何だいお坊ちゃんお嬢ちゃん、好き好んで茨の道なんか選んで。
そんなもん選んだってただただ血を流すだけだぜ。終わりは見えず、行く手を阻むはカサカサした無数の棘と蔓ばかり。
そんな所よりこっちに来なよ。深くて汚い泥の道さ。
目の前に道は無く、歩んできた道程は振り返る頃には溶け消えて、どこから来たかも分からない。
足元はどす黒く隠され、何を踏んでいるかすら定かじゃない。
纏わりつくのは干からびて剥がれるだけの泥どろばかりで、名誉の負傷に酔うことすら許されない。
許されるのは、ただ溺れぬように不毛に歩き続けることだけさ。
そんなハードモードの人生より、ずっと狂気的な地獄が味わえるぜ。俺もそろそろ退屈で立ち止まりたくなってきた頃なんだ。道連れの一人でもいれば、あと数歩くらいは立って歩き続けられる気がするんだよ。