に反応するから、とグレートヒェンは続ける。
「お前みたいな人工精霊から作られた使い魔でも引っ掛かるかもしれないわ」
分かったかしら、とグレートヒェンは首を傾げる。
「分かってる」
ナツィは適当にそう答えた。
その様子を見て、グレートヒェンは進行方向を向いて歩き出した。
ナツィもそれに続いて行った。
2人はその後も森の中に罠を仕掛けていった。
途中、くだらない会話をしたり、一休みしたり、気になる場所の調査をしたりしながら、のんびりと森の奥の方へと進んで行った。
最後の罠を設置し終わった頃には、もう太陽はすっかり高いところに昇っていた。
午前三時の氷食のように
毒を喰らって眩暈に廻る
私の意識の及ばぬ場所で
細胞たちは夢を見ている
言葉ばかりが口を突いて
舌は縺れてなお蠢く軽薄
自我の在処を盲目に信じ
ガラス越しに揺蕩う残滓