「今回の依頼は逃げ出したホムンクルスの“捕縛”よ」
だから、倒す必要はないといつの間に起き上がっていたグレートヒェンは続ける。
「…」
ナツィは黙って手に持つ大鎌を消す。
「今だ」
トラウゴットがそう呟くと、ドロテーと共に立ち上がって逃げようとした。
しかし、2人の前に藤紫色の髪のコドモが立ち塞がる。
「あら」
どこへ行くの?とそのコドモは2人に笑いかける。
「…間に合ったか」
藤紫色の髪のコドモの後ろから黒髪の少年が走ってきてそうこぼす。
「メフィ、ヨハン」
グレートヒェンがそう声をかけると、メフィは小さく手を振った。
「さぁ、大人しく捕まりなさい」
脱走ホムンクルスども、とメフィは目の前の2人に詰め寄る。
トラウゴットとドロテーは諦めたように座り込んだ。
「この子は額に生えているからうちの子じゃない」
エメラルドがそう言うのを見て、ルビーはえーと呟く。
「じゃあ他の一族で行方不明になってるメタルヴマがいるとか、聞いてない?」
ルビーがそう言うと、エメラルドは顎に手を当ててこう答えた。
「それも聞いてないわね」
エメラルドはこう続ける。
「そもそも行方不明者がいれば、この狭いミクロコスモスのことだし既に話が回ってるはずなんだけど」
まだ行方不明になってから日が浅いのかしら?とエメラルドは首を傾げる。
「…確かに」
よくよく考えたらおかしいな、とルビーは顎に手を当てる。
「そもそもこのミクロコスモスの住民なのかしら?」
もしかして外から来たとか…とエメラルドは呟く。
「いや、それはないと思う」
あたしらが元いた世界にいたメタルヴマは全員こっちに来たから、もう人間世界にメタルヴマはいないはずとルビーは顔を上げる。
「じゃあどこから来たって…」
エメラルドがそうこぼした時、不意にふーっふっふと高笑いが聞こえた。