歩き出そうとして、身体に力が入らなくなっていることに気付いた。流石に2度も怪獣化した後にあれを呼んだのはやり過ぎだったか。とりあえずその場に尻もちをつくように座り、体力の回復に専念することにする。それはそれとして、犯人も捕まえておかなくっちゃならない。
「『駿竜』、来ませい」
4本足で立つ、体長4mほどの翼の無いドラゴンが俺の前に駆けてきた。
「連れて来い」
さっきまで砂嵐があった場所を指して命ずると、駿竜は目にも留まらぬスピードでそっちに向かって駆けて行き、僅か数十秒で戻ってきた。口には異能者らしき俺と同世代くらいの少年を咥えている。どうやら気絶しているらしい。砂鯨の直撃でも受けたか? 生きてるってことはそれは無いか。
「よくやった」
駿竜に手招きして身を伏せさせ、背中の上に這い上がる。
「俺の足跡を辿れ。急がなくて良い。あの偉そうな女王さまに達成報告でもしてやろうじゃねえか」
俺の命令に頷き、駿竜が駆け出す。急がなくて良いと言ったのにその速度はなかなかのもので1回背中から転げ落ちたが、それで反省したようで、無事にのんびりと引き返すことができた。
足跡をたどってあの女王さまと出会った場所に向かうと、そこには誰もいなかった。あいつが呼んだ水の跡すら残っていない。
軽く周囲を探してみると、水でできた矢印が等間隔に浮いている。
「あンのチビ…………こっちから出向けってのか。駿竜、悪いがもう少し歩いてもらうぞ」
指示を出すと、駿竜は短く喉を鳴らし、矢印を辿って歩き出した。