「き、急に逃げろって言われても…」
わたし、何が何だか分からないし…とわたしはこぼす。
「とにかくな」
耀平は一息ついてからわたしの目を見る。
「お前、さっさとこの場から逃げろ」
絶対に後ろは見るなよ、と耀平は付け足しつつ言う。
「…どうして?」
「どうしてもこうしても、今は説明してる暇はないんだ」
だからさっさと逃げろ、と耀平はわたしに後ろを向かせる。
「おれ達の事は大丈夫だから、あんま気にすんな」
耀平は神妙な顔でわたしの背中を押した。
「え、何で…」
わたしがそう言いかけた時、ぐはっという声と共に小柄な少女が路地の角から転がり出てきた。
「ネロ‼」
わたしが言うよりも早く、耀平がネロの側に駆け寄る。
「アイツ…前より強くなってやがる」
ネロがそう呟いた所で、路地の奥から楽しそうな笑い声と共に白い少女が現れた。
「”前よりも強くなった”のは、他の人の異能力を”頂いた”から」
いつものことよ、と少女は笑顔で言う。
最近、声が出ません
でも、誰とも話さないから
大丈夫です。
最近、部屋に籠りきり
でも、誰も気がつかないから
大丈夫です。
最近、やたら生きるのが辛いです
でも、誰にも必要とされてないから
大丈夫です。