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ひとり

ころころ変わる春の天気。
桜が咲いたねって呟いてみて
1週間後には
桜が散ったねって呟いてみる。
ハートは3つ。
寂しさを埋めるためが
寂しさを生んでいる。
繋がりが恋しくて
繋がりが疎ましい。
でも、冷たいところで
寒いところで
小さく息を吐く私を
私は、結構好きだったりする。

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籠蝶造物茶会 Act 7

「随分変な所にあったんだね」
「まぁそうね」
ピスケスはそう言ってぬいぐるみの頭を撫でた。
「コイツを連れ出す時はいつも大事にしてるハズなのにねぇ…」
どうしてかしら、とピスケスは首を傾げる。
「何かあった、とか?」
かすみはふと呟く。
「何かって何よ」
抽象的ね、とピスケスは笑う。
「だってそうとしか考えられないじゃん」
かすみがそう言うと、皆は黙り込む。
「…」
暫くの沈黙の後、かすみが口を開いた。
「…ナツィ、探しに行く?」
「探しに行きたい!」
キヲンはにこにこしながら手を挙げる。

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Trans Far-East Travelogue⑮

京王ライナーに揺られることおよそ25分、夕陽が反射する多摩川を渡る
「分倍河原に関戸の古戦場…この多摩川を挟んだ両岸だったよな…『夏草や兵どもが夢の跡』って俳句が似合うぜ」と呟くと「川を挟むのは合戦の常套だったけど、ここが鎌倉打倒の激戦地…今となっては見る影もないね」と言って頷いている
山梨の丹波山から流れて羽田に注ぐ大河を渡り聖蹟桜ヶ丘の駅に着く
そしてすぐに本日の目的地、高幡不動に着く
清和天皇勅願の元建立された由緒正しい寺の境内に入った途端俺のスマホが鳴り響く
「京八じゃなくて与瀬の駅で明日の朝待ち合わせにしよう。上に1人待機させる」「言わんとすることは分かった。幸い、俺達2人とも服装は動き易い上に運動靴履いてるし上着もあるから彼女に相談してOK出たらそれで大丈夫だ」と告げ,ゴーサインが出た旨を伝えて電話を切る
そして、彼女が好きな土方歳三の故郷を2人で3時間程歩いて巡った後再び京王線の駅に戻り,駅そばの駆けつけ一杯で軽い夕食を済ませて高尾山に向かう
清滝の駅の右にある登山道に入ってすぐ、「久しぶりに登るな…緊張するぜ」と呟くと「高尾山って標高低いんでしょ?そんなに緊張するの?」と返されるが「小6の時に見た初日の出以来の夜登りなんだ。頂上の朝日は言葉じゃ言い表せないくらい綺麗なんだよ。まあこんな綺麗な彼女が、筑紫の女神が側にいるから足踏み外さないよう気ぃつけねえとな」と言って笑うと「私、セイレーンじゃないよ」と言って彼女も笑い出す
皇居のある千代田区、我が故郷の新宿区に次ぐ東京第3の大都会,八王子市の街明かりが背中を照らしてくれる中、夜の1号路をひたすら登り、山頂を目指して歩き出す