あの人のやさしい言葉を聞いて
好きになった。
大好きになった。
やっぱり嘘じゃなかったんだなって。
「今日は頭の回転が遅いだけ」
そんな言い訳したところで
何にも得にはならないんだワ
思考が錆び付いたら そこでしゅーりょー
オーバーヒートするまでフル回転させてみろ
何だいお坊ちゃんお嬢ちゃん、好き好んで茨の道なんか選んで。
そんなもん選んだってただただ血を流すだけだぜ。終わりは見えず、行く手を阻むはカサカサした無数の棘と蔓ばかり。
そんな所よりこっちに来なよ。深くて汚い泥の道さ。
目の前に道は無く、歩んできた道程は振り返る頃には溶け消えて、どこから来たかも分からない。
足元はどす黒く隠され、何を踏んでいるかすら定かじゃない。
纏わりつくのは干からびて剥がれるだけの泥どろばかりで、名誉の負傷に酔うことすら許されない。
許されるのは、ただ溺れぬように不毛に歩き続けることだけさ。
そんなハードモードの人生より、ずっと狂気的な地獄が味わえるぜ。俺もそろそろ退屈で立ち止まりたくなってきた頃なんだ。道連れの一人でもいれば、あと数歩くらいは立って歩き続けられる気がするんだよ。
これは高校の頃、ある日の話
次の倫理の授業で「アイデンティティの確立」というテーマでディベートを行うことになった。
それに先だってヒントとして
「他者は自分を映す鏡だ」
と教師は言った。
「自分は他者を映す、他者は自分を映す」
そういうことらしい…
課題とはいえ、家に帰ってもなかなかその言葉が頭から離れなかった。
だって理解が出来なかったから…
他人は何を考えられるかわかったものじゃない…
いつ自分を攻撃してくるかわからない…
他者という言葉にそう怯えることしかできない自分も嫌で仕方なかった。
考えることをやめたかったけど課題だから丸っきり考えるのを辞めるわけにもいかず考えはグルグルと同じような所をめぐり始めた。
ピコンッ
そんな時にインスタの通知がなった。
ストーリーがいい加減溜まってきたらしい、
さっさと見ろという例の通知だ。
課題に追われていたとはいえ久しぶりにこんな通知に出会った。それでも見る余裕はないのですぐにスマホの電源を切った。
その一瞬、スマホの黒い画面から目が離せなくなった。
電源を切ったスマホは鏡同然だ…
自分がよく打つ文字の形に指紋がベッタリと付き
上部には醜い自分の顔が映る。
スマホがいつもレンズとフィルターを通して自分を美化してくれていたことに改めて気づいた。
美化された写真にいいねがついていく様は
この写真が自分の現実から離れていっていることをいつも雄弁に伝える。
所詮他人は他人でしかない
私の1面しか見てないけど褒めたり貶したりする
けどそれでいいんだ…
他人は歪んだ鏡だ
その歪みは自分を美しくも醜くも映す
スマホよりもよっぽど人間らしい
でもそこに誰の意思もない
だから私は集団の中で私でいられる
初めてわかった
これがアイデンティティなんだ!
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次の倫理の授業はこんなみんなの承認欲求と自己嫌悪がおぞましく渦巻いたディベートとなり、私がポエムを始めるきっかけになったのはまた別のお話…
初めて書いたポエムのアレンジです
良ければそっちも読んで
ちょっと喧嘩した
ほんとに少しだけ
「なんでそんなこと言うの」って
哀しげな君の瞳に耐えられなくて
「わかんないよ」って逃げた
ちょっと喧嘩した
ほんとはたっぷりと
「僕だって」「私の方が」の応酬になって
「疲れたね」って離れた
会えない分
話せない分
こんなにいつもがつまらなくて
味気ないんだってわかった
会わない分
話さない分
こんなに私が本気で
君はどうなのって思った
ちょっと喧嘩して
また仲直りして
そんな上手くはいかないかもね
だけどお願い
また見放して
再認識して捕まえて
ちょっと喧嘩して
また仲直りしよう