表示件数
0

Trans Far East Travelogue58

南千住,三河島と来てついに日暮里に着いた。
「ここ,降り立ったのは何年振りだっけなぁ」そう呟くと嫁が目を丸くして「えっ?東京23区の人でもそんなに長いこと来てないの?」と訊いて来た。
「そうなんだよなぁ…幼い頃はそこの出口横のファミレスで母さんと昼食べながら京成や常磐・東北線の電車,それから神田の先あたりから伸びてる新幹線の地下区間が終わって地上に出てくる場面も見えるから連れて来て貰ってたけど,小2くらいから来ることは無かったね。まぁ,海外行く時にスカイライナーで通ったことはその後も何度かあるけど」と返すと嫁は「でも,どこへでも簡単に行って思い出作れるから東京23区の人って羨ましい」と言ったので「でもまぁ,東京って山手線の駅と私鉄のターミナルが繋がってて,その私鉄もほとんどが地下鉄と直通してるから最寄りの地下鉄や山手線の駅の立地によって特定の方向にある場所や路線に行く機会が必然的に増えるんだ。俺の場合は大江戸線と新宿線が最寄りだから上野が近いので京成スカイライナーで一気に成田空港へ、新宿も近いから多摩・横浜・湘南・箱根方面にも結構行く。また三田線に乗り換えれば羽田空港にも気軽に行けるよ。でも,浅草に出るのは言う程便利ではないし新宿発の特急も少ないから日光は行ったことない」と返すと「だから,都内でも一部地域は空白で子供の頃は行ったけどけどそれ以来は行ってない場所もあるってこと?」と嫁が訊いてきたので「正解さ」と答えて入線して来た『走るレンジ』ことE235系に乗り込み、内回りで世界一の大ターミナル・新宿を目指すことにした。
いつぞやの阿波踊りの日以来となる夜の山手線から青春の音がする。

0

緋い魔女と黒い蝶 Act 7

「ナツィ!」
グレートヒェンがそう叫ぶ頃、ナツィはどこからともなく大鎌を出して上から飛び込んできた、“それ”の剣を弾いた。
「テメェ」
「…」
そこに立っていたのは橙色の髪をなびかせた少女だった。
「出やがったな、ホムンクルス!」
ナツィがそう怒鳴ると、少女は魔術師の手先かと呟く。
…と、どこからともなく矢が飛んできた。
「!」
ナツィは思わず後ろに飛んで避ける。
矢の飛んできた方を見ると、離れた茂みから短髪の少年が弓を構えていた。
「他にもいるのか!」
ナツィはそう言うとグレートヒェンにおい!と呼びかけた。
「他の魔術師も呼んできてくれ‼︎」
奴ら、他にもいる!とナツィは声を上げる。
グレートヒェンは黙って頷くと、その場から走って離れた。
「…」
ナツィは大鎌を相手に向かって構え直す。
そして相手のホムンクルスに向かって駆け出した。