どさくさに紛れて
冷たい夜が肺ってきた
そのまま息を止めて二十八秒
溜め息として破棄出された夜は
より一層黒さを増して
弱い星を塗り潰してゆく
不覚、不覚
嘘ばかりつき続ける貴方
そこには何か私の知り得ない理由が
あるのかもね
貴方を包み込む「何か」になれたらな
ま、嘘ですけどね...
真夜中に 布団から
這いずり出る気配
机の上 エンピツ
掴んで 顔を出す
眠れなくて 君のこと夢に見るため
文字に起こすメロディ
朝起きたら イマイチなテガミがイチマイ
枕の下で潰れていた
朝起きたら イマイチな期待がヒラリ
頭から落ちていった
出鱈目メトが私の指針
触れられて速くなるなら
包まれて落ち着いたり
私いちばんの正直者は
頼ってないと生きらんないね。
指をさして片目進行
お茶目な振りして行ってやるんだ。
YAPPARI、貴方じゃなきゃ、バカミタイ
誰も笑わない話、君は手を叩いて笑ってくれる
––––お稚児さん、お稚児さん。あなたのその手に抱かれた、わたくしも一度見せ給え
夕立明けの草藪は、紫いろの空間に土の香りを沸き立たせていた。青々しさも慎ましくなった葛の中、淡いイロをした少年が一人横たわっている。薄い紅を引いた唇をゆっくりとひらき、掠れた声で言う。
「いやです。わたしはもう、命など無いのです。もはや花は枯れ、秋には散りゆくさだめなのです」
葛の蔓は少年の四肢をつかまえて、首筋に雨の露を這わせている。少しずつ奪われる体温と、暮れる陽だけが目の前に有った。しばらくして見え始めた星空に、少年は何もかもが嫌になって、その目をとじた。
––––お稚児さん。あなたのその手に抱かれた、白秋の花、枯れし花、ここにも一度置き給え
目を開けると、朝露きらめく草原に陽が昇るのが見えた。自らを縛っていた葛は跡もなく、荒れた山肌へと変わっていた。躰の芯から戻っていく感覚が掌に達するころ、少年はその中に花の形を感じた。
「これは呪いだ……。葛がわたしに呪いをかけたんだ」
ふと思ったことを口にすると、声の掠れがなくなっていた。花を失うべき少年の永久の妄執が、音を立てて動き始めた。
身近にあるものは輝きを失って見えるから
きみにはそばにいてほしくないのです