言葉にしようとしないときに零れた言葉ほど
偽りのないものはない。
僕は、言葉にしたかった時ほど、後悔してしまう。
ラジオの周波数を合わせることと、路地裏を歩いて名曲喫茶を探すことは似ているかもしれない。知る人ぞ知る居場所、そんな深夜ラジオ番組を見つけられた時は幸せだ。
黎らしいなと師郎は苦笑する。
まぁそーだろーねーとネロはうなずく。
「だって自分らの秘密を握っている人だもん…あんまり関わろうとは思わないだろうなー」
そう言ってネロはわたしの方を見た。
「だから”そういう人”に関わって来られるのはちょっとね~」
そして彼女は嫌みっぽく笑った。
「おいネロ、何か邪悪なモノが出てんぞ」
何やら黒いものがチラついたネロに対し、耀平はそう言って諫めた。
言われた側のネロは、はいはい、とそっぽを向いた。
「…ま、アイツは元々あまり他人と関わらないからな」
耀平はわたしに向き直る。
「自分の事を知られるの好いてないし」
そう言いながら耀平は笑った。
「あ、でも俺らはアイツの事結構知ってるじゃん」
師郎は思い出したように言った。
「アイツの好物とか、入ってる部活とか」
「いやそこら辺はお互い様だから」
耀平は真顔で返した。