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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 7.サイレントレイヴン ⑩

くる、とゆっくり彼は振り向いた。
その目は灰色がかった綺麗なアイスブルーに光っている。
「…!」
少しの間沈黙が流れたが、振り向いてやっと後ろに誰かいるのに気づいたのだろう。
彼はぱっと向こうに走り出した。
「あ、待って!」
急に走り出したものだから、思わずわたしは呼び止めようとした。
「ちょっと…」
少し走った所で彼は立ち止まった。
「”サイレントレイヴン”…」
どうして逃げるの…?と言おうとした所で、彼は何か呟いた。
「…長い」
「へ?」
彼は静かに振り返った。
「もう1つの名前は長い」
だから”レイヴン”で良い、と言う彼の目は冷たい。
あ、そう…とわたしは言いかけたが、ある事に気付いた。
暗闇の中、いつもと同じパーカーを着た彼の腕の中に何かいる。
わたしは思わず呟く。
「…ネコ?」

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怖いのは、

自分が消えてなくなってしまうのが怖いんじゃなかった。

君が私より先に消えてなくなってしまうのが怖いんだよ。