僕は一人では何もできない
他人を頼らなければ何もできない
親には自分で決めてやれとか言われる
人に頼りたい
頼れる人は大人になるたびに減っていく
一人で生きていかなければいけない
まだ僕は子供こんなことを心のどこかで思っている
だから人にばっか頼る
でも一人でなくても友達などと協力も大事
一人でできるところまではやろう
もうだめだと思ったら他の人を頼もう
もう思いつかない
だから他の人の協力も借りよう
底のぬけた目蓋から
気化した感情が氷塊となって
茹だる夜長を灯している
夏にしたためた恋文が
並木道に散り積もると
秋、秋、秋、もう飽々だ
「少しこれお借りしますね」
耀平が鞄を見せつつ言うと、女の人はあっはい、と答えた。
「それじゃ、行こうか」
耀平がそう言って女の人に背を向けると、両の目を黄金色に光らせた。
こうしてりいらちゃん探しは始まった。
でも人探しは一筋縄では行かないものだった。
何しろ花火大会の会場は大勢の人でごった返しているのだ。
”人や物の行動の軌跡を見る”コマイヌにとっては少々不利な環境だ。
それでもコマイヌやネクロマンサーは何不自由なく追跡できているみたいだが。
また、りいらちゃんと謎の人物の移動がかなり不規則らしいことも捜索を阻んでいた。
まるで追いかける者を撒くように移動しているらしい。
黎ことレイヴンも捜索を手伝う中、わたし達は追跡相手に翻弄されていた。
「ねぇ…これ、見つかるのかな?」
わたしが思わず呟くと、隣を歩く師郎は見つかるさ、と返す。
「アイツらが人探しをして見つからなかったことはないからな」
大丈夫だって、と師郎は笑う。
そうかな…とわたしが前を向くと、離れた所に見覚えのある少女がいた。
方位磁針が自分のアイテムボックスに入っていなかったとしたら、人は太陽を見るだろう。だが、地図を持っていなかったら、人は波に飲まれてしまうかもしれない。
「何だ、能力関係の知り合いかー。ちょっと待ってて、すぐ呼んでくるね」
「あ、はい……」
彼女はまたあの部屋に戻って行った。どうやら危機を脱することができたようだ。その場に座り込み、大きく息を吐く。ああ緊張した。
さて、偶然見かけたあのシーンのお陰で信用を勝ち取れたわけだが、当然俺はあいつの事なんか知らない。呼んでもらったとして、どうしたものか……。
そう考えていると、またあの部屋の扉が開き、最初に目撃したあの少年が現れた。こっちに来たが、顔も知らない俺を見て不思議そうにしている。
「あのー……どこかで会いましたっけ?」
少年が声を潜めて尋ねてくる。
「いや、初対面。ちょっと危機的状況を脱するためにダシにしましたごめんなさい」
「あっはい。で、あんたは誰でどんな用事なんです?」
「あ、はい、えー、俺は見沼依緒。ミヌマとでもヨリオとでもイオとでも好きなように呼んでもろて」
「ん、よろしくっす。俺は岩室弥彦」
「あー……すまん。さっき出鱈目並べたせいで、俺は君のことをトムと呼ばなきゃ怪しまれるかもしれないんだ。ちょっと話を合わせてくれ、トム」
「何故トム……まあ了解」
いろいろあったが、どうにか接触には成功した。ようやく本題に入れそうだ。
「それで、用件なんだが……」