布団より足先の冷える、ある夜半。
赤ペンの紙に擦れる音がする。
書いた直線、×印。
こんなものか、
とあざ笑う。
布団より足先の冷える、ある夜半。
怒りは明かりに溶けてゆく。
もう寝なさいと声がする。
指先だけがあたたかい。
布団より足先の冷える、ある夜半。
どこにも私は、いやしない。
私を私と認める君は
もうどこにだって、いやしない。
それの 答え
以前
人の記憶で いちばん早く消えるものは
声 だと聞いた
気づいたら 耳から離れて 放たれていく
あの人の声は
もう思い出せない
あの人は もう触れられなくて
会えなくて 見られなくて
遠くへと行ってしまった 雲の向こうに
だけど まだ覚えている
あの人の書く字 香り 笑顔
今でも頭のどこかにくっきりと
あの人はあの日のままで残っている
私が忘れたら
あの人は初めて亡くなるのだろうか
それともまだ 他の人の中に
あの人はちゃんと生きているのかもしれない
忘れない 亡くならせるものか
それ は 「いのち」
君は 今どうしているの 僕のことは覚えている そう信じたい でも 現実は
そんな単純じゃない あなたの 僕の記憶は あの星の様に 消えていくのだろうか
私は また"あの人の事を知らなかった私" に
戻らなきゃいけないのかもしれない。
あの人の事を知りすぎてしまったのかもしれない。
本当は もっと知りたい。
見ていたい。
聞いていたい。
そんな風に私がぐるぐる考えていても
あなたはきっと何とも思わないんだろう。
言葉にできなかった、なにも浮かばなかった。
それでも頷いてくれた、伝わってますよと言ってくれた。
また貴方を夢にみて
強ばった身体のまま目覚めて
まだ
あの人は気づかない
そのまま
いつかまた眠るまで
僕にとって君は『好きな人』
君にとって僕は『大切な人』
同じようで同じでは無いその言葉に胸が痛むのを感じたが、僕はそれに気付かぬふりをして今日もまた君に笑いかけるんだ
それが
なくなった後を誰も体感しない
なくなった先も分からない
誰かが覚えててくれるなら
誰かの記憶に残ってるなら
それはまだ生きている、らしい
最後の誰かがそれを忘れて
記憶がぷつん、と切れたときに
それは初めて亡くなる、らしい
それが居なくなった後も
その先に向かう場所も
分からないから だから
それは面白い、らしい
それは一人につき一つで
案外儚いものだから
それは美しい、らしい
それの名前は「 」という、らしい