ぱち、と目を覚ますと見慣れた天井が見える。
暫くの間そのままでいたが、やがて誰かの気配を感じて窓の方を見た。
「よぉ」
そこにはカラスが留まっていた。
「随分と寝てたみたいじゃないか」
そう言って、カラスはケタケタと笑う。
「…」
畳の上に寝転んでいる黒髪の人物は、静かに起き上がった。
部屋のゼンマイ時計を見ると、午後2時を指している。
「どうだいお前、よく眠れたかい?」
夢でも見てたのか?とカラスは笑いながら言う。
「…別に」
見てたとしても忘れてるよ、と黒髪の人物は素っ気なく答える。
「そうかね?」
お前がそう言う時は大体…とカラスが言いかけた所で、黒髪の人物は立ち上がった。
「…おっと、どこへ行くんだい?」
部屋の出入り口へ向かおうとする黒髪の人物を、カラスが引き留める。
「ちょっと散歩」
あんまりいい寝覚めじゃないから…と黒髪の人物は部屋から出ようとする。
「じゃあオレ様も連れてってくれよ、黒羽(くろは)」
お前1人じゃ心もとないだろ?とカラスが言うと、黒羽と呼ばれた人物は窓に一瞥もせずこう言った。
「好きにしたら」
カラスはその答えを聞くと、バササッと黒羽の肩に飛び乗った。
「へっへっへ」
やっぱりこの場所は落ち着くなぁとカラスは笑う。
黒羽はカラスがちゃんと肩の上に乗ったのを確認してから歩き出した。
あなたは、わたしは、産まれてきたのには
理由があります
悲しみを喜びにかえ、困難を越え、
産まれてきた意味を探す旅を今、しているのです
一緒に生きましょう
これは過去に出した「あいうえお作文でポエムを作る」の進化系です。
明日もきっと笑顔になれる
いつか僕らは幸せになれる
俯いていては何も始まらない
エンドロールを作るのは自分自身
終わりのない映画を始めよう
「頑張らなくてもいいんだよ」
君が僕にくれた言葉
苦しくたって 辛くたって
元気になれる一言だ
こんな僕を気にかけてくれる君に
「さよなら」なんて伝えたくないよ
正直な思いを君に告げた
「ずっとそばにいて欲しい」
「絶対大切にするよ」と
それぞれの道を歩む
例え話の無い世界
力の限り僕は叫んだ
「続きを君と作っていきたい」
手と手を取り合って僕ら
遠き未来の彼方へ
何度も彷徨ったっていい
ニコニコ笑っていられるなら
塗り絵のような空想の世界
「ねえ、どんな気持ち?」君はそう言った
のんびりした声で僕はこう言った
「馬鹿げたような世界だけれど
まるで昔君と見た世界に似てる」
皆が皆して「おかしな世界だ」と
「無謀な世界だ」と口々に言った
めいいっぱいの愛を君のために
もっとたくさんの旅を君と共に
約束の場所へと走り出してく
ゆっくりでもいいから進んでいたいんだ
呼ばれたって僕はもう止まりはしない
楽な感情は全部どこかに捨てて
リュックに詰めた思い出を頼りにして
ルートを決めてただひたすら歩く
零から始めたい君との世界
ローペースだっていい
笑っていられるなら
Wow… いつまでも…
nn…
明日もきっと笑顔になれる
いつか僕らは幸せになれる
俯いていては何も始まらない
エンドロールを作るのは自分自身
終わりのない映画を始めよう
Yeah.
伝えられない想いだけが膨らんでしまうよ
前を向こうとして 忘れようとして
そんなんじゃだめだって誰かが言う
まだ若いものね 気まぐれかもね
そう思えたら楽なんだろうね
こんなにも胸を締めつけられて
ぐっと喉を掴まれるのは初めてなんだ
伝えたいことばかりが絡まってしまうよ
もうやめたくて 諦めたくて
でもきっと頑張れると誰かが言う
まだ青いものね 気のせいかもね
そう思えたら楽なんだろうね
こんなにも頭を支配されて
心をぐちゃぐちゃにされたのは初めてなんだ
春は嫌いだ。
出会いの季節、別れの季節、なんていう
ちょっとおしゃれな理由ではない。
春は彼がやってくる。
彼のせいでぐちゃぐちゃになってしまうから
綺麗な桜は見えないし、いつだって鼻声。
泣いてるの?って聞かれることも日常茶飯事。
薬なんか効かない。辛い。
春を全力で楽しめたことがない。
「今年はちょっと早めに来ちゃった」
なんて嬉しくない。帰ってほしい。
二度と来ないでほしい。
毎年毎年そう思うのに、彼は今年もやって来る。
「花粉注意報」
その音色と共に。
歩き出そうとして、身体に力が入らなくなっていることに気付いた。流石に2度も怪獣化した後にあれを呼んだのはやり過ぎだったか。とりあえずその場に尻もちをつくように座り、体力の回復に専念することにする。それはそれとして、犯人も捕まえておかなくっちゃならない。
「『駿竜』、来ませい」
4本足で立つ、体長4mほどの翼の無いドラゴンが俺の前に駆けてきた。
「連れて来い」
さっきまで砂嵐があった場所を指して命ずると、駿竜は目にも留まらぬスピードでそっちに向かって駆けて行き、僅か数十秒で戻ってきた。口には異能者らしき俺と同世代くらいの少年を咥えている。どうやら気絶しているらしい。砂鯨の直撃でも受けたか? 生きてるってことはそれは無いか。
「よくやった」
駿竜に手招きして身を伏せさせ、背中の上に這い上がる。
「俺の足跡を辿れ。急がなくて良い。あの偉そうな女王さまに達成報告でもしてやろうじゃねえか」
俺の命令に頷き、駿竜が駆け出す。急がなくて良いと言ったのにその速度はなかなかのもので1回背中から転げ落ちたが、それで反省したようで、無事にのんびりと引き返すことができた。
足跡をたどってあの女王さまと出会った場所に向かうと、そこには誰もいなかった。あいつが呼んだ水の跡すら残っていない。
軽く周囲を探してみると、水でできた矢印が等間隔に浮いている。
「あンのチビ…………こっちから出向けってのか。駿竜、悪いがもう少し歩いてもらうぞ」
指示を出すと、駿竜は短く喉を鳴らし、矢印を辿って歩き出した。